やがて目覚めない朝が来る

著者 :
  • ポプラ社
3.64
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本棚登録 : 330
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591100011

感想・レビュー・書評

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  • 後悔しないように、失敗しないように生きたいと思っていた。この本を読んで、そういった気持ちに捕らわれて身動きが取れなくなっていることに気が付いた。どんな選択をしても、どんなに上手く立ち回っても、後悔は影のようについて回る。人はみんなそれを受け入れて生きていくような気がする。

  • これは良かった!まぎれもなく自分は「下り坂」にいるのだと思うことが何かと続いたり、身辺で老いについて考えざるを得ないことが起こったりする、そんな今の気持ちにぴったり寄り添ってくれる一冊だった。

    誰もが老いていく。どんな人でも。残酷で、でも自然で、逃れようのないこと。そしてやがて目覚めない朝がくる…。それまで何とか自分の人生をやりくりしていくしかないのだなあと思いながら本を閉じた。ちょっと寂しくて、でもとても静かな優しい気持ちになった。

    • じゅんさん
      そうですよね、誰にも目覚めない朝が来る。それはとても怖いことのはずなのだけど、静かな気持ちでこのお話を読めたのが嬉しかった本でした。
      そうですよね、誰にも目覚めない朝が来る。それはとても怖いことのはずなのだけど、静かな気持ちでこのお話を読めたのが嬉しかった本でした。
      2011/10/09
  • とても美しい、いいリズムのある文章なのだが、章分けがなく、空行だけで区切られているため、文章を読むスピードがだんだんあがっていって、息がつけなくなるような印象があった。もともとは雑誌に連載されていたので、そのときには、毎回の連載のための区切りがあったはずなのだが、そうした区切りが意図的に見えにくいかたちにされている。その結果、時間の流れの感覚が薄くなり、「思い出」という記憶の空間に投げ込まれたような印象を受けた。この物語が語られる現在の地点も意図的にぼかされ、最後まで読んでやっと何となく見えるようになるのだが、それにしても語り手自身についての情報はとぼしい。そうしたやり方も、透明な雰囲気をつくっているのだろう。この美しい文章を読み終えた今、しかしなぜかあまり心を打たないのは、全てが終わってしまった話で、私たちはそれをただ受け入れるしかないのだ、という印象が否めないからだと感じた。また登場人物の多くが女性である中、数少ない男性として、特に重要な位置にあるはずの「父」の価値観や行動原理などが、あまりしっくりこず、本当に生きている感じがあまりしないのも、心を動かされない原因かもしれない。

  • よかった!とてもよかった!(*^_^*)
    お話の流れも面白かったけど、文章のひとつひとつが綺麗な空気をもたらしてくれる感じ。続けて二度、読んでしまいました。

    往年の名女優・蕗さんを祖母に持つ、有加の目線から、血のつながりを「越えた」サークルの人々の生き方が、うんうん、好きだなぁ、この人たち、と思わせられるエピソードと共に語られる。

    蕗さんは、女優の現役当時、世間に内緒で有加の父・舟を生み、当時のマネージャー・富樫さんを母ということにして育てた。そして、女優仲間の充子がその数年後に結婚、出来た子どもが有加の母ののぶ子である。

    舟は、その育ちのせいか、どこか現実離れしていて、のぶ子との結婚生活から10年目にして逃避。別の女性と暮らし始めるのだが、そんな舟をみんな、とても好きで、悪く言わないところが不思議に納得できた。

    長い年月にわたる話しなので、舟を始めとして、富樫さんや夫、衣装のミラさん(この人、とても好きだった!)、ライターの田幡さんなど次々に人が死んでいくから、「やがて目覚めない朝が来る」というタイトルにつながるのだけど、それは悲しい、というより、綺麗な水のような自然の流れに思え、その優しさがとても好きでした。

    舟が海での事故で死んだ後、その前に舟抜きで遊んだ海辺の思い出の中に父がいたようにどうしても思ってしまう有加、また、死の少し前に釣り堀で会った蕗さんは、彼の幽霊に会った、となぜか思いこんでしまう。記憶の混乱が、とても悲しく、うん、こんなことってあるんだろうな・・・と。
    のぶ子が、何かきれいなものを見たり、楽しい思いをしたりすると、ふっとつぶやく「そうだ、舟ちゃんは死んだんだった…」がとても染みた。



    引用

    ・・・したとしたって、蕗さんは後悔したのではないか。どの道を選ぼうと、どんなにうまく立ち回ろうと、領分を出てしまうものがあったはずだ。人に与えられた領分は案外狭い。蕗さんの後悔とは、そんな狭さを背負った人々すべてが何かしら後悔せざるをえなくなる、そんな類のものだったのかもしれない。

    • たまもひさん
      私もミラさんがすごくいいと思いました。自分自身はこういう人にはなれないだろうけど、こんな生き方をする人があるというだけで励まされる気がするん...
      私もミラさんがすごくいいと思いました。自分自身はこういう人にはなれないだろうけど、こんな生き方をする人があるというだけで励まされる気がするんですよね。
      教えていただいて良かったです。ありがとうございました。
      2011/10/08
  • 訳あって再読。
    気になるところに付箋を貼りながら読んだけど、付箋だらけですごいことになった。
    大島さんの小説は登場人物が変わり者ばかりなのに、衝撃的とか大どんでん返しとか激しい展開は無い。無いのに、というか無いからこそ澄んだ水のようにさらさらと心のなかに流れ込み身体の隅々にまで染み渡る。
    だから大好きだ。装丁もきらきら輝いていてステキだ。
    やがて目覚めない朝が来るときまで輝きながら生きよう。薔薇の花を部屋に飾って。

  • 個性的な経歴を持つ大人に囲まれて育つ少女の生き様を描いた話なのかと思っていたら、少女は語り手に徹しており、祖母にあたる元女優の蕗さんと彼女を囲む人々の話でした。死に至るまでの生き様を語り手である有加のような後に残る人に暖かく受け止めてもらえること、そういう人を持つことは実際には少ないだろうなあと彼らが羨ましく思いました。

  • とても良かった。
    綺麗な音楽を聴き終わった後の余韻っていうか、
    綺麗な映画を鑑賞した後の余韻っていうか
    とにかくすーっと物語が綺麗に終わって
    あとには涼やかな気持ちの良い空気が残るような物語。
    ある伝説的女優を祖母に持つ孫が、その視点から
    彼女を取り巻く周囲の人々や生活を描いてる物語。
    登場する人達がみな一癖あって面白いし、
    色々な場面が丁寧に魅力的に表現されていて
    読んでいて心地良かった。
    たんたんとした話を好まない人にはちょっと退屈かも
    しれない。でもそういうのが好きな人には
    たまらなく魅力的な小説かもしれない。

    この作者、最初の頃の作品は好きじゃなかったけど
    だんだん好きになっていく。これからが楽しみ。

  • タイトルと装丁にすっごい惹かれているんだけど、文庫化しないのかなぁ…。

  • やがて目覚めない朝が来る
    このフレーズに心打たれて思わず本を手に取った
    あぁ・・・

  • 蕗さん。
    妙な大人に囲まれて育った女の子。

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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