興行とパトロン (近代日本演劇の記憶と文化 7)

  • 森話社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864051354

作品紹介・あらすじ

舞台を支える影の力学
興行師やパトロンなどの複雑な人的交流によってつくられる「近代演劇」。開化と改良の時代から現代まで、企業資本や政財界人による近代的な整備や関与の一方で、興行師、花柳界、小芝居や村芝居など、興行をめぐる多層的世界をさぐる。
興行の夢と現実とは──。

感想・レビュー・書評

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  • 個人的に興味関心を持つジャンルだったので、面白かったです。

    ものすごい皮肉な書き方をしている部分があったので覚え書き。
    「それは江戸ブームとも呼ばれ、学者の業界から咲きこぼれた戯作礼讃の花びらが、これも芽吹いたばかりのサブカルチャーの庭に散りかゝり、近松や芭蕉や歌麿というよりは、南北や京傳や國芳に商業的な妙味を見つけての狂い咲きといった気味合いがあった。
    時を同じくしてわいたグルメブームと相俟って、若者向けの雑誌では江戸の老舗めぐりと称しながら、本膳を目八分に掲げて芸妓の供する名代の会席茶屋は我に縁なきものと度外視し、屋台から出世した簡易(ちょく)な蕎麦あるいは握りの鮨の蘊蓄ばかりを傾けることが流行り始める。
    この余波は長く続き、平成改元の後には銀座界隈の鮨屋が高級店の仲間入りをし、有名大学の落語研究会出身者が放送局や大手の広告代理店に就職したこともあって噺家の世間的な待遇が向上し、江戸とさえ聞けばイキだのイナセだのと安易な形容詞で褒めたがるのが流行り始めた。
    そうした世並みの利得を梨園も受けたかは知らぬが、平成五年には歌舞伎座で一年十二カ月を通して、かぶきが上演されるまでになったのである。」

    バブルの頃の狂騒を、当時遠巻きに見ていた方のすごい皮肉な物言い。でも、落研出身者関連のところはそうかなあ?と思います。噺家の世間的待遇の向上、どうかなあ。歌舞伎座でSKDを見た最後の世代としてはわかる部分もありますが。
    なお、この文章の著者は岩下尚史、ハコちゃん。(第5章「見物から鑑賞へ」、134P)

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著者プロフィール

明治大学名誉教授 専攻=演劇学、近代日本演劇
『近代演劇の水脈──歌舞伎と新劇の間』(森話社、2009年)、『近代演劇の脈拍──その受容と心性』(同、2021年)、『商業演劇の光芒』(近代日本演劇の記憶と文化第2巻、編、同、2014年)

「2023年 『新派映画の系譜学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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