永遠の0 (ゼロ)

著者 :
  • 太田出版
4.37
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本棚登録 : 2353
感想 : 437
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778310264

感想・レビュー・書評

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  • ネタバレと感想。映画の方は未視聴です。
    私が無知すぎて恥ずかしい事ばかり並べたててしまっているような気がします。どうかご容赦ください。
    私にはいつかきちんと勉強をして知っておかなければならないことがまだまだ沢山ある、そんな風に感じる本でした。

    本作は、健太郎と慶子、そして読者が、かつて宮部と共に戦った元軍人たちの話を聞くことで「宮部久蔵」という人物を徐々に知っていく、という構成になっています。
    2人に会う軍人たちから宮部に対する評価は様々で、彼を心底憎悪している人物もいれば、彼こそ真の英雄だったと褒め称える人もいます。
    宮部自らが自分の胸の内を語るような場面は決して多くはないのに、彼らの話を聞いていくうちに少しずつ宮部という男の人となりが見えてくる描写は見事としか言えません。

    話を聞かせてくれるかつての軍人たちは、皆、最初から最後まで宮部の話をしているわけではありません。
    戦争というものがどういうものであったのか、本当にその時代を知らない若者たちに語り掛けるように懇切丁寧に教えてくれます。
    戦闘機の種類から、当時の日本の在り方や世論、当時の日本軍という組織がどういうところであったか……など、本当に色々な事を。

    私などは本当に無知なので、最初のうちは正直読み進めるのが大変でした。戦闘機の強さや母艦の性能など、何も知らなかったからです。
    本当に恥ずかしいんですが知っている戦闘機の名前は米軍のB29くらいで、零戦の存在さえも知りませんでした。
    艦隊に関しても某ゲームや某アニメでそれがモチーフになっているキャラクターがいるんだなあ、くらいの知識で……。
    『神風特攻隊』という名称と彼らがどういう部隊だったのかということくらいはさすがに知っていても、特攻が大成功したのは意表をつくことのできた最初の1回のみで、その後は突撃する前に米軍からまるでゲームのように撃墜される機体の方が圧倒的に多かったという事も、ただ敵に体当たりするためだけに作られた人間爆弾『桜花』の事も、何も知りませんでした。

    それらの説明も交えながら宮部の思い出話を聞かせてくれるおかげで、私も慶子や健太郎のように“宮部”について深く知っていくことが出来たように思います。

    第五章で井崎の話を聞いている辺りからはもうすっかり宮部久蔵という人物が好きになっていたので、彼らの口から宮部を悼む言葉を聞いたり、彼が「妻子の元に帰るまでは絶対に死なない」と語っていたという話を聞くたびにつらかったです。
    第十二章は最初から最後まで号泣してしまいました。

    どれだけ他人から馬鹿にされ蔑まれ罵られようとも、「妻子の為に絶対に生き延びる」とずっと誓っていた宮部は、終戦の1週間前に特攻隊として出撃し未帰還となります。

    この頃は「全機特攻」という空気ができていたという事でしたが、特攻隊に志願するか否か何度聞かれても絶対に首を縦に振らなかった彼が無理矢理に出撃隊に選出されるという事は有り得るんでしょうか。
    (そもそも、恐らく史実では 特攻隊に志願しません と正面切って堂々と言う事の出来る軍人など恐らくいなかったのでしょうが)本作の中での宮部は特攻を拒み、現に最後の出撃までは特攻隊に選ばれてはいません。
    単に彼の飛行技術が優れていたから……というのもあるかもしれませんが、結局、さいごに宮部は自分の乗るはずだった飛行機に不調があることを見抜き、それに乗れば助かるかもしれないという事を知りながら、その機体を大石(健太郎と慶子の現在の祖父)に託して不調の無い機体で敵へ特攻していったことから私は この時の宮部は自ら特攻隊に志願していたんじゃないかな……と勝手に思っています。
    宮部自身からこの時の心情や出来事が語られる場面はなく、どれも周りの印象や推察によって現代に形を成した彼の最後の出撃への記憶。
    だからこれも、私1人の勝手な想像にすぎませんが。
    あれだけ生に執着していた彼が、今までに散々地獄の戦場を生き抜いてきた彼が、神風特攻隊という作戦によって心を病んでしまったのかと思うと無念でなりません。
    敵部隊の元まで特攻隊を護り切れても、護り切れなくても、どちらになっても確実に自分の目の前で散っていく多くの戦友たちの姿に「自分だけが生き残るわけにはいかない」と、最後の最後で思ってしまったんでしょうか。

    第七章で谷川に「もし特攻を命じられたらどこかに不時着しろ」とまで言っていた宮部のことだから、実はどこかの島に不時着して生き延びていたりしないだろうか……なんて、そんな期待を少しだけ抱いてしまっていましたが、エピローグで打ちのめされました。
    宮部は見事に敵戦艦に特攻を果たしますが、彼の抱えた爆弾は不発に終わり、彼の体は機体と共にバラバラになってしまったという事が エピローグにおいて当時その戦艦に乗っていた米兵の口から語られます。
    彼の最期はそれはそれは立派なものだったんでしょう。
    だけど私はやっぱり、宮部に生きて妻子の元へ帰って欲しかった。

    この話に出てくる宮部のような男(特攻に志願しない、大っぴらに生きたいと主張するという点では無く 御国の為にと叫びながらも心の底では「生きて帰りたい」と願っていた男たち)は、実際に戦争によって命を落とした兵隊たちの中にもきっと居たのではないかと思うとつらくて、ただただ悲しかった。
    本当に誰にも悲しまれずに、自分自身も心の底から国の為に殉職する事に喜びを覚えて死んでいった者が果たしてどれだけ居たんだろう。
    戦争に参加して散ってしまったことによって、今現在はもう誰の記憶の中にも残っていない人も、きっと沢山いるんだろうと思うと悲しくて仕方がない。
    彼らがいたおかげで今現在の日本があるんだと頭でわかってはいても。
    生まれた時代や感性は違っても、現代を生きる人間と同じ形をして思考して生活をしていた人間が本当にただの消耗品のように使われていた時代が確かにあったことを、せめて私が死ぬまでの間、私の心の中に留めておこうと思っています。
    この先自分が無事にお年寄りと呼ばれる年齢まで生きることが出来たとして、その頃の日本や世界がどうなっているのか、今考えたってわかりっこない話ですが、どうか今よりも平和で穏やかな世界であってほしいと切に願います。

  • 2008/10/25 読了
    445ページ

    今年14個目の☆5つ。
    今年の№1。読後感は感無量。

    第二次大戦中、「特攻」で亡くなったおじいちゃんの事を知るために、孫が元軍人たちを訪ね歩いて当時の話を聞く。
    とても重い話だけど、特攻に「志願」した人たちの人間性に脚光をあてた本。

    ありきたりなテーマだけど、胸に来るものが一番大きく、自然と涙がこぼれてしまい、平常心になるまで少し時間がかかった。
    多くの人に読んで欲しい。

    いかに日本軍が人命を粗末に扱っていたかということがあちこちに描かれていて、とても心が痛む。
    日本が戦争に負けたのは、資源不足だったことだけでなく、思想的な理由から来る人員不足や、契機に対する判断力不足が原因なんだと思う。
    でもそういう思考って、今も当たり前に残っていると思うと、恐怖すら感じる。

    戦後を生きる者として、必読に値する本だと思う。
    守るものがある人にとっては、人生観が変わるかもしれない。

    1つケチをつけるなら、誤字脱字が多すぎる。

  • 泣きました。
    生に執着したのにも関わらず、特攻を行なったこと、周囲への影響など、どんどん謎に迫っていく所などが気になり読みやすかった。

  • これが空想上のお話であったらどんなにいいのにと思わずにはいられない実際にあった戦争。
    映画は見ていたので、大体の流れはわかっているはずなのに辛くて辛くて読み進まなかった。

    こんなにも人の命が軽いことがあっていいんだろうか、この戦争になんの意味があったのか、
    考えてしまう本でした。

    映画では華々しい?最期であった記憶があるのだが、、記憶違い?
    小説では爆発することない零戦と共に亡くなった宮部さんの思いはどんなものだったのか、辛すぎます...。

  • フィクションとして特攻と原爆を扱った作品には抵抗があります。これは年代的なもので、映画も小説も避けてきました。しかし、他の作品で興味を持った百田さんの代表作ですから、ここは折れて読んでみました。特攻で死んでいた実の祖父、記憶も記録もない実像を調べていて、現代を生きる孫にとって、過去の戦争が浮かび上がってくる。そして、意外な結末がとなるが・・いろいろと戦争についてわだかまっていた部分に答えがあった気がする。傑作です。

  • 【歴史と問題提起】
    祖父の体に埋まった銃弾。
    その窪みと弛んだ皮膚を思い出しながら、戦争を眺めました。
    百田尚樹さんの物語は、どの作品もノンフィクションとフィクションの狭間。
    ただ生き抜いた、だけでは終わらない物語。

    …余波としては…艦これ提督だったので、戦艦の名前がリンクして混線しました。。

    メディアが変わるのは、まだ先かもしれませんね…。

    いろいろ考えさせられました。

  • 太平洋戦争の特攻隊員として戦死した祖父を知る人から人となりを聞いて回る話。

  • (2014.03.28読了)
    戦争や特攻隊に関して、賛否両論、いろいろな意見があるようですが、単純に物語として大いに楽しみました。
    感涙!
    私にはすごくよかったです。

  • 戦争のことは知らないといけないことだと思った。70年前の日本を、教科書上だけでの歴史にしてはいけない。祖父母の生まれた後の時代だと考えるとなお、そう思う。過去を知り、未来に活かす。
    戦争での油断、判断ミス、戦略のあまさなどの失敗は、現代でも活かすことはできる。
    この本を通じて、もし私に何かあったら一番悲しむであろうお母さんのことを考えた。そうすると、お母さんを大切にしようという考えと共に自分のことも大切にしたいという考えが浮かんだ。お母さんを大切にしたいと思えたことは大きな進歩だと思う。

  • 「2012年 POPコンテスト」
    「2014年 POPコンテスト」
    「2014年 新入生におすすめの本」

    http://opac.lib.tokushima-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?materialid=211001177

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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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