争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール

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  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797672015

感想・レビュー・書評

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  • 我那覇選手のドーピング免罪事件を追った本。

  • 沖縄から初めて生まれた、日本代表サッカー選手、我那覇和樹。2007年4月21日、Jリーグ川崎フロンターレの我那覇和樹選手は、風邪による脱水症状により、医師から点滴(生理的食塩水と少量のビタミン剤)を受ける。これがマスコミにより「にんにく注射」と誤報され、我那覇選手と後藤医師はドーピングという汚名を着せられてしまう。我那覇選手は6試合出場停止処分、レギュラー争いから脱落する。このまったく無実の我那覇選手と後藤医師を救うために、Jリーグのチームドクターたちは一丸となって、Jリーグ幹部に闘いを挑む。

    中盤までは、川淵・青木・鬼武体制の傲慢な独裁ぶりが延々と続き、医学用語も羅列されているため、私には読み進むのが難しかった。ページをめくるたびに、苛立ってしまうのだ。


    しかし、我那覇選手自身が浦和レッズの仁賀チームドクターからの手紙を読んで闘うことを決意してからは、加速して読めた。我那覇選手は自分だけじゃなく、Jリーグのすべての選手のために闘いに挑んだ。争いのためには、3500万円という莫大な費用がかかる。その費用は、Jリーグ選手たち、チームドクターたち、そして沖縄の仲間が奔走して集めた。上京して声を枯らして「ちんすこう募金」をする場面では、私も涙が止まらなくなった。


    2008年5月、国際スポーツ仲裁裁判所で、無罪を獲得。我那覇選手と後藤医師は汚名を晴らした。


    我那覇選手は最後の最後まで、「争うのは本意ではない」と語っていたという。真摯にサッカーに打ち込んできた、誠実で愛情深い人格の選手なのだ。現在は故郷沖縄で、JFC琉球に入団、ピッチを走り回っている。

    我那覇選手と彼を支えてともに闘った人々の、胸が震えるノンフィクション。


    あなたにもぜひ読んでほしい。そして語り合いたい。

    • bobaさん
      我那覇選手の係争問題は知っていたんだけど、報道ではやはり一部分しか記されないからね。。。

      ご本人が受けた誤解や中傷は想像を絶するものが...
      我那覇選手の係争問題は知っていたんだけど、報道ではやはり一部分しか記されないからね。。。

      ご本人が受けた誤解や中傷は想像を絶するものがあるのだろう…

      試合を全うしなければいけない責任感が思いもよらぬ冤罪を産み…

      うん、シーナと語り合うために読んでみるね。。。
      2012/03/20
  • 泣いた。我那覇が関東近郊にきたら応援にいくぜ。

  • 2007年に起こった我那覇のドーピング冤罪事件を克明に描いたノンフィクション。
    見所は二つ。
    一つは、ドーピング認定に対して異議を唱える医師達とそれをことごとく却下するJリーグドーピングコントロール委員長との詳細なディベート。条文の解釈巡る主張の応酬、現場の正論とそれを打ち砕く権力の詭弁の対立構図は「チームバチスタ」や「ハゲタカ」「下町ロケット」などの小説を思い起こさせた。でも、恐ろしいというべきか、よくできたというべきか・・・これは現実の話。
    二つ目は、冤罪に立ち向かう医師達や我那覇本人と彼を支える周囲の人たちの想いが丁寧に描写されている点。ただの冤罪晴らしを超えた人々の矜持・生き様とそれによって生まれるつながりとアクションに胸を打たれる。

  • 長谷部選手のブログで紹介されていたのがきっかけで、気になっていた我那覇選手のことだったのですぐに購入(5時間で読了)。
    引用等が多く、かなり丁寧にまとめ上げられている本なので、非常に読み応えがあった。
    組織としてガバナンスが全く効いておらず、選手のために機能していないように見えるJリーグに苛立ちを覚えながらも、我那覇選手と取り巻くドクターや選手(当時の選手会長の藤田俊哉選手や元チームメイトの川島永嗣選手など)の誠実な人柄と真摯な態度や、敵味方関係なくサッカーを愛しているサポーターたちの行動に感動を覚えた。
    しかし、冤罪で人生が大きく変わってしまった我那覇選手のことを考えると、これは本当に恐ろしい問題だと思い、インタビューもせずに面白おかしく掻き立てるマスコミにもげんなりした・・。現在、JFLの琉球FCにいるということも初めて知り、これから動向を追って応援したいと思う。是非とも頑張って欲しい。
    また、数年前にJリーグのあるチームの個人スポンサーをしたことを思い出し、スポーツを愛する一人として、子供に夢を与えるプロスポーツが健全で、より良いものになるために、何かできることがないか考えてみたくなった。

  • 当時、募金はしてたけど、ここまでJリーグが腐っているとは思わなかった。

  • サッカーファンならば、絶対に読むべき一冊。本書が持つ徹底的な取材に基づく本物の迫力は「スポーツ系ノンフィクションたるや、かくあるべし」と言うべきもの。とにかく、憤慨し驚嘆し感動した!そして、我那覇選手に会いに沖縄に行きたくなった。

  • 「オシムの言葉」の木村元彦が、2007年に起きたJリーグでのドーピング冤罪事件の真実を書いている。

    スポーツ新聞の誤報、Jリーグ側の体制不備、面子を守ろうとする人々によって、一人の選手がドーピング違反で処分を受けてしまう。この冤罪を晴らすために、サッカーを愛する多くの人達と選手本人が立ち上がる。
    しっかりした取材のもとに中立な目線で書かれている。

    チームドクター達の結束と行動、選手会の募金活動、選手の地元の人達とサポーターの懸命な募金活動には落涙しました。
    そして、Jリーグ側の対応には強い怒りを覚えました。
    でも最後は、Jリーグ側は非を認め謝罪し、日本サッカーを愛する人々とともにもっともっとフェアなJリーグに発展させていってもらいたい、と応援する気持ちになれました。

  • ブログの記事にジャンプ>>http://westcoast.exblog.jp/17716326/

  • 我那覇選手のドーピングえん罪を記した本。我那覇選手は、私と同じ宜野湾高校出身。あの場所から、日本代表になれるって凄いなって思っていた。だから、この事件は気になってはいたが、こんなに酷いえん罪事件だったとは思わなかった。

    明らかな正当な医療行為を、ねじ曲げてまで守りたかった組織と個人のメンツ。ここまで、人を不幸にしてもメンツが大事な人間がいる。

    しかしそれは、人間だからしょうがないのかもしれない。だから、そのメンツ維持に向かわない組織作りにしないといけない。それに対する可視化と、やっぱ、監視者たる国民のレベルアップが必要かなと思う。

    それと、我那覇選手のえん罪事件に対して、無償で立ち上がったJリーグのチームドクター達がいて、心から凄いと思った。ドクター達はJリーグに睨まれる可能性もあるのにね。本当こういう人達はヤバいと思う。

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著者プロフィール

1962年愛知県生まれ。中央大学卒。ノンフィクションライター。東欧やアジアの民族問題を中心に取材、執筆活動を続ける。おもな著書に『オシムの言葉』(集英社文庫)、『蹴る群れ』(集英社文庫)、『無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代』(ころから)、共著に『さらば、ヘイト本!』(ころから)など。

「2019年 『13坪の本屋の奇跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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