オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険

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  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788511248

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    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00143952

  • タイトルに「冒険」と表記しただけあって、恐れず大胆に自説を展開した検証がなされています。

  • 懐疑主義的な立場から、心理学にまつわる幾つかの「神話」、もっと俗な表現で言えば「都市伝説」的なテーマを批判的に検証する。
    扱われているテーマは「狼に育てられた少女」「TVや映画のサブリミナル効果」「言語・文化による色の認識数の変化(三色の虹)」「アルバート坊やの恐怖条件づけ」他。一次資料や聞き取り調査などにより、幾つかの「神話」について著者は明確にその心理学的効果を否定する。また、「なぜ母親は赤ちゃんを左胸で抱くか」というテーマについては、既存の学説は否定するものの、現実に左胸で抱くという事実は認め、未だ心理学では解明されていないとする。

    「神話を」明快にバッサリ切り崩す著者の文章は、面白く引き込まれる。しかし一方で、本書の記述に関して批判的な研究者が居ることもまた事実である。こうした懐疑主義的な本を読む際に、まず読者自身が懐疑的な立場を堅守することが大事であろう。

  • 心理学にまとわる『神話』をぶっ壊すという本書の試みは非常に刺激的であり、著者のシニカルな語り口も個人的には好みである。

    しかし、本書が取り扱う『神話』が、「オオカミ少女」「サブリミナル効果」以外、『神話』と呼ぶほど世間一般にその説が浸透していないように感じることが少し肩すかし(逆にそんな説があったのかという点では勉強になったので、それはそれで楽しめたが)。

    また、心理学という間接学問の限界ゆえか、『神話』の検証方法も間接事実の収集をもとにした著者の推測レベルを超えておらず、著者の主張に説得力が十分あるとは言えない、ただ読み物としては純粋に面白かった。

  • 心理学を専攻していると、
    「心理学って人の心が読めるの?」と
    胡散臭さと興味を持って聞かれることが多い。

    普通の心理学を勉強すれば、そんなことはないと自信を持って
    言えるのだが、なんで心理学は、そんな胡散臭いような学問に
    なってしまっているのかがよく分かる一冊。

    また同時に、心理学をめぐって、
    富と名声を手に入れようとした人や
    孤独に陥った人などの人間ドラマが紹介されている。
    ここが結構生々しくて面白い。

    心理学を勉強している大学生は読んでみると面白いだろう。

  •  心理学の嘘、でっち上げ、間違いを丁寧に暴いていく。「狼に育てられた子-カラマとアマラの養育日記」(福村出版)、「メディア・セックス」(リプロポート)等、どれだけの人が真実と受取っているだろう。そしてそこから、どれだけの別の真実が作られていっているのだろうか。

     「カラマとアマラ」「サブリミナル」「プラナリアの学習実験」「アルバート坊や」など、心理学では有名すぎるトピックスの「嘘」が丁寧に暴かれていく。いくつかについては、僕もそう信じてきたし、いくつかについては、当初から眉唾とは思っていたが、それを口にすることはなかった。

     いまだに「狼に育てられた子」も「メディア・セックス」・・・は、書店に並んでいる。たぶん大学図書館にもあるはずである。まず、心理学を学んでいる方は本書を読んでいただきたい。そして、もしそれらについて今も真実だと思っているのなら、その知識はリセットしていただいたほうがいいかもしれない。

     科学を志す方もぜひ読んでいただきたい。真実に近づく態度として、本書はすばらしい。

     「論文捏造」(中公新書)という本もあるけど、功名心に負けてしまう科学者って意外と多いのかも・・・。そして、自分の経験と感性をもっと信じたほうがいいのかも知れないと思うのであった。鈴木に指摘されるまでもなく、常識的に考えれば「おかしい」ことはやっぱりおかしいのである。もっとも、この常識とやらが結局、知識や経験からしか得られないものだから、「非常識」が広く流布されることにもなる

  • 心理学という、直接識別することが難しい学問において、今まで何の気なしにに信じていた者が必ずしもそうではないということをこの本によって知ることが出来た。

    盲信するするのではなく、それが真実かどうか吟味することが大切だと思った。

  • 心理学の神話、オオカミに育てられた少女、サブリミナル効果の欺瞞、天才ウマは実験車が作り出したもの、赤ちゃんを左胸に抱く心音説、等々、俗説が蔓延していることに驚いた。
    ただ少し取り上げている話が古い気がする。

  •  本書は,副題に「心理学の神話をめぐる冒険」とあるように,心理学上における迷信や誤信の例を挙げてそれが何故なかなかなくならないのかを「人間の心理」をもとにして考えています。
     「帯」の文章をを紹介しましょう。
    否定されているのに事実として何度もよみがえり,テキストにさえ載る心理学の数々の迷信や誤信-それらがいかに生み出され,流布されていくのか。「人間の営み」としての心理学のドラマを読み解く!
     誤謬や迷信に興味がある私にとって,本書は期待通りの内容の本でした。
     取り上げられている内容は「アマラとカマラのオオカミ少女」「サブリミナル効果」「言語・文化相対仮説」「双子の話」「赤ちゃんを左手で抱くのは」「りこうな馬ハンス」などです。
     サブリミナル効果の話ってどんなことだったのか正確には知らなかったので,顛末を知っておもしろかったです。どう考えてもあり得ないことが,一人歩きするなんて,人間の心理ってある意味とっても情けないものですね。サブリミナル効果なんて,未だに信じている日本人も多いんじゃないかなあ。

  • サブリミナル効果とか、或いはオオカミ少女のアマラ・カマラと言った話は現代社会に於いて広く知られているが、実際これらの効果は科学的見地から見た場合非常に怪しいものであると論じた本。これらの噂は確かに一人歩きしやすい性質を持っているなと感じた次第。

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著者プロフィール

新潟大学名誉教授。
著書『動物は世界をどう見るか』『オオカミ少女はいなかった』(新曜社)
訳書 R・N・シェパード『視覚のトリック』
ジャン=フランソワ・ドルティエ 著『ヒト、この奇妙な動物』
P.エーリック、A.エーリック『支配的動物』
フィリップ・ステッドマン 著『フェルメールのカメラ』他多数

「2019年 『謎解き アヴェロンの野生児』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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