争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール

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  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797672015

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクションの作品として、非常に高い部類に入ると思う。

    川崎Fの我那覇選手がドーピングは、事実誤認した一新聞社をマスコミが同じような情報を流し、青木DCが事実確認をしないまま、ドーピングとしてチーム、チームドクター、我那覇選手の出場停止などの制裁を出したことが問題であった。

    しかし、サッカー関係者の動きも、また素晴らしい。チームドクターがまとまるところ、あの手紙から我那覇が立ち上がるところ、サポータの協力、他のJリーグの会社の社長などの声、沖縄の地元の人間の協力も含めて、我那覇を支え、そしてJリーグを救った最後はすばらしい。

    しかし、どう見ても全面敗訴になっても1000万を返さないJリーグも問題ですね。

  • 我那覇はJリーグと闘ったのではない。Jリーグを救った。
    この言葉が全てを物語っているような気がしますね。

    事件の事は知っていましたが、知らなかった事ばかり。サッカーファンならずとも、スポーツファンは必読!

    本書は我那覇選手の自伝でもなんでもないところが凄い。
    なにせ本人が知らないところで闘いが繰り広げられていたのですから。チェアマンとのやりとりなど、録音から起こした内容が記されているので、その文章は鬼気迫るものがありました。

    チームドクターたち、サポーター、選手会。アツい想いは感動を呼びます。

    それに引き換え、青木、鬼武、川淵・・・・。

    政治家となんら変わらんぞ。

  •  とにかく素晴らしい一冊だった。特に、青木DC委員長と各クラブドクターとのやり取りは読んでいて手に汗握るくらい緊迫感が伝わってきた。
     他の方も書かれていますが、ぜひ多くの方に読んで欲しい!

  • サッカー元日本代表FW我那覇和樹選手が受けた医療行為が、マスコミの誤報によりドーピング違反になるのではと問題に(裁判の結果、無罪)。
    その問題に、名誉と誇りをかけて立ち向かう我那覇選手、チームドクター、たくさんのサッカーを愛する人達のノンフィクション。

  • ノンフィクションなので読み応えがたっぷり、加えてライターである著者の文書は知的で読みやすい。Jリーグの問題点が浮き彫りになった事件、でも多くの人の情熱がつまってます。
    良い本でした。

  • こんなことは本来あってはならない。できれば存在して欲しくないテーマ。最後の1ページまでじっくり読みました。ミステリーを読んでいるのではないかと思う場面も。
    最終の最高機関の裁定が出たのだからリーグは潔く非を認め、すべてを清算するべきでしょう。こういう事故(事件?)の当事者は、解決しても気持ちが晴れる人は皆無、ただむなしい気持ちが残るだけですね。
    好きなチームのドクターがこんな大活躍をしていたのが驚きで、とても興味深かったです。

  • 僕はジェフのサポーターなので、我那覇選手の冤罪事件について少しは知っていた。

    本書にも出てくるが、蘇我でのちんすこう募金にも協力させてもらっている。

    しかし、本書を読んで愕然とした。僕は我那覇選手の冤罪事件について、何も知らなかったのだ。

    どんなに酷い事件だったのか、我那覇選手がどんな思いで闘ったのか。

    Jリーグのチームドクターや沖縄の先輩、フロンターレのサポーター、国会議員の思いや行動には本当に感動させられた。

    もちろん、僕は我那覇を信じていた。我那覇のプレーを見てればそんな事は分かるよ。だから、報道で無罪を知った時は嬉しかった。

    早くチームをJリーグに上げろよ、
    ガナ!

  • もう間もなくオリンピックがロンドンで開催される。

    オリンピックになると最近ではドーピング疑惑から戻ってくる選手もいれば、大会中ドーピングで去る選手もおり、後日メダルを剥奪される選手も登場することはここ数十年毎度のことだ。

    日本で知られたケースとしては、ベン・ジョンソンやマリオン・ジョーンズの短距離選手、もしくは優勝した選手のメダル剥奪による金メダル獲得の室伏広治のケースだろうか。


    多くの事例が海外選手のためか、日本人のドーピングに関する知識や関心はそれほど高くないと言えるだろう。

    それだけ現場の指導者や選手達が真面目に取り組んでいる証拠ともいえるだろう。

    しかしだからだろうか、いざドーピングの実例が飛び出すと当事者もマスコミも協会もみんなアタフタしてしまう。

    そしてその結果、きちんと問題が検証され、またその後対応もされない。

    この本の内容はその結果犠牲になってしまった一人の男の名誉挽回の軌跡とそれに協力して立ち上がったJリーグのチームドクターたち、無知なマスコミとサッカー協会/Jリーグ幹部、そして不慣れなフロント対応の実話である。

    詳しくこのことを知らなかった私は自分を恥じた。

    ニュースとして知っていたものの、その事実の深さと大切さに気付かなかったことが情けない。

    始めに、この本は私が最近で最もインパクト、いや引き込まれた一冊だ。

    お金や保身などに惑わされずに名誉と正義のために巨大な組織に立ち向かう男のストーリーに何度読みながら「スゲェー本だ」と思ったことだろう。

    スポーツの本を読んでいるというよりかは、山崎豊子の小説を読んでいるような錯覚、テレビドラマならハゲタカを見ているような緊張感と重みに吸い込まれる一冊だった。

    著者は「オシムの言葉」で有名な木村元彦氏。


    オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える
    作者: 木村元彦
    出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
    発売日: 2005/12/05
    メディア: 単行本



    ただどちらかといえば、今回の作品は彼のユーゴスラビアサッカー事情を描いた作品群にスタイルは似ている。


    悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)
    作者: 木村元彦
    出版社/メーカー: 集英社
    発売日: 2001/06/20
    メディア: 文庫


    誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)
    作者: 木村元彦
    出版社/メーカー: 集英社
    発売日: 2000/09/20
    メディア: 文庫



    さて、主人公は誰といったらいいのだろう。。。

    当然当時川崎フロンターレに所属していた元日本代表FW我那覇選手はそのうち一人である。

    しかしながら、彼のために、そして将来の日本のサッカー選手達のために立ち上がったJリーグのチームドクター、特に浦和レッズの仁賀チームドクターは、この話の主役といっても過言でないかもしれない。



    内容は、激しいポジション争いを川崎フロンターレ内で繰り広げている中、我那覇選手が激しい体調不良でチームドクターから点滴治療を受ける。

    翌日サンケイスポーツに「我那覇に秘密兵器、にんにく注射でパワー全開」の記事が掲載される。

    にんにく注射はあきらなかな違反になるのだが、実態は全く違った誤報であり、サンケイスポーツの記者は直接事実を確認した訳でもなかった上に、フロンターレ番記者がその日取材に来れず、ピンチヒッターの担当記者が書いた内容だった。

    この報道にあせったJリーグは現状をきちんと検証せずに、我那覇に違反通告を与える。

    しかし、事態を重く見たJリーグの全チームのドクターたちが立ち上がる。

    この違反通告は、Jリーグルールに則っても不備があり、さらにFIFAやWADA(世界アンチドーピング機構)の定めた定義に則っても不備があったのだ。

    現場の医師たちはこの違反通告は他人事ではなく、現場を預かるものとしても受け入れられない通達だった。

    ここからドクター達が立ち上がるのだが、当の本人我那覇選手はまだ事態を把握しきれていない。

    しかし、汚名挽回を晴らすには時間が刻一刻となくなっていた。

    多くの人の勇気ある行動と志により、やがて我那覇選手も事実を知るべく、そして息子に自分はドーピングをしていないと胸を張って言えるべく立ち上がる。

    たった一人で何千万円もの費用がかかるCAS裁定にJリーグの判断を申し立てするのだ。

    つまり自分の勤め先の協会を相手に戦いを挑んだのだ。

    その裏側で元Jリーガー新人国会議員や、沖縄のサッカー関係者、川崎フロンターレのサポーター、スタッフ、Jリーグ選手会そして先日引退した当時の選手会長、藤田俊哉など多くの人のバックアップがあった。

    争うは本意ならねど、最大の敵はサッカー協会会長、川淵三郎に全面バックアップされた、JFAスポーツ医学委員長兼Jリーグドーピングコントロール委員長の青木氏。

    ドーピングの世界情勢に疎いこの人物は、弁論上手だった。

    そして役職を兼務することで正常な統治体制が欠如していたサッカー協会の暗部にこの事件は発生してしまった。

    ここから多くの人間を巻き込み、そして多くの人間の協力を得ながら我那覇選手は信念と事実を知る戦いに挑む。

    そして一選手とチームドクターが巨大勢力に挑んだ戦いは、数多くのドラマと奇跡が生まれ、最終的には勝利で終わる。


    しかし6試合も出場停止処分をくらってしまった我那覇選手はその後代表から遠ざかり、川崎フロンターレがリーグに支払った制裁金1000万円も返却はされていない。

    本の最後は当時のJリーグチェアマン、鬼武氏へのインタビューと我那覇選手のインタビューで締め括られている。

    青木氏はインタビューを拒否し、現在は横浜市スポーツ医科学センター長を務めているそうだ。

    そして我那覇選手は現在出身の沖縄でFC琉球に所属し、Jリーグ入りを目指している。


    アスリートの勝利への渇望は信じられないほど強いものがある。

    ましてやマイナースポーツなら、メダルを取る取らないは生活に関わる重大な深刻な問題だ。

    メジャーなスポーツでも生活が掛かっていることには変わりはなく、激しいポジション争いが人を誤った方向へ走らせてしまうかもしれない。

    日本ではスポーツが体育と結びついて発展した歴史があり、ことドーピングに関してはその影響が良い方向へと出ているといえるだろう。

    しかしその一方で、我々はこの問題に対する認識と理解が著しく低く、重大性もわかっていないと言えるだろう。

    本来ならば部活動できちんと教育されるべき問題であろう。

    我那覇選手の問題ほど取り上げられなかったが、ラグビーの日本代表選手があごひげをかっこ良くしようとして増毛剤を使用したら、ドーピング違反で引っかかり、2年間の出場停止処分を現在果たしている。

    我々スポーツファンは、若き司令塔を一人あまりの認識不足のために失ったに等しい。

    今最も必要としているのは啓蒙活動かもしれない。

    あまりにも物議を醸すアイディアかもしれないが、華麗なる一族やハゲタカ、白い巨塔をプロデュースしたスタッフに、この我那覇と医師達の現実を描いて欲しい。

    我々スポーツファンもドーピングに対する正しい認識がないと、我々が最も楽しみにしている選手の活躍が見られないのだ。

    協会や関係者共々二度とこの過ちを犯して欲しくないものだ。

    いずれにせよ、一度は汚名を受けてしまった我那覇選手の沖縄での活躍を願うと共に、多くの人にこの本を読んでもらいたい。

  • 絶対読むべき。日本に数少ない、本物のサッカージャーナリスト。

  • この件に関して、ほぼ何も知らなかったが、この本に書いてあることが全て事実だとしたらとんでもないことだったんだと感じている。
    我那覇選手の勇気というか、サッカーに真摯な態度とそれをサポートする人々の様子は涙がでる。
    その反面、組織が上手く作用していないサッカー協会、Jリーグには歯がゆい思いが募る。
    誰もが悪人だとはおもわないが、それを許してしまう、また、生んでしまう組織は今後のサッカー界の課題ではないか。

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著者プロフィール

1962年愛知県生まれ。中央大学卒。ノンフィクションライター。東欧やアジアの民族問題を中心に取材、執筆活動を続ける。おもな著書に『オシムの言葉』(集英社文庫)、『蹴る群れ』(集英社文庫)、『無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代』(ころから)、共著に『さらば、ヘイト本!』(ころから)など。

「2019年 『13坪の本屋の奇跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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