- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594067861
感想・レビュー・書評
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『未曽有の震災』から2年。あの時を忘れた訳ではないが、遠い存在になっていた。『忘れるな』と警告を受けたような気がした。当の本人すら知り得ず、いきなり人生断ち切られた人たち。そして、愛する人を亡くした人たち。どちらも哀しい。当たり前に巡ってくる季節。東北の人たちの春は、ゆっくり巡って来るのだろうか。
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流石、重松様!
ただ題名の「また次の春へ」がもうちょっと、残念でした。
生きることを、生きる大切さを再確認させられました。 -
3.11の震災後を描いた短編集だ。
被災地で幼少時代を1年だけ過ごしたことのある主婦、教え子が被災して亡くなったと知った教師、被災地にカレンダーを送るボランティアを行った家族、自分の故郷が放射能に汚染された男、両親を津波で亡くした男・・・さまざまな立場の、さまざまな痛みを負った人物が登場する。痛みは浅かったり深かったり、よく見えたり見えなかったり、いろいろで、重松清らしく、そのそれぞれの痛みに寄り添った短編が静かに綴られている。
ある一編で登場する、「無料でもらったものにケチつけるなよ」っていう言葉、その暴力的な赤裸々さにギクリとした。言ってはいけないと誰もが思っていて、でも、自分が「善意でしたこと」を否定されたときにこの言葉がまったく心をよぎらないなんてこと、ありえるんだろうか?そういう、被災者を支援しようとした人間の心の底までもが、悪意からではなく、ただありのままにしっかりと描かれている。震災が、被災者以外に及ぼしたものまでちゃんと描かれている、と思った。
被災者を慮ろうと思いながらも拒絶されれば怒る。そもそも、作中にもあるとおり、被災した地域も人もあまりにも広大でばらばらで、「被災者」とひとくくりにすること自体が難しい。どさくさに紛れて物置同然のボロ家を「自宅の全壊」と偽って支援金を申請する人間もいる。でもそんなこともできずに苦しんでいる人もたくさんいる。
そういうさまざまなことを、忘れてはいないと思っていても2年経って確かに自分の中には過去になっていることが否めない震災についてを、もう一度考えるきっかけになった。 -
東日本大震災を、7つの家族を通して描いた短編集。
胸にじんわりと染み渡る。たくさんの人に読んでもらいたい作品。 -
じ~んときます。記念日が特に良かったです。
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著者が最近よく書いている。震災関連のお話。
直接的ではなく、間接的で、被災した直接の
人々や土地ではない部分の話なのでちょっとかんずるところも
あるかと思いました。
短編のうち、トン汁/しおり/記念日/五百羅漢/また次の春へ
がよかったと思います。ちょうど桜が咲き始める時期に
読めたので、周りの情景とよく合ったお話でした。 -
内容紹介
冬を越えたあとに待つ春を、また思う。
次の春も、また次の春も、
おだやかな暖かい日がつづくといい。
「また次の春へ」より
終わりから、始まる。
厄災で断ち切られたもの、それでもまた巡り来るもの。
喪失の悲しみと、再生への祈りを描く、7つの小さな物語。
小学3年生、母を亡くした夜に父がつくってくれた“わが家"のトン汁を、避難所の炊き出しでつくった僕。
東京でもどかしい思いを抱え、二カ月後に縁のあった被災地を訪れた主婦マチ子さん。あの日に同級生を喪った高校1年生の早苗さん。
ふるさとを穢され、避難指示の中で開かれたお盆の夏祭りで逡巡するノブさん。かつての教え子が亡くなったことを知り、仮設住宅に遺族を訪ねていく先生。
行方不明の両親の死亡届を出せないまま、自分の運命を引き受けていこうとする洋行――。
未曽有の被害をもたらし、日本中が揺れた東日本大震災――。
それぞれの位置から、それぞれの距離から、再生への光と家族を描いた珠玉の短篇集。
●所収作品
トン汁/おまじない/しおり/記念日/帰郷/五百羅漢/また次の春へ
内容(「BOOK」データベースより)
厄災で断ち切られたもの。それでもまた巡り来るもの。喪失の悲しみと再生への祈りを描く、7つの小さな物語。 -
東日本大震災に関わる家族を描いた7つの短編集。
ごく普通の日常、ごく当たり前の生活、これがいかに幸せであるのかを再認識。一つ一つの物語がとても丁寧に綴られており、現実味のある作品となっています。記憶を風化させないためにも是非手にとっていただきたい一冊。 -
東日本大震災をテーマにした喪失と再生の短編集。フィクションではあるものの、ここで語られる物語は3/11を目の当たりにした読み手にとって深く心に染み込んでくるものばかり。少しずつ近づく春の気配とは裏腹に、心に凛とした何かを芽生えさせてくれる。