ウエハ-スの椅子 (ハルキ文庫 え 2-1)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758431026

感想・レビュー・書評

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  • 自分を何度も中年と称す三十八歳の画家の私と、既婚者の恋人や妹や旧友のように会いに来る絶望との日々。金属質な作り物のオブジェみたいにきれいで現実離れして、きっと実写にしたら不倫や人間の有機さが剥き出しになってしまうと思うような文章ならではの壊れ物みたいな緻密さ。格好つけているなあと感じるのに心地好い。

  • 江國香織で初めて読んだ作品。ストーリーがどうとかではなく、ずっと雨がしとしと降ってるみたいな文章、雰囲気。生活の中の描写があまりにも美しい。恋することの孤独と絶望、まさにそう

  • ウエハースの椅子は…目の前にあるのに決して腰を下ろせない。
    仲の良い両親に大切に育てられているのに、何故か幼少期より絶望に囚われて生きている私の恋物語り。
    画家を生業とし、ときおり訪ねてくる7年越しの妻子ある恋人との時間のためだけに生きている37歳の私。
    6つ下の妹は、長続きしない恋ばかり。
    今は年下の大学院生と恋愛中。
    絵を描くこと…好きなことが仕事として安定し、姉妹中も良い。
    恋人はお風呂のカビとりをしてくれるし、旅行にだって連れて行ってくれる。
    過不足なことなどひとつもない。
    優しい恋人。甘い時間。狂おしい熱情。
    だけど、幸せであればあるほど、それは絶望でしかない。
    語りたいことは多くあるけれど、これを語るとネタバレにもなるし、自分の心の内をさらすことになる。
    今年の15冊目
    2018.8.13

  • 不思議な感覚だった。
    とても暗くどうしようもなく絶望的で
    それでも、なんだか共感してしまう子供の頃の話。
    恋愛は自由だ
    誰がしてもどんな時にしても良いのだ。
    ただ、年を重ねると
    自由はうわべになってしまう。
    恋人は上手に現実と彼女を行ったり来たりして楽しく生きているけれど、彼女は絶望から逃れられない。
    ウエハースの椅子
    言葉一つ一つが巧みで物語に入り込んで、江國さんワールドに包まれた1冊でした。

  • 誰かを愛することって、時に孤独だね。
    自分のすぐ目の前にあるのに、腰をかけてくつろげない椅子。
    悲しすぎる。

    にしてもこの男、ずるいな。

  • 主人公の危うい感じが好き。
    ふわふわ宙に浮いてるような空気感もいい。

  • 江國香織さんの作品は、あれも好きこれも好き、と言ってしまいますが、この本を読むとやっぱりこれが一番だと思ってしまいます。
    恋人との甘く閉じられた時間と、絶望が隣にいる時間。
    緩慢に訪れる死に、わたしもこんな終わり方がしたいと憧れてしまいます。
    緩やかに壊れていく、それは甘美です。
    わたしたちはみんな、一匹ずつべつべつの、孤独な、けもの。
    また絶望的な幻想のなかに、生きていきます。

    ちょうど聴いていた歌が、すっと落ちてきました。

    「もう終わろう 欲張りすぎたの あなただけ 信じて どうしようもない」

    「見届ける 最後まで 遠くまで 遥かまで どうか 逃げて」

  • 不倫はどうにも共感できかねるものの、主人公が子供時代から抱える寄るべなさや絶望、ぽつんと世界に放り出された孤独感がしっくり来て、気持ちよく読めた。

  • 壊れていく美しさ

    完璧な恋愛だとしても
    その先にあるものは絶望

    ページをめくるにつれ
    切なくなる胸の痛みを感じたけど

    僕の中に残ったものは

    否定でも肯定でもなく

    だけどたしかにその絶望は
    感じてきたということ

  • 自分の陰鬱とした気持ちを伸び伸びとさせることが出来たので、陰鬱とした自分が認められている嬉しさをしみじみと感じた。
    主人公は、幸せは、人生数十年の積み重ねではなくて、死ぬ瞬間に決まるという考えを持っているように捉えられた。だからこそ、中途半端な、どうせ終わりが来ると思われる幸せを拒もうとするのに、瞬間的な幸せに酔ってしまって、甘受してしまう、ふらふらとしている。けど、その瞬間が去るやいなや不幸な死が自分を待っている絶望を思い出すという、ヒトの不徹底な生き方とその陰鬱とした気持ちが、自分に陰鬱さと少し似ていて大分違うので、陰鬱さについて見地が広まった感覚であった。人の気持ちを知ることができ、自分が認められてうれしい気持ちになった。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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