- Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9784893094087
作品紹介・あらすじ
ある日に、ぼうやのもとにやってきたビロードのうさぎ。子どもに心から愛されたおもちゃにおとずれる「子どもべやのまほう」の話を耳にします。やがて、ぼうやにとってかけがいのないものになったうさぎは……。酒井駒子の繊細な絵と抄訳で名作がよみがえります。
感想・レビュー・書評
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ビロードは「ポルトガル語」で、英語なら「ベルベット」、スペイン語やフランス語になると「ベロア」といった、寒い時期によく見られる、どこか大人びた光沢のある服の生地でもお馴染みの、「ビロードのうさぎ」のおもちゃの、『ほんもの』に憧れる姿を通して映し出される、「ぼうや」と、いつまでも一緒に生きていきたい、ただそれだけの思いの純粋さには、最早おもちゃの概念を超えており、人間にも共通した、「幸せとは何か?」を実感させてくれます。
また、子どもにとっても、かけがえのない幸せとなり得るものとして、おもちゃがあると思いまして、大人から見たら、何故、あんなに同じ物だけをずっと好きでいられるのか、不思議に思われるかもしれませんが、きっと、子どもの心の目や想像力で見た世界では、生き生きとした姿で語りかけてくれて、子どももそれに応えてあげたくなるのでしょう。
そして、それは本書の扉絵の、ぼうやとうさぎが、愛おしそうに抱き合っている姿からも覗えまして、しかも、この構図は、ぼうやを後ろ向きにして、うさぎの表情だけを見えるようにしているところが素晴らしく、うさぎのそれは、おもちゃながら、とても嬉しそうに感じられることから、きっとぼうやも同じような顔をしているのだろうなと想像させる、粋な演出は、さすが「酒井駒子」さんだと思います。
また、酒井さんの絵は、ベタッとした色の塗り方でぼやかした感じが、物語の幻想性を表している中、ぼうやとうさぎの存在だけは、現実めいた根拠を感じさせられて、それはうさぎを見つめるぼうやの、おもちゃに対するものではないような、愛に溢れた眼差しが、ファンタジーではなく、真実を物語っているように思われたからです。
それは、うさぎと一緒に寝るときも、春の日にふたりで庭に出て遊ぶときも、お手伝いのナナに「どこがいいんだろ、こんなきたない おもちゃの」と言われて、「この子は おもちゃじゃないの、ほんとうの うさぎなの」と、胸にうさぎを抱き締めるときも、うさぎに絵本を読んであげるときも、全て、その眼差しに宿る思いの愛しさからは、本能的に幸せを感じている子どもの無邪気さも覗えるようで、読んでいる私も、うさぎの気持ちになって、その幸せを噛みしめてみると、そこには言葉なんていらない、二人だけの永遠の世界が広がっているようで、思わず胸がいっぱいになりました。
そして、そんなぼうやの気持ちに応えるように、ぼうやが病気になったときの、うさぎのぼうやに寄り添う絵は、どんなにうさぎが汚れてボロボロになっていようが、とても感動的に映り、そこには、子どもとおもちゃの光景では無く、親子とも、友人とも、夫婦とも違った、二人だけにしか分かり合えない、それは最早、物理的関係を既に逸脱しており、精神的関係で繫がった、見えない絆でお互いを支え合っているようにも感じられて、いったい、この崇高さはどこから来るのだろうと思わせるものがありました。
私が思うに、きっとそれは、ビロードうさぎの中にも、人間のように思い出を忘れない心があって、これまでのぼうやとの楽しくも、うさぎだけに捧げられた、純粋で一点ものの愛情を感じられた事に、自分の存在を認められた嬉しさと、生きることの喜びを見出すとともに、ぼうやの為に何かをしてあげたい、その感情の気高さなのだと。
このような思いを巡らせていると、抄訳もされている酒井さんの、文章によって伝えたい事も見えてきまして、それは、うさぎに対する視線の優しさではないかと思いました。
ただ、その優しさは、ぼうやとの幸せな日々だけではなく、本物のうさぎと対面した後の、夕焼け空も切ない絵の中で孤独に佇む、うさぎの台詞や、おわりがくる直前の、子どものようなうさぎのいじらしい描写にも感じさせられ、おそらく酒井さんも、うさぎのことを、おもちゃのそれとは決して捉えていない、そう思わせる気持ちの高鳴りを、文章の端々から感じさせられて、より染みるものがありました。
それから、最後の終わり方には、感情を持った無機物が別のものへと昇華するところに、何か伝えたい事があるのだと感じ、そこには物語中の文章、
『子どもべやには ときどき まほうが おこる ものなのだ』
が印象に残りますが、私は子どもべやというより、子ども自身なのではないかと思い、子どもの、大人のそれとはおそらく異なるであろう、ひとつの物に対する、純粋でひたむきな、好きという本能からの気持ちには、私が想像する以上に素晴らしいものが詰まっていて、その気持ちならば、こうした奇跡的な事が起こっても、決して不思議ではないのかもしれないし、それは、子どもがボロボロになるまで、変わらぬ愛情を注ぎ続けたことへの、素敵な贈り物なのかもしれないし、うさぎの視点に立てば、夢見るような楽しかった子どもの時代は終わり、現実と向き合う大人へと成長を遂げた事への、大いなる希望と一抹の哀愁とも思わせる、子どもが読んでも、大人が読んでも、きっと心動かされるものがある、不朽の名作だと思いました。 -
小さい頃から大切にしているぬいぐるみがあるので、皆さんの本棚で見つけて読みたくなった。
ぬいぐるみのうさぎの目が生きてるような優しくて想いのある目で、絵に魅了された。
坊やと遊ぶ嬉しい目だったり、坊やを見る優しい目だったり、悲しい目だったり…。
どのページもイラストを見ただけでグッときてしまう。
図書館で借りたけど、購入して家に飾りたい。 -
めぐる森の物語の絵本を読んで、とても懐かしくなり読み返してみた。
絵と文の温かさに久しぶりに気持ちもほっこりした。
やはり、時代は流れても感動は変わらないなぁと…
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酒井駒子さんの作品♡
─子ども部屋には
ときどき
魔法が おこる
ものなのだ─
とつぜん訪れた坊やと
のお別れに、
ビロードうさぎは涙を
流し・・・
酒井さんは東京藝大の
ご出身で、
ブラチスラバ世界絵本
原画展での金牌はじめ、
国内、海外で数々の賞
を受賞されています。
技術的なことはあまり
よくわかりませんが、
荒くかき削ったような
マチエールと、
黒の使い方が素敵だな、
と感じます♡ -
酒井駒子さんの表紙が素敵。中の絵も素敵。
家に飾っておきたい絵本です、飾れるところがあるなら。笑
お話は、悲しい結末ではないのかもしれないけど、私にとっては途中が悲しくて悲しくてダメだ・・泣けてしまう。。。 -
大切にされたオモチャは本物になれる。
ラストがハッピーエンドだったのかどうなのか、感じ方は人それぞれなんだろうなぁ。 -
ぼうやのおもちゃとして棚に置かれたビロードのうさぎ。
贔屓にされる他のおもちゃや、片付けばかりするお手伝いさんのナナに翻弄される毎日です。
果たして充実したぬいぐるみライフはあるのでしょうか…。
心に残る感動的な結末の絵本です。 -
クリスマスにぼうやにプレゼントされたビロードのうさぎのお話。
消費社会においてやっぱり物を一つ一つ大切に扱いたいなぁと思わせてくれる、温かい絵本でした。酒井駒子さんの絵も相まってとっても素敵。 -
「ぼく、ぼく…ほんとうのうさぎになったんだ!」
ビロードのうさぎが大好きなぼうやから始めてほんとうのうさぎと言ってもらえた夜。
その時の誇らしい顔が頭から離れない。
その後汚れてしまったおもちゃのうさぎの運命は想像がつく…
でも、この話には救いがあった。愛されたおもちゃは、妖精によってほんとうのものになれる。
本当のうさぎになって、野うさぎたちに愛されるビロードのうさぎ。でも、これでいいの?
少し物足りなさを感じながら、最後のページをめくる… あぁ!
本当に絵が素晴らしくて、特にうさぎの表情の描きわけは秀逸。
ビロード、ベルベット、ベロア
似ていて非なるものだと思ってましたwww
ビロード、ベルベット、ベロア
似ていて非なるものだと思ってましたwww
私も、ネットで調べるまでは、別の物だと思っていまして、特に、ベルベットとベロアは、私の中で違うイメージでした(^^;)
私も、ネットで調べるまでは、別の物だと思っていまして、特に、ベルベットとベロアは、私の中で違うイメージでした(^^;)