ホテル・アイリス (幻冬舎文庫 お 2-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877286200

感想・レビュー・書評

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  • これは恋のようでいて恋ではない物語だと思った。
    お互いに救いを求めるを求める二人がたまたま出会い、堕ちていく、そんなお話。
    結末があまりにもかなしい。

  • 少女と老人の恋。浪漫や耽美が一切感じず、読み終えるのに苦労した。老いとSMの組み合わせは想像しようにも脳が嫌がる。唯一の救いは作者が女性であること。(小川洋子氏は少し狂いがある(褒))
    もし男性の書いた本なら壁に投げつけていたと思う。

  • 命令を下され、それに応えることに夢中になっている間そこに自分の考えはなく他者の欲求を満たすことのみに忠実で、それを満たすことが出来たと感じたときの達成感や喜びに打ち震える。翻訳家に魅力を感じられる部分はひとつもなかったけれど、誰かに制圧される状況に置かれたいという、自由と対極にあるはずの思いは、けれど制圧されたとき自分の思考から自由になっているのではないかと思う。

  • 何気なく幾度となく読み返した作品。ふと読みたくなる。小川洋子さんの描くこの質感が好きなんだと思う。
    最初に読んだときは高校生だった。翻訳家の老人とおとなしい女子高生の関係はいわゆるSMというものなんだろうけど、高校生のわたしになにかが引っかかった。最近の再読で、ああ、それはその裏にひそむ二人にしかわからない究極の純愛なのかもしれないと感じた。

  • 再読です。淫らで執拗な性愛の世界に浸りました。主人公のマリという少女と、醜い老人である翻訳家の間にあったものは、わたしの思っていたSMという形では言い表せない気がします。ホテル・アイリスのある港町の白っぽい渇いた光と、島での夢の中のようなひととき。仕える肉体は、醜ければ醜いほどいい、というマリの境地には辿り着けませんが。マリをとりまく人々は、翻訳家の甥以外は関わりたくない人々でした。マリがいつか、自由になれたらいいなと思います。小川洋子さんにかかると、官能的なお話もこんなにひっそりしたお話になるのだなと思いました。

  • こういう歪んだ愛徐表現、嫌いじゃない。
    たぶん私も歪んでいるのだろう。

  • 年老いた翻訳家と少女の倒錯愛の物語
    冒頭の娼婦と翻訳家が揉めるシーンの
    ホテルの娘がマリ
    乱れた姿で逃げるように部屋から這い出て口汚く罵る娼婦に「黙れ、売女」と明瞭な言葉で圧した翻訳家に心が惹かれたマリ

    二人は再開するが彼はあの時の威圧はなく貧相で力なく弱々しかった
    彼女に送ってきた手紙の
    翻訳家の文字は異常なまでに乱れがなく
    綴る言葉は知的で美しくとても紳士的
    これから何度も書かれる手紙のシーンは大好きでした


    しかし、彼の島ではあの時の高圧的で異常な支配者だった

    ここまでのシーンに振り回される心地良さ
    ギャップの描き方が見事でマリが快楽へ没入していく様は圧巻

    醜く老いた翻訳家に瑞々しい肉体の若い自分が蹂躙される屈辱
    二人しか存在しない世界で自分でも想像できない痴態をさらす心細さ羞恥の極み
    肉体的苦痛
    全てが快楽へと繋がりマリを恍惚へと導く

    翻訳家の滑らかな動作
    乱れのない美しい緊縛
    突如暴発する暴力

    自分だけを圧倒的に支配する
    ここにマゾヒズムの快楽の極みがあると思いました
    誰もが何か別の事を考え気を散らしてしまう
    でも、あの密閉した空間では翻訳家はマリしか見ない考えない触れない

    翻訳家の全が自分だけに注がれる

    ある意味で最上級の愛情表現かもしれない

    卑屈で凶暴、インテリジェンスで老いている翻訳家と少女の組み合わせしか成り立たない愛でした

    そしてあの終わりが二人の世界を誰にも触れないところに閉じ込めたと思う

    愛の形、快楽とは、と想像できないところから投げかけられたボールをうっかりキャッチし嵌ってしまったそんな素晴らしい物語でした

  • 初老の男性と母が営むホテルで働くマリの出会いは、男がホテルで女性といざこざを起こした時。
    それから、町で偶然に男性を見かけたマリは後をつけるが、すぐに見つかってしまう。
    そこから始まったマリと男性の妖しい関係。ただ、そこには互いの寂しさを埋めたい感情が見える。
    最後は二人にとって、悲しいけれど良い結果に終わったと思う。

    2017.4.10

  • 感動作ではない。ただ、息が詰まるような、それでいて生きている実感に乏しい場面が続く。SMも含め倒錯とはそういうものなのかもしれない。

    これからマリはどうなるのだろうか。
    物語は閉じたが、希望は見えない。

    これは少女のエゴの物語なのだろうか。思索は尽きない。

  • やや母親に虐げられ気味の少女と境界性パーソナリティ障害と思われる老人とのSM恋愛小説。商売女に放った老人の声の響きに引き寄せられた少女がSMに溺れ快感を覚える。
    舞台は夏のリゾート地なのだが、どこか薄暗く退廃的な空気が全編を通して漂っている。性描写は良くも悪くもムッツリスケベ向きか。読みながら石井光太氏のルポに出てくる、貧困国で春を売る少女の恋を思い出した。その少女はとにかく愛を欲していた。だが本書の少女の関心は結局自分だけに向いているように感じた。少女は快楽の剥き出し手として老人が必要だったに過ぎないのではないだろうか。そもそもSMとはそういうものなのかもしれない。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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