二人が睦まじくいるためには

著者 :
  • 童話屋
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887470378

感想・レビュー・書評

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  • ほぐす
    という作品が印象に残りました。

    誰かと関係を築いて行く過程よりも、関係を終わらせることの方が、よほど難しい。その人が居なくなって初めて、2人の時間や共有した感情がいかに尊いものだったか。
    固く結ばれた紐を解いている時にふと思った、というような詩。

    未来への期待や不安ばかり育てるのではなく、ちゃんと目の前の人や自分の感情と向き合っていくことこそ、幸せを考えるということなのかなと、思いました。せかせかしすぎてて、瞬間を見落としてたなと、ちょっと反省。

  • 数年前に贈り物としていただいた詩集。ぱらぱら読んだきり、読み通せていなかった。
    「二人が睦まじくいるためには」という題であるものの、別にお説教くさい内容ではなく、日常の風景や自然を切り取ったものから、子供の誕生に関わる詩まで、幅広く収載。

    私が詩に感動するとき、その根底にあるものは共感だと思うのですが、必ずしも好きな詩ばかりではなかったです。もしかしたら子供ができたらまた感じ方が変わるのかも。

    現時点で好きだったのは、『生命は』『奈々子に』『遊び』『虹の足』。

    『祝婚歌』
    二人が睦まじくいるためには
    (略)
    立派でありたいとか
    正しくありたいとかいう
    無理な緊張には
    色目を使わず
    ゆったり ゆたかに
    光を浴びているほうがいい
    健康で 風に吹かれながら
    生きていることのなつかしさに
    ふと 胸が熱くなる
    そんな日があってもいい
    (略)

  • 二人が睦まじくいるためには
    愚かであるほうがいい
    立派すぎないほうがいい

    結婚式でよく読まれる、「祝婚歌」はとても有名ですね。

    吉野さんの作品をきちんと読むのは初めてでしたが、詩集に集められた作品は小さな日常を静かに営む家族の視点でした。

    (詩人、長田弘の死を悼み)

  • すきなものに感想をひとことずつ。
    「祝婚歌」
    有名な詩ですね。うちの本棚に同名のアンソロジーもあります。結婚式のスピーチで読まれる定番らしいですけど、あまりおよばれしたことがないせいか、実際に聴いたことは、まだありません。
    「ひとに」
    こんなことを好きな人にいわれたら、最高に嬉しいでしょうね。
    「早春のバスの中で」
    若い人がうらやましくなります。
    「生命は」
    私も、誰かの風になったことがあるのかな。
    「白い表紙」
    幸せな光景です。
    「夕焼け」「I was born」
    このふたつの詩は教科書で読んだ記憶があります。
    「美しい夕焼けも見ないで」という結びが印象的です。
    「雪の日に」
    毎日、雪ばかりで嫌になったら(北国に住んでいますから)この詩を思い出すといいかもしれないですね。
    「奈々子に」
    これも、親でなくても、誰かに言われたら、大切にされているのを嬉しく思うでしょうね。

    他の詩も素敵なものばかりです。
    解説は茨木のり子さんです。

  • 吉野弘さんを初めて知ったのは、是枝裕和監督の「空気人形」という映画に、「生命は」という詩が引用されていた時でした。それ以来、吉野さんの詩を読むようになりましたが、そこには国語の教科書で習った「I was born」や、何故か何処かで見たのか、「祝婚歌」など有名な詩がありました。

    本書には吉野さんの様々な詩集から厳選された詩が編まれていますが、その一篇一篇は素晴らしく、どのページを開いても吉野さんの優しく、しかし鋭い洞察、視線、思いを感じて、切なくなったり、なんと言っていいのか、言葉にならない思いが次々溢れてくるのです。

    茨木のり子さんが寄せられた文章からも、吉野さんのお人柄、ご夫婦のあり方、茨木さんとのエピソードなども知ることが出来、読み応えがありました。
    先日の茨木のり子さんの詩集でもそうでしたが、出版社の童話屋 田中和雄さんが編者あとがきとして巻末に寄せられています。
    詞華集を作ることへの熱い思いや、何より詩、作品そのもの、作者への愛がしみじみ感じられ、このあとがきを読んだだけでとても幸せな気持ちになれました。
    童話屋さんの本をまだまだ読んでみたくなりました。

    タイトル「祝婚歌」ではなく「二人が睦まじくいるためには」と決まったときのエピソードも本当に素敵です。

  • 優しいまなざしの観察者
    母を、子を、神聖なもののように見つめている

    奈々子に が特に好き
    子に対する、これ以上の愛はないと思う

    ひとはほかからの期待に応えようとして、自分を駄目にしてしまう
    自分を愛することをやめるとき、ひとは他人を愛することをやめてしまう

    自己肯定感が大切という風潮は最近のものだと思っていたけれど、ずっと前からそれを伝えている人がいたなんて

  • 夕焼け、奈々子に、小さな出来事が特に良かった。

  • 吉野さんの言葉はとても美しい。
    知性のきらめき。慎重に慎重に、選ばれた言葉なんだろうと思う。
    美しくて、ちょっと切なくて泣けてくる。
    お父さんとしての愛情を随所に感じるせいかもしれない。

    読むほどに、とても良い詩集。
    傷ついたり悩んだりすることがあれば、必ず力になってくれるだろう。
    ありがたい。
    恩師に頂いたものです。大切にします。

    • komoroさん
      本当にいい詩集だと僕も思います。
      辛いとき、苦しい時に読み、嬉しいとき幸せな時に読み何度も読み返していきたいですね。

      これからの人生...
      本当にいい詩集だと僕も思います。
      辛いとき、苦しい時に読み、嬉しいとき幸せな時に読み何度も読み返していきたいですね。

      これからの人生にきっと必要な詩集に出合えた気がします。

      そして、また感想を伝えあいたい詩集です。

      尊敬する教え子へ。
      2015/05/08
  • 結婚して20年余り、イビキをかいて寝ている妻の横で祝婚歌をかみしめる夜。

  • 詩集って、読むのに文学的センスが必要で、少し敷居が高いイメージがあったけれど、この本に載せらせている詩に関しては、しみじみと深みはあるけど、読みやすくて理解しやすいものがほとんどだった。

    個人的には特に、
    祝婚歌/生命は/一枚の絵/奈々子に/ほぐす

    はすーっと心に染み込んで、勇気をもらえた。
    いつまでも心に留めておきたい大事な出会いになった。

    茨木のり子さんによるあとがき(?)によると、
    この「祝婚歌」は知り合いのドイツでの結婚式で、ドイツ語に訳されて聖書の一節とともに読み上げられ、現地の出席者にも大きな感動を与えたらしい。

    それを聞いた吉野さんが喜んだことに対して、
    「文学畑の人々に読まれ云々されることよりも、一般の社会人に受け入れられることのほうを常に喜びとする、吉野さん…」とのこと…
    詞がストンと胸に落ちる理由が分かった気がした。

    とは言え、まだ自分の人生経験の浅さゆえ、理解が及ばない詩もあったので、ぜひまたいつか読み直したい。

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著者プロフィール

1926-2014 詩人。山形県酒田市生まれ。代表作は「夕焼け」「祝婚歌」など多数。校歌・社歌も多く作詞。詩集に『贈るうた』『夢焼け』『吉野弘全詩集』など。読売文学賞詩歌俳句賞、詩歌文学館賞受賞。

「2015年 『吉野弘エッセイ集 詩の一歩手前で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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