やがて目覚めない朝が来る

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 330
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591100011

感想・レビュー・書評

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  • 自立のために必死に生きようとする、大島さんのこどもの描き方が好きです。それを取り囲む大人たち。それを見ながら成長していく有加。そこには人生に引きこまれる影響力をもつ大人がいて、関わることでそれぞれの人たちが変化していく。好きな作家さんになりました。

  • 有加が自分の祖母である蕗さんとの時間について語った本です。

    私、大島さんの書く文章って好きみたいです。三冊読んで気づく。
    なんだか静かで、降り積もるように積み上げられていくかんじ。
    読みはじめて、一気に読んでしまいました。
    本の表紙、一枚白い紙をめくって出てくる金から白へのグラデーションのページがこの本にぴったりで、読み終わった後もしみじみ見つめてしまいました。

    出てくる人がみんな優しいからこんな気持ちになるのかなー。
    一番好きなのはミラさんです。
    離婚しそうな有加の話をきいて、「いいぞいいぞ、有加、その調子ー!」って、そういってくれる人がいることってなんて心が安まるんだろう。
    それも、すっごい深い愛情があるからこそ出る言葉だとおもいます。
    「勝手なことして、失敗して、泣いて、のたうち回って、なにやってんだろあたし、なんてばかなんだろ、って自分で自分にがっかりするくらいでちょうどいいのよ。そうやって好きなように生きたらいいわ。失敗したら、みんなはがっかりするでしょうけど、みんなをがっかりさせないために生きることは、ないのよ、有加。あなたはあなたの好きなように生きたらいいの」
    自分に言われているように感じました。

    のぶ子が舟のことを有加に語るシーンは、ちょっと泣いてしまいました。
    本人は全然泣いてないんだけど、すっごくかなしいんだなーさみしいんだなーって思ったので。
    のぶ子が、楽しい時、素敵なものを見た時に「ああ、舟ちゃんは死んだんだった」とつぶやくの、なんかちょっとわかります。
    私も、おじいちゃんはいないんだーと思うのは楽しい時だったから。

    やがて目覚めない朝がくる。
    蕗さんみたいに、有加みたいに、そう思って生きてみようかな。

  • 静かで、美しい。
    内面の葛藤は具体的には描かれず、しかしどんな説明よりも雄弁だ。

    生きる覚悟を、しずかに見極められるかのように。

  • ミラさんの美学が、素敵だった。
    訃報なんて、知るべき時がくれば自然に知れる。一斉に知る必要はない、ずっと後だってかまわない。その時が来たら、ああ死んだんだ、て1秒が2秒思ってもらえればいい。その時、もういないのだから。
    それと、のぶ、お母さんが、舟、お父さんに言ったことば。「殺すと憎くなくなるの?」
    表題が、読み終えたあとにすとんと胸に収まる。夢見心地で毎晩眠りにつければ、素敵だろうなぁ。

  • 主人公・有加が語る、祖母の物語。
    題名が全て。すべて物語ってます。

    祖母・蕗さん(「おばあちゃん」ではなく「蕗さん」)は未婚で有加の父を出産、
    その後電撃引退をした女優・・・と、設定がいろいろと「いわゆる普通の家庭」じゃない。
    舞台女優・芸能人。という空気から、こういうのもアリなのかな、
    蕗さんの周囲に集まるのが、かなり風変りな人たちなのも納得させられちゃう感じ。

    大島氏の文体の、淡々とした感じ。
    不幸が中和されて、独特のやさしさうつくしさ懐かしさ、に変化しちゃうというか。
    「ピエタ」も感じたんですが、大島氏の作品は
    読後やさしい余韻に浸れます。

  • 蕗さんが、美しいまま終わっていたら「あぁ、やっぱりきれい事か」と思ったに違いない。老いは残酷だけど、かならずくるものだから。でも、ミラさんのさよならの仕方は憧れる。

  • 少女は、魅力的な大人たちに囲まれて、大人になっていく。すべてを包み込んで穏やかに流れていく時間と人生のきらめきを描き出す、今、最注目の著者の最高傑作。
    ---------
    大島作品を読んでみるきっかけになった1冊。
    タイトル借りだったけど、魅力的な大人たちに惹きこまれる1冊。

    主人公は子ども私なんだけど、
    元女優の祖母を中心に、年をとっても個性的なスタイリストや
    出版社勤務や不動産会社社長がいたりして。
    そもそも、私の母親は、祖母の義理の娘(息子の嫁)なわけで。
    でもその二人の関係も素敵で。

    しかも小さな頃から、私が大人になるまでのストーリーで。
    関係者もどんどん死んでいくw
    それを受け入れるみんなの様子もよかった。

    他の作品を読んでみたくなるくらいの作品でした。

  • 少女は、魅力的な大人たちに囲まれて、大人になっていく。すべてを包み込んで穏やかに流れていく時間と人生のきらめきを描き出す、今、最注目の著者の最高傑作。(「BOOK」データベースより)

    すごくおだやかな時間の流れが心地よい小説。誰しもがいつかこの世界からいなくなってしまう。そのことを優しく示してくれているようなかんじ。蕗さん、舟ちゃん、田幡さん、ミラさん。みんなすごく性格がでてる終わり方で読んでいて頷けた。

  • 両親が離婚し、私と母は父方の祖母の家に転がり込む。若い頃は女優だったという祖母、明るい母、離婚後行方不明の父。何気ない日常の中、少しずつ死に向かって行く人生。そう、やがて目覚めない朝が来るのだ。
    死を迎え入れるというか、肯定しているというか、気分が楽になれるような雰囲気がとても不思議な感じでした。

  • 悪くない。面白かったけど…。

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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