この夏のこともどうせ忘れる (ポプラ文庫ピュアフル ふ 4-7)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591163436

作品紹介・あらすじ

二人の関係が、
変わった夏──
「英国幻視の少年たち」著者が綴る、高校生たちの長い一瞬。


高校三年、受験生の圭人は塾の夏季合宿に参加し、学校で同じクラスの香乃と同室になる。苦手なグループにいる相手を窮屈に感じていたが、眠れない夜を過ごすうち、圭人は香乃にある秘密を知られてしまう――「空と窒息」など書き下ろし5編。
夏休みという長い非日常、いつもと違う場所で出会い、交流する二人。暑さに眩む視界と思考の中で、変わっていく関係を描く。記憶に濃い影を落とすような青春小説。


〇空と窒息
〇昆虫標本
〇宵闇の山
〇生き残り
〇夏の直線

装画 絵津鼓

感想・レビュー・書評

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  • 確かに忘れるかもしれない。でも面白かった。リアリティとミステリの配分が心地よかった。危うさに対してドライでありながらも、誰かがいてくれるのは幸福だ。この夏、ちょっと何かに巻き込まれてみたくなる。

  • すごかった…。どの話も大胆な起伏があるようなのじゃない、むしろすべて静かな話なんだけれど、どれも濃く心に残るようなのばかりだった。

    これどの配信で聞いたか忘れちゃったんですが怪談についての雑談で、「どんなに怖くて、忘れられないって思ってた体験でも忘れる。自分は学生のときに、ある怖い体験をしたことがあったんだけど、実家に帰ったときになんとなく母にそれを話すと『でもあんた、その後であったことがもっと怖かったって言ってたじゃない』って言われたんですよ。自分はそれを全く覚えていなくてね。人って忘れる生き物なんだな〜」みたいなことを誰かが喋っていた記憶があって、それを思い出しました。

    だから、この本のどのお話もタイトルにあるように登場人物たちは忘れていくんだろうなって寂寞とした気持ちになったわ。鮮烈な体験をしたと思ったのに、ぜったいに忘れられないと思ったのに、水で薄めるように時間が経つにつれ、この夏、味わったものを忘れていくんだろう。それでずっと大人になったときにふと思い出して、なんで忘れてたんだろうってなるんだろう。

  • タイトルが秀逸で高校生のひと夏の思い出をテーマにした短編集。どうせすぐ忘れる…これは誰目線の言葉なのか?親、兄弟、友人、世間?本当にどうせすぐ忘れるのだろうか?一生忘れない、きっと忘れない大切な事だらけなのではないだろうか?
    自分が高校生の時に読めばまた感想は全く違ったことだろう。

  • どうせ忘れる、と思わないではいられないほど、深く刺さった傷の物語。
    かつて自分がそんなふうに傷を抱えたこともあったはずなのに、ずっと生きているうちに、絶対にそれだけはするまいと思っていたことを幾つも、幾つも、してしまっています。
    自分が傷つける側に立ってしまったこと、そのとりかえしのつかなさ、ごめんねと謝ってもそんなの欺瞞でしかないことくらいは流石にまだ自覚があって、自分がしてきてしまったことにたじろぐばかりです。
    この本を読むと、視点を傷ついた側にもう一度わずかばかりでも置くことができるように思えます。とりかえしのつかないことをしてしまった今、何ができるか、ではなく、何をしてほしかったか、をもう一度感じなおすための心の足場の一つに、なってくれるかもしれません。
    だから、
    登場人物と同じくらいの中高生だけでなく、中高生がそばにいる大人も、読むと響く本ではないかと思います

  • あまりの青さに眩暈がしそうだった。
    今この瞬間がどれだけ辛くても苦しくても悲しくても、時間が経てばどうせ忘れるのが人間だと思っている。
    だけど完全に忘れ去ることなんてできない。
    ある瞬間にふと思い出される記憶もあるに違いない。
    この作品に書かれた物語は、きっとそういう類いのものなんだろう。
    二人で体験したひと夏の出来事を切り取った短編集。
    特に『生き残り』が鮮烈で、めちゃくちゃ泣いてしまった。

  • 本当に良かった。
    すごく高校生のうちに読んでおくべきだと思った。
    すごく静かなお話なのに、こんなに全ての話が記憶に残るし、何回でも読みたくなる。
    短編集これまでそんなに読まなかったけど、これはすごくいい
    みんなに読んでほしい本です。

  • 好みど真ん中って感じの小説でした。
    きっとこれから先も夏に読み返すだろうな。

  • 「生き残り」が一番好きだったな〜
    この短い夏を篠くんは絶対忘れないんだろうけど梨奈は忘れる気がする、どっちも本気で恋愛してたんだろうけど、梨奈はこれからもっとたくさんの思い出ができて篠くんとの思い出は薄れていきそう。そういう人間らしいところが梨奈のいい所であってこのお話の面白いところでもあると思うな〜。せつない!

  • 『空と窒息』
    可宮は母親の首を絞める行為に依存しちゃったんだな、いつの間にか。
    香乃、よく可宮の首を絞めたな。笑
    可宮の元カノの早希のことで嫉妬してたにしても、凄い度胸。いや、勢いか。
    でも、一度してしまうと気になるよなぁ。
    しかも、痕が前からあるんだもんな。
    2回目がちょっと耽美でびっくりしちゃったよ!
    お風呂場で首を絞めるってなかなか官能的では!?
    いやー、めちゃくちゃ良い!!
    しかも、ラストずるくないか?
    上目遣いで「俺も東京の大学行くから」て。
    可宮のことほっとけないんだね!知ってた!
    また可宮がああなったら、自分が首を絞めなきゃなのか締めたいなのか、でもそういうことだよね?伝わった!
    もうずるい〜!ニヤニヤしてしまう。
    男の友情というかブロマンス大好き。

    『昆虫標本』
    いや、これも耽美だわ。
    栗栖からしたスパイスのような香り、千夏と拓哉の部屋で一度嗅いだことのある香り、つまりアレですな。
    栗栖と拓哉は至してしまったの…?それとも、栗栖がトイレとかで…?
    千夏と同じく、めちゃくちゃ気になっちゃったよ。
    ただ、兄妹で何かゲームしてたみたいだから、そのために栗栖が千夏にかまかけたのかな?とも思えるし。
    すごい気になるラスト。

    『生き残り』
    切ない…!篠くんんんんん!
    篠くん、梨奈ちゃんのこと忘れられるの!?
    梨奈ちゃん以外の子と恋できるの!?
    篠くんには梨奈ちゃんだよ~!

    梨奈ちゃん、篠くんのこと追っかけてくれるよね!?
    ほんとに東京行って、お姉さんと暮らして、篠くんのこと思い出にしないよね!?
    追っかけてほしいよ〜!

    『宵闇の山』
    ミナミ、死んじゃったのか…。
    秘密基地に、夏祭りの日だけ出る、とか切なすぎんか?七夕かよ。
    最後に、サツキだけがちゃんと来てたのなんか分かる気がする。
    大人になるまでずっと来る、とか。サツキ〜!
    サツキはサツキで、ミナミのこと、5人の中で一番好きだったんだろうなぁ。何となくだけど。

  •  「青春小説」とされているけど、少し違う気がする。かといって恋愛小説でも、ミステリー小説でも、ホラー小説でもない。不思議な短編集。
     登場人物は、みんな何か抱えていて、夏がそれを解放してくれるような、悪い方向に助長するような・・・。かといって読後感が悪いわけでもない。

     一番のお気に入りは、「生き残り」。
     
     以下ネタバレを含むが、野球部の虐待的しごきといじめにも耐えた「篠くん」を高校生活最後の期間限定の彼氏に選んだ「梨奈」。ところが、篠くんは継父に虐待されていた。それへの同情もあって篠くんを本気で好きになる梨奈。だが、実は本人が気づいていないだけで、梨奈もシングルマザーの母親にネグレクトされてる。そんな二人が結ばれて、夏の最後に逃避行をしようと試みる。二人には幸せになってほしいが、梨奈は「この夏が終わっても、私はまだ生きられるのかしら」と思う。このラストで、切ないというか、うすら寒さを覚えるというか、何とも言えない気持ちになった。

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著者プロフィール

小説家

「2015年 『Dear(ディア)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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