すべての仕事は「問い」からはじまる たった1秒の「問題解決」思考
- SBクリエイティブ (2016年10月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784797382624
作品紹介・あらすじ
●マッキンゼーで学んだ、最も大切な仕事術
・すべての仕事において、「その仕事の本質は何か」「その目的は何か」を意識しておくことは非常に大切なことであると思います。著者がマッキンゼー学んだ、最も大事なことは「問い」でした。問題に迫るうえでも、事実を知るうえでも「本質に迫る質問すること」が、質の高い仕事をするうえで何より大事なことだそうです。さらに、質問をすることで「相手に気持ちよく動いてもらうこと」もできます。
・そこで本書では、「問うこと」に焦点を当て、より本質的な仕事をするための方法や「問い」の技術などを、仕事術として紹介します。
・世の中には、たったひとつの「問い」を出すだけで、物事がクリアになったり、やるべきことが明確になったりということがままあります。マッキンゼーで学び、現在エグゼクティブコーチングの中で磨かれた、質問のスキルについて、余すところなく紹介します。
感想・レビュー・書評
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【印象に残った話】
・良い問いのポイントは、視座を高くすること、未来志向であることだ
・ある物事に対して、自分の視座だけでなく、経営者やユーザーなど、さまざまな視座から問うようにすると、これまでと違うものが見えてくる
・「どうしてうまくいかないのか?」といった、ネガティブな問いはネガティブな感情を引き起こす一方、「どうしたらいいか」といったポジティブな問いを立てれば、未来に意識が向かい、「他のやり方を試せばうまくいく」という思考に導くことができる
・過去の延長線上で考えるのではなく、本来のあるべき姿から逆算して考えることで、実現したい未来に近づく
【アクションプラン】
・仕事上の問題に対して、ユーザー視点でどうしたらいいかを問う詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『すべての仕事は「問い」からはじまる たった1秒の「問題解決思考」』(大嶋祥誉著、SBクリエイティブ)の著者は、マッキンゼー・アンド・カンパニーで実績を残したのち、コーチングやコンサルティングの仕事を通じ、さまざまなプロジェクトにおける問題解決を手がけてきたという人物。そんなキャリアに基づいて実感するのは、「問い」の重要性なのだそうです。
忙しい日常の中では、どうしても目の前のやるべきことに追われます。
本質的なことや、自分に本当に大事なことほど、後回しになりがちになります。
そのままでは、頑張っているのにこれでいいのか、このまま進めていいのかと「モヤモヤ」が消えません。
仕事でも人生でも、今の状況を変えたいときは、
「問い」を使うことによって、状況を変えることができます。(「はじめに」より)
事実、著者が問題解決の現場でやってきたのも、「問うこと」だといいます。
「それは本当に大事なことですか?」
「なぜ大事だと思うのですか?」
「大事にすることでなにが生まれますか?」
(「はじめに」より)
このように「問い」をすることで、整理できずにどうしていいかわからなかったモヤモヤを解消し、やりたいことや、進むべき方向を明らかにするということ。
でも、そもそも「問い」とはなんなのでしょうか? その本質を探るべく、第2章「良い問いとは何か?」に焦点を当ててみます。
優れた問いには「型」がある
優れた問いには「型」があるのだと著者は主張します。そして、どんな問いにも共通する「型」は
1. 問いには1行
2. 自分の判断を入れない
3. ポジティブにする
4. 視座を高くする
(59ページより)
ということなのだそうです。
まずは「問いは1行」について。これは、問いは「短く本質に迫るもの」でなくてはならないということ。文章にしたとき何行にもなるようなものは「問い」ではないというのです。
私たちの脳は、シンプルな「問い」であるほど、多くのシナプス(脳の神経細胞の結合部)が活発に働いて、思わぬ思考のジャンプを呼び起こす性質を持っているのだと著者は解説しています。思考のジャンプが起こると、自分を無意識に縛ってきた「常識」や「こうあらねばならない」といった前提条件が外れ、自由に考えを広げることができるというのです。
「自分の判断を入れない」とは、相手が反発したくなるような要素を排除するということ。「判断(ジャッジ)」や「誘導」が入ってしまうと、問われた相手は反発したくなるものだというわけです。だからこそ、問われた人に「スッと入って」きて、モヤッとしていたものを晴らし、前向きなアクションを起こしたくなるような問いことが重要だということ。
「ポジティブにする」ことの重要性をいい表す要因として著者が引き合いに出しているのは、「PMA思考」。Positive mental attitudeの略で、ポジティブなマインドセットを意味するのだそうです。「どうしてダメなのか」は過去に向かう問いですが、「どうしたらいいだろう」は未来に向かう問い。つまり後者を心がけるべきだというのです。
そして「視座を高くする」ということ。視座は視点や視野とも似ていますが、視点とは「どこを見ているか」で、視野は「どこまでの範囲を見ているか」。一方、視座とは、より高いレイヤー(階層)にあり、視点や視野を含め「どんな立場から見ているか」を指すのだそうです。現実の自分がどんな立場であっても、「高い視座」を持ち、いろいろな立場から物事を問うことができれば、その場に流されることなく、広い視野から正しい判断ができるようになるといいます。(59ページより)
よい問いの4つの方向
「問い」には「型」だけでなく、「方向性」があると著者はいいます。つまり、「どこへ向けて問うか」ということ。いくら型のよい問いであっても、問う方向がおかしければ、よい答えは出てこないというのです。そして「よい問い」はおおむね、次の4つの方向性のうちのいずれかを持っているといいます。
1. 根本を問う → 問題の核心をつく
たとえば部屋の植物の鉢から水が漏れていたとすれば、当然ながら水漏れをなんとかしなければなりません。しかし、「水漏れしている場所はどこ?」と問いを立てただけでは問題は限定的。もし、他にも鉢が傷んでいる箇所があれば、またそこから水が漏れるかもしれないわけです。
しかし、「そもそも、なぜ水漏れが発生するのだろう?」という根本から問いを立ててみると、「実はそれほど水やりをしなくてもいい植物なのに、水をやりすぎていたことが原因だった」と気づくかもしれません。これは、仕事での問題解決などに役立つ思考だといいます。
2. 「未来志向」の問いである → 「あるべき姿」に近づく
「未来志向」の問いとは、過去の延長線上で考えるのではなく、「そもそも、どんな未来を達成したいのか」という視点から問うもの。過去の延長線上から考えたのでは、発想が広がらず、同じことを繰り返すだけ。しかし、本来あるべき姿から逆算して考えることで、いま本当にやるべきことが見えて来ることに。前提条件が外れることにもなるので、「ゼロ思考」で物事を考えやすくなるといいます。
「ゼロ思考」とは、あらゆる可能性から考えるということ。未来のあるべき姿から逆算し、さまざまな問いを立てれば、「現状」という枠から外れて「いま、なにをすればいいか」が具体的に見えてくるというのです。
3. 枠を外す → 「本当は?」で、可能性を広げる
自分にとって大事な問題であればあるほど、人はいろいろと余計なことを考えてしまうもの。そんなとき、「自分が本当に大事にしたいことは?」という問いを立ててみると、思考の可能性が広がるといいます。
目の前の問題に対して「イエスかノーか」という問いで考えるよりも、「自分が本当に大事にしたいことは?」という、より大きな問いで考えるほうが、自分の枠を外して可能性を広げることにつながるという考え方。これは仕事だけでなく、人生全般において、大きな視点で物事を考えるために必要な問いだと著者はいいます。
4. 「本当の声」をインスパイアする → 相手を動かす
なにかで悩んでいる人に対し、「そもそも、自分自身にとってなにが本当に大事なの?」という問いを投げかけると、相手がハッとすることがよくあるといいます。なぜなら問われた人は、自分の内部から出てきた「本当の声」に対し、忘れていたものを思い出したかのようになるから。
ここで大事なのは、問いをした側は「答え」を口にしていないということ。あくまで問われた側が自分で気づくからこそ、「ハッ」としてその気になるというわけです。このように、本質に迫る優れた問いは、相手をインスパイア(触発)させ、行動を起こさせるものなのだそうです。(73ページより)
著者が主張するとおり、「問い」は客観性を持つうえでとても重要なポイント。よりよい思考力を身につけるために、本書を参考にして見てはいかがでしょうか?
(印南敦史) -
人の意見は本当にそうか、一回疑えと何度も言われているがなかなか直らず、何とかしたいと思って読みました。
問いかけるとはどう言うことか、分かりやすい具体例が書いてあって、実践出来そうな気がしています。
身につくまで何回も読み返したいと思います。 -
1)
「優れた問い」には法則があります。
①問いは一行で表せるくらい端的にして本質に迫る
②自分の判断や相手を誘導する情報は入れない
③自分以外の視点を取り入れ問題解決の視座を高くする
④未来志向のポジティブな問いを前提にする
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2)
さらに、優れた問いには「方向性」があります。
具体的には下記4つ。
・問題の根本を問う
・未来志向の問いである
・思考の枠を外す
・本当の声(本音)を導き出す
法則に乗っ取っていても問いが向いている方向がずれていれば問題は解決しないので注意。
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3)
問題の根本を問う方向性を考える3つの切り口。
①Where:問題のありかはどこか?
②Why:問題の根本的な原因はどこにあるのか?
③How:その問題にはどういった対策が考えられるか?
注意点はいきなりHOWから始めないことです。
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4)
仕事で成果を上げる3ステップの思考・アクション
①解決しようとしている問題を取り巻く情報を5W1Hで把握する
②仮説を問いの形で立てる
③仮説を検証する
同僚への確認時も5W1Hのフレームを使って抜け漏れなく確認したいですね。
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5)
質問する時はニュートラルさを意識。
【ダメな問い】
「どうしてやってくれないのか?」
質問者の主観が入っているので健全な議論ができない
【良質な問い】
「そのやり方をしたのはなぜ?」
相手の人格ではなく方法論にフォーカスした質問になっている。
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6)
優れた問いは新しい事業・プロダクトを生む。
実はポカリスエットもある問いから生まれています。
「点滴液を飲み物にできないだろうか?」という問いです。
開発者がメキシコ出張時に入院した際に、栄養と水分を一緒に接種できないか、と考えたそう。
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7)
問いを使いこなすメリット
①情報が整理され優先順位を付けられる
②物事の核心が掴め時短に繋がる
③異なる事象を繋げて発想の枠を広げる
④行き詰まった思考に突破口を見出す
⑤質問により人を動かせる
⑥自分が本当にやりたいことが明確になりすぐ動ける
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8)
重要な仕事に集中するための問い
・今自分が集中すべきものは何か?
・本当に必要な仕事は何か?
(その仕事は本当に必要か?)
・それは重要なことなのか?
・それをやらないとどんな問題が起こるか?
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9)
良質な問いは、問題や事業に切り口を与えてその本質に迫るという特徴を持っています。
例えばニュートンは「月は落ちないのになぜリンゴは落ちるのか?」とという問いを立てて偉大なる発見をしました。
世の中や世の中を紐解く理論はまだ未完成なんです。
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10)
問いはポジティブに。
・ポジティブな問い
「どうしたらいいだろう?」という未来志向の問い
・ネガティブな問い
「どうしてダメなのか?」という過去思考の問い
未来思考の問いを癖にするには「KPT」というフレームワークが有効かもしれません。
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11)
「KPT」とは?
・継続することは何か?
・改善することは何か?
・次はどんなことに挑戦するか?
自分やチームの取り組みの良悪両方を洗い出し、その上で「次どうしたらいいか?」という「未来志向の問い」で締めるフレームワークです。
チームの内省で使いましょう。
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12)
「筋の良い仮説(=問い)」の正体。
筋の良さは「前提条件を疑えているか?」に関連。
それまでの当たり前やべき論に対して、新しい視点から問いを立てるのが筋の良い仮説に辿りつく道です。
例えば
・本当にそうなの?
・これもありでは?
などの問い。
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13)
問いは「プロアクティブ型」でいきましょう。
「プロアクティブ型」の問いとは、「そもそもどうしたいか?」「本来あるべき姿は?」というように、自分で仮説を立ててまだ表面化していない問題を問うものです。
真の課題を掴みにいき、仕事を前に進める。
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14)
人を動かす問いに共通するのは、「相手の可能性を広げる意識」です。
相手を問い詰めるのではなく、相手に対する「尊重、共感、許容」を忘れずに、相手がもっと気持ちよく働いたり、能力を伸ばしたりというポジティブな結果つながる問いを投げましょう。
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15)
自分の「五感」を信じて問いを立てる。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感どこかで違和感を感じることがあるでしょう。そのときは、「これは何?どういうこと?」と問いを立ててみましょう。頭で考える前に五感で感じた違和感を捨ててはいけないのです。 -
自己啓発
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・問題そのものに取りかかる前に「何が本当の問題なのか?」を問うべき
・問題を構造化して真の問題は何かを明確にし、そしてクライアントがどうなったらいいのか?本当にイシュー(重要な課題)になるのか?を考える
・「Where(問題のありか)」「Why(原因)」「How(対策)」の3つの切り口
・人間のやることには①表面に表れる部分、②信念体系、③感情の出来事、がある
・きちんと筋道を立てて考えることができないときに、人は「問題を抱えてしまっている」と思う
・「他者への尊重、共感、許容」といったメンタルの要素が高い人たちが集まっているチームは共通して、生産性が高くチームの業績も高い -
「問い」が人生を豊かにする。
非常に参考になった。
要保管。
以下引用
「なるほど」と思える発想がなぜ出てこないのか。その理由は、多くの人が「当たり前というプラグ」を「常識というコンセント」に差したままだから。常識のコンセントには、このままの状態を維持しようとする強い電流が常に流れている。そのプラグを意識して抜くことで「無邪気な発想」ができるようになる。 -
タイトルに魅かれて読んだ。
「問い」について、意識していきたい。 -
悪くはないんだけど、さして良くもない。平々凡々としたビジネス書だなぁ……という感じ。最初のページに「仕事で使える「問い」リスト」を切り取れるようになっているのは親切だけど、いざ読み進めてみると、なんだか字面だけが脳みその表面を流れ、伝い、落ちていく感じがする。その理由を考えみると、すごく感覚的な言い方になるけれども「著者の熱量が感じられない」からだろう。読者に、どうしてもこれを伝えたいというアツい思いがないんじゃないか……だから俗にいう「腹落ち」もあまりしない。ビジネス書の墓場を構成する一冊になりそうだ。