([ほ]4-3)活版印刷三日月堂 庭のアルバム (ポプラ文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591156865

感想・レビュー・書評

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  • みんなが虜になる活版印刷。亡くなった弓子の母親の思い出話の場面でも、弓子側は淡々としているのがこの作品らしい。

  • ■活字と言葉の温かみが心を解きほぐす。

    小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い。しかし三日月堂を続けていく中で、弓子自身も考えるところがあり…。転機を迎える、大好評シリーズ第三弾!

  • 川越の街の片隅にある活版印刷屋さん。お祖父さんが経営していたけれど、亡くなってから閉めていた店を、小さなきっかけが重なって、孫の弓子が再開した。

    活版印刷三日月堂の3作目。短編4篇。
    どれも弓子さんと三日月堂の話だけれど、どれも視点は別の人。今までの物語で作られたものや、タウン誌の記事などをきっかけに、三日月堂にやってきた人たちから見た三日月堂と弓子さん。

    別の人の視点だけれど、弓子さんの中のいろいろな気持ちが伺える物語になっていて、どれも、しんと優しい心の物語。


    手キンから始まって校正機まで稼働させていた三日月堂ですが、今回の出会いで、一番大きな機械が動くことになるかも?ってところまで来ましたね。これからまたどんなふうになっていくのか楽しみです。

    そして、弓子さんに惹かれていく男性がちらほら出てきたのが気になるところ。今後そんな展開もあるんでしょうか?


    ・チケットと昆布巻き
    ・カナコの歌
    ・庭のアルバム
    ・川の合流する場所で

  • 亡くなった人を思う事が多いからか、活版印刷の将来を憂えてるからか、暖かな話だけれど何となくほの寂しい。
    でもとても優しい内容で読後感が良いです。
    作品中に出てくる短歌も真っ直ぐで心に残る。

  • 川越の町にある小さな印刷所をめぐる短編連作。
    最近、静かなブームとなっている活版印刷に光をあて、その印刷所を営む若き女性主人公と彼女にゆかりのある人々とのふれあいや過去の出来事などを題材にしている。
    古い川越の町並みやレトロな活版印刷など一昔前の郷愁を感じさせながら、主人公の母親の青春時代を知る者にとっては懐かしさを、また今の若者にとっては珍しさと新鮮さを感じながら読み進めることができる。
    この小説全体のふわりとした柔らかな雰囲気にぴったりの魅力ある主人公の設定である。この小説はシリーズとなっている。その後の進展が気になる終わり方をして読者を惹きつける。

  • やっぱりこのシリーズはいいなぁ。今までの巻では「亡くなった」としか書いていなかった弓子さんのお母さん(カナコさん)ですが、今回はカナコさんの友人視点の話もあり、亡くなっていても、カナコさんはずっと弓子さんの側に寄り添っているようでした。また、弓子さんのことが気になる男性も現れて、次巻では新しい展開があるかも?と期待ができます。「この人の言葉に、この人と家族がこの世界にいたことに、いつも心打たれる。いつまでも残しておきたいと思う。自分が印刷に願うのはそういうものだ」

  • 人にはそれぞれ、懐かしく感じる風景や出来事などがあると思う。それが景色であったり音であったり、あるいは香りであったりと様々だが、ふとした時に何かがスイッチになって懐かしく思い出すものだ。
    大人になってからそうやって“ふと思い出す懐かしい景色”のことを「原風景」と呼ぶらしい。原風景は屋外の景色だけではなく、屋内の景色も含むのだろう。藁葺き屋根の古民家であったり、古い家屋の土間であったり、町工場の機械が動く音であったりと、人の数だけそれぞれの心に刻まれた景色がある。
    また、原風景に限らず思い出に残る景色と言うのはたくさんあって、そういった懐かしい景色を思い出すたびに、歳をとるというのも案外悪くないなと思ったりする。
    私の思い出の景色のひとつに、小さな印刷工場の室内がある。小学生の頃に仲の良かった友だちの自宅が、小さな印刷工場を営んでいた。学校帰りに遊びに行っては、ガチャンガチャンと大きな音を出しながら力強く動く印刷機械の迫力に見入ったものだ。
    当時はまだ活版印刷が使われていた時代だが、そんな景色を懐かしく思い出させてくれるシリーズの最新刊が出た。ほしおさなえさんの書かれた「活版印刷三日月堂 庭のアルバム」だ。埼玉県川越市にある小さな活版印刷所を舞台に、活版印刷をめぐる素敵な物語が連作短編集という形で綴られた一冊だ。

    内容(「BOOK」データベースより)
    小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い。しかし三日月堂を続けていく中で、弓子自身も考えるところがあり…。転機を迎える、大好評シリーズ第3弾!ブクログ1位、読書メーター1位、第5回静岡書店大賞、第9回天竜文学賞、4冠!

    物語の始まりは、小さなタウン情報紙の取材だった。川越市にある昔懐かしい映画館が、昔懐かしいウエスタン特集を行おうと企画。それを取材しに行ったところ、チケットを街の小さな活版印刷所にお願いするという話を聞きつける。
    そこで作られた活版印刷製のチケットが縁となり、次々と活版印刷所の三日月堂に人が集まる。そして、それぞれに素敵な出会いや気付きを得ながら、三日月堂の店主である弓子の物語へと繋がっていく。

    人と人とは見えない縁で結ばれているんだなと思わされる内容であり、何気なく使っている言葉は一つ一つが意思を持っているんだなということを考えさせてくれる一冊だった。
    今回発刊された書籍でシリーズ3作目だが、累計で14万部を突破しているというのだからブクログや読書メーターで1位をとっているというのも納得だ。活版印刷の魅力が詰まっているだけではなく、言葉や文字自体の持つ魅力を余すことなく伝えてくれる。このシリーズを読むと、無性に活版印刷で刷られた印刷物をみたくなってしまうのだ。
    シリーズ第4弾が今から楽しみだ。

  • 震災に言及している部分で、印刷会社の高齢の会長が八木重吉の詩の活字を組んでいたという件。当時90近かった私の祖父も普段と同じように畑に種を蒔いていた光景を思い出した。
    弓子が今後活版印刷とどう向き合っていくのか、明確な目標みたいなものがみえて、また彼女の活動を見守っていきたいと思った。

  • 川越の活版印刷所を軸に廻る物語も三冊目。相変わらずの安定感あるハートウォーミングな中篇が並ぶが、その中にこれまであまり感じなかった恋の気配が漂い始め、また印刷所自体の変化も起こりそうで、今後の物語の変化を予感させた。

    ある意味、これまで以上に「印刷」に踏み込んでいく感があり、とはいえ小難しくはないのだが、個人的にはすごく楽しい。活版印刷のイベントとか知らなかった。

    作中に出てきた​八木重吉の詩も、詩の苦手なワシでもスッと入ってくるすてきな言葉が紡がれており、新たに知ることの多い一冊だった。

  • なんと丁寧に綴られたことか。
    優しくじんわり沁みいる物語。

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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