「役に立たない」研究の未来

制作 : 柴藤 亮介 
  • 柏書房
3.64
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本棚登録 : 528
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760153480

作品紹介・あらすじ

ほんとうのイノベーションは、
ゆっくりと、予想外に始まる。


■内容
いつの時代も、研究者は未知に挑み、人類の発展に貢献してきた。

誰も解明していない謎を追う人。
社会課題の解決に努める人。
いつ、何の役に立つかがわからなくても、
未来へより多くのものを託そうとする人。

彼らの人生をかけた挑戦の積み重ねの先に、今の私たちの生活がある。
そして、その原点にはいつだって飽くなき知的好奇心があった。

しかし、日本では現在、運営費交付金の減少や
科学技術関係予算の過度な「選択と集中」などが原因で、
研究者が知的好奇心をもとにした基礎研究を行いづらい状況にある。
それゆえ、イノベーションの芽を育てるための土壌が崩れつつある。

令和の時代において、
研究者たちはどのように基礎研究を継続していくことができるのだろうか?
社会はどのようにその活動を支えられるだろうか?
そもそも、私たちはなぜそれを支えなければならないのだろうか?

本書は、各分野の一線で活躍する3名の研究者が、
『「役に立たない」科学が役に立つ』をテーマにした議論を中心に、
書下ろしを加えたうえでまとめたものである。

これからの「科学」と「学び」を考えるために、
理系も文系も、子どもも大人も、必読の一冊!


■装画
カシワイ

感想・レビュー・書評

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  • 『「役に立たない」研究の未来』それを決めるのはいったい誰? - HONZ
    https://honz.jp/articles/-/46023

  • 「役に立たない」科学が役に立つの出版を受けて、表題のテーマで3名の有識者が対談したイベントを本にしたもの。基礎研究を取り巻く環境の厳しさが良く分かる。精神論で解決できる課題でもないと思うけど、探究心を大事にする気持ちは大事。

  • 3人の異なる分野の研究者が、それぞれ微妙に異なる立場から「役に立たない」研究について論じている。
    3人それぞれの講演等の中から印象に残ったことを書き記しておく。

    まず、理論物理学者の初田さんは、基礎科学の重要性を一般社会や政府に対して理解してもらうためには、科学者自身のアウトリーチ活動をより多様に、効果的に展開していくべきだと主張している。ADKと組んだ独自のアウトリーチの取組み(クリエイターと協力してプロトタイプを作っていくというもの)も紹介していて、興味深い。

    次に、分子細胞生物学者の大隅さんは、自身が、当初全く引用されない分野だったオートファジーの研究を続けてきた経験から、安易に「役に立つ」分野を研究するのではなく、自分が本当におもしろいと思える分野を見つけることの重要性を説く。また、大隅さんは自身の財団を立ち上げ、研究者視点での「おもしろい研究」にファンディングしているなど、国の政策とは一定の距離を置いて基礎研究の支援を行っている。

    最後に、科学史家の隠岐さんは、「役に立つ」というのは政治的な言葉(説得のための言葉)であり、決して検証のための言葉でないことを指摘している。「有用性」が持ち出されるのは、それが未来に関する言葉だからだ、という主張はなかなか興味深い。また、隠岐さんは、今般の科学技術基本法改正によって人文社会科学がいわゆる科学研究に位置付けられることになったことについて、人文社会系研究者が安易に「動員」されないようにと、警鐘を鳴らしている。「社会のため」と言ったときの「社会」とは何を指すのかが曖昧なまま動員されると非人道的な結果に繋がりかねないという指摘はもっともであり、まさに人文社会系研究者はその点に留意しながら研究をすべきなのでは、と感じた。

  • 初田さんが指摘していた、知識は唯一、使えば使うほど価値が増える、という点は興味深い。誰でもわかる役に立つものは陳腐化も早いのかもしれず、日本が成熟国になる過程ではとるべき選択肢ではないのだろう。知で立国するのが有力であり、この本で議論されていることが議論の端緒になりそう。
    学問・科学の政治との距離の取り方、大衆社会での基礎研究の支持の集め方とアウトリーチの難しさなども浮かび上がってきた。

    こうした領域横断的な知の交流は読んでいて楽しい。かつアカデミストの活動はうまくいってほしい。読後に調べてみると、発見を生み出す科学を支える自律分散的な取り組みとして近年はDeSciという取り組みもあるようで、日本が再興するためにと浸透するとよいと感じた。

  • 物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
    東大OPACには登録されていません。

    貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
    返却:物性研図書室へ返却してください

  • 研究というと、「病気の治療に役立つ」とか「暮らしが便利になる」とか、そういう役に立つか立たないかで語られがち。

    基礎研究や学術研究を「役に立つか立たないか」ではなくて、知的好奇心や探究心を満たすものでもいいじゃないか。

    国は役に立つ研究を選び、そこに研究費を投じる。それでいいの?と思ったけれど、政治を憂いてもしかたないので、民間の団体が研究費用を支援する必要がある。そして、研究者ではない一般の人にも科学の楽しさを伝えて、「推し研究」を支援できる社会になっていけたらいいなと思った。

  • みなさんには「推し研究者」はいますか?" という出だしから始まる本書。残念ながら私には一人も思いつかない。
    どうして市民と研究者の間にこうも隔たりがあるのか。科学の面白さはどう伝える?基礎研究はこれからどう支えるべきか?そもそも「役に立つ」とは?
    それぞれ違う立場から科学、基礎研究、これからについて語っている。ナビゲーターの方も学術系クラウドファンディングサイトの方で、質問の内容が具体的で、文系の私にも大変興味深い内容だった。
     説明責任の一つに「研究者の日常を伝える」のもありではないか、というのも面白いなあと思った。
     あと無理して「〇〇に役に立つ」をゴールにしなければいけない、というのはおかしいのではないか。自分の「知りたい」をもっと突き詰めてほしいし、それを支える仕組みを作ろうと奮闘している4人の姿が垣間見えた。

    オススメ度:
    ★★★★☆

    ノブ(図書館職員)

    所蔵情報:
    品川図書館 407/H42

  • 役に立たない科学が役に立つ:物質の安定 知識・使えば使うほど増える資源 物理学 基礎研究の本質・ゼロイチ 4つの常識 ディラック方程式の ヒッグス論文 役に立たない知識の有用 人間の精神を解放 選択と集中・ゼロイチと両立しない すべては好奇心から始まる―ごみ溜めから生まれたノーベル賞 選択と集中は何をもたらしたのか:国家戦略とマネジメントの話の混同 企業の意識 説明責任 目標設定が低くなる悪循環 内にこもったフレクスナー・外に出たアインシュタイン アウトリーチ活動 これからの基礎研究

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著者プロフィール

理化学研究所数理創造プログラムディレクター

「2021年 『数理は世界を創造できるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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