やがて目覚めない朝が来る

著者 :
  • ポプラ社
3.64
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本棚登録 : 330
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591100011

感想・レビュー・書評

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  • おしゃれで綺麗で繊細な本! だと思いました。
    かなり前に読んだのに今でも印象に残っている一節があります。
    叙情的で上品な中に、切ないとかくるしいとか愛しいとか、そういうごくごく当たり前の感情がちかちか光って見えてくる。
    そんな本だと思います。

  • 大島さんのまだ読んでなかった小説。

    ふきさんと主人公ゆかのお母さんのお話。
    ゆかのお母さんみたいなサッパリしたキャラの人が大島さんの小説にはよく出てくる気がする。
    家族がテーマなのかな。

    ☆気になったぶぶん

    蕗さんは、何遍やり直しても、同じ選択をして、同じような後悔をするのではないか、と、運命とか、宿命とか、そういう大袈裟な話ではなくて、その人の領分、とでもいったらいいか。この人の領分で精一杯動いたところで、どうしたってこれだけのものはあふれ出てしまう、こぼれ落ちてしまう、というような。もちろん、違う選択だって出来ただろう。子供を堕ろして、舞台に専念したってよかった。でも、そうしたからって、後悔はやっぱり残ったはずだ。
    →なにをしても後悔するんじゃないか。っていうのは、誰にもでもあるんだろうなぁ。ってすーごく思った。

    愛って難しいから、有加は、愛に応えたらだめなのよ、とミラさんは言った。愛してくれる人達みんなをがっかりさせてやればいいのよ。みんな年を取ったから、有加に自分が学んできたことを教えようとするでしょう。同じ失敗を繰り返さないように、って。愛する有加のためを思って。だけどね、有加。そんなものはいらないのよ、って思ってなさい。勝手なことして、失敗して、泣いて、のたうち回って、何やってんだろあたし、なんてばかなんだろ、って自分で自分にがっかりするくらいでちょうどいいのよ。そうやって、好きなように生きたらいいわ。思いっきり、生きたらいいわ。失敗したら。みんなはがっかりするでしょうけど、みんなをがっかりさせないために生きることは、ないのよ、有加。あなたはあなたの好きなように生きたらいいの。
    →みんなをがっかりさせないために生きることはない。ってとってもいい言葉だなって思った。応える人生は自分の人生じゃないよなーって。

    本当言えば、私は、病院中に触れ回りたかった。この人がどういう人だか知ってますか、と。この人の人生がどんな人生だったか、あなた知ってますか、と大声で知らせて回りたかった。いろんな人に蕗さんのことをわからせたかった。わかってもらいたかった。たんなる一人の病人として、たんなる一人の惚けた老人として扱われている蕗さんに、特別な重みを加えたかった。この人を見て!と。もっとちゃんと見て!と。蕗さんという人の歩みを、その重みを知ってほしかった。でも、すぐに思い直さずにはいられない。それを言うのならば、誰も彼も、特別ではないか、と。私が知らないだけで、あの人も、この人も、それぞれが、それぞれの、特別な道のりを歩んできているのではないか、と。なにも蕗さんだけが特別なわけではない。そして、誰よりも、蕗さん自身がそれを一番よくわかっていた。
    →確かに、舞台に立っていたからってそれが特別ってわけじゃないかも。誰もかれもが不器用ながらにでも一生懸命生きてる。そんなもんだよね。それぞれ一人一人が特別。

  • 主人公の少女時代からの半生を軸に
    その家族や周辺の人たちの生と死を描いた物語。

    装丁そのままに空気感のキレイな独特の世界。
    誰もが魅力的。

    【図書館・初読・10/28読了】

  • 家族の話。

    離婚した両親、母と一緒に父の母(姑)の家で一緒に暮らす。
    子供の頃から、数十年の話。

  • タイトルだけで惹かれた。
    私も思っていたこと。
    普段はほぼ忘れてるけど、おばあちゃんのお見舞いや、親戚のお葬式の後で感じるようなこと。

    一言で、なんてしっくりくる言葉だろう。
    言葉ってすごい。並べ方、選び方、そのイメージ。

    みんなある日目覚めて(生まれて)、今こうして生きてる。
    そして、私もお母さんも友達も、みんな、やがて目覚めない朝が来る。


    すごくいいお話だった。すっかり話に入り込んで泣きながら読んだ。気持ちがわかりすぎて。

    登場人物もとても魅力的で、蕗さんもミラさんもお母さんも有加も、みんな素敵だった。

    私はまだ、悲しんで恐れてしまう。
    捉えきれてないんだろう。


    人生ってまだよくわからない。語れるほどのこともしていない‥。

    私は大切な人を大切に看取れるかな。

    自分の最後は、私が私をきちんと看取ってあげよう。

  • 途中でタイトルの意味が語られ、ああ、そうか。と。
    読み進めていくうちに、泣きたい気持ちが高まってくる。
    死を否定せずに、静かに受けとめることはなかなか出来ることじゃないけど、そうできるようになりたいと思う。

  • 泣き所でないところで泣いてしまった・・・。ミラさんの死に対する考え方が衝撃でした。 思わず「なるほど」と思ってしまう言葉が沢山あって好きです。

  • 大切なものが少しずつ増えて、大切なものが少しずつ消えていく。
    生きるってそういうこと。

    「愛って難しいから、有加は、愛に応えたらだめなのよ、とミラさんは言った。愛してくれる人達をみんながっかりさせてやればいいのよ。みんな年を取ったから、有加に自分が学んできたことを教えようとするでしょう。同じ失敗を繰り返さないように、って。愛する有加のためを思って。だけどね、有加。そんなものはいらないのよ、って思いなさい。勝手なことして、失敗して、泣いて、のたうち回って、何やってんだろあたし、なんてばかなんだろ、って自分で自分にがっかりするくらいでちょうどいいのよ。そうやって、好きなように生きたらいいわ。思いっきり、生きたらいいわ。失敗したら、みんなはがっかりするでしょうけど、みんなをがっかりさせないために生きることは、ないのよ、有加。あなたはあなたの好きなように生きたらいいの。
     愛に応えようとしたら、舟ちゃんみたいに死んでしまうわ。」

  • 装丁とタイトルが素敵で思わず手に取った本。
    すごく素敵な本だった。
    描写がすごくきれいで、なんだか訳もなく涙が出そうになった。
    誰のことも貶さない、誰のことも崇めない。
    誰もが特別で愛おしくて、キラキラしてた。

    生きる覚悟、死ぬ覚悟。

  • 薔薇に囲まれて酔っ払った夢を見て
    そのまま目覚めなくても構わない。

    蕗さんのような美しい老婆になりたい。

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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