切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 「刑事犬養隼人」シリーズ (角川文庫) [Kindle]
- KADOKAWA (2014年12月25日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (324ページ)
感想・レビュー・書評
-
東京都内の公園で臓器をすべてくり抜かれた若い女性の死体が発見された。
やがてテレビ局に〝ジャック〟と名乗る犯人から声明文が送りつけられる。
その直後、今度は川越で会社帰りのOLが同じ手口で殺害された。
被害者2人に接点は見当たらない。怨恨か、無差別殺人か。
捜査一課のエース犬養刑事が捜査を進めると、被害者の共通点としてある人物の名前が浮上した。
ジャックと警察の息もつかせぬ熾烈な攻防がはじまる。
**************************************
臓器をすべて取り出すとなると、胸から下腹部に1本メスを入れると思ってた。
でもこの本を読んで、それはI字切開法であって、一番効率のいい切開方法は、左右の鎖骨あたりから胸へ、その後、胸から下腹部にメスを入れるY字切開法であることを知った。
まぁ、そんなことを知っても、今後、自分が手術を執刀する側になることはないから、別にいいねんけど、知らないことを知れた。
この本は、犯人を捕まえる以前に、脳死、移植手術、ドナー、レシピエントについて書かれていて、自分の知らないことだらけ満載やった。
でも、最後はやっぱり小説であって、本当の犯人が現れた時の、男女の思い込みの違いが切なかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大好きな中山七里さんを読もう。
今度は
刑事犬養隼人シリーズを読んでいこうと決意(笑)。
大どんでん返しは無いが、
そう来たかと。
臓器移植というテーマを
切り裂きジャック事件になぞり、
今に生きる我々にも警笛を鳴らす。
この様な社会的テーマを周知し、
作品化に挑むのは中山さんならでは。 -
マラソンをしていたオトコが、深川署前の近くの公園で女性の死体を発見する。その惨殺死体は、まるごと内臓が抜き取られていた。鮮やかな手口。猟奇事件という単純なものではない。死亡推定時刻は直腸内の温度を測定して算出するのだが、直腸自体が存在しない。角膜の乾燥具合から心臓の停止時間を割り出した。
捜査1課の刑事犬養隼人は、二度離婚している。最初の結婚の時に生まれた子、沙耶香は13歳で重い腎臓病にかかっていて、助かる道は腎臓移植しかなかった。
切り裂きジャックは、19世紀のイギリスで起こった猟奇事件。娼婦ばかりを連続的に惨殺した。内臓を抉り出す手口だった。この殺人事件は未解決のままであり、嘘の情報も多く都市伝説を生み出した。そして、そのジャックを名乗るものから犯行声明がテレビ局に送られる。そして、第二の殺人が。二人の殺人の手口は同じ。犬養刑事は、埼玉県警の古手川刑事とコンビを組む。犬養は、オトコの犯人の検挙率が高い。犬養は「男の嘘はすぐわかる。眼球の動き、ちょっとした仕草、声の強弱、作話症でない限りは大抵の嘘は面に出る。しかし女は、騙される」という。古手川も、連戦練磨の強者で勘もいい。
計画的犯罪であり、劇場型殺人。犯人のプロファイルが、かなり一般的なことしか出て来ない。
犬養と古手川は、二人の被害者の共通点を見出す。それは、同じドナーから臓器移植したことだった。ふーむ。ここからの展開が、実に中山七里らしい。
つまり、脳死判定は、臓器移植推進派の利権がらみだという。高額医療、抑制剤などが関与する。そして日本人の感覚で言えば、体温が温かくまだ心臓が動いている状態なのに、なぜ臓器移植するのか?という医療判断と人間の生の価値判断の食い違いをついてくる。脳死臨調の調査でも、医師の賛成は80%にたいし、法律家は50%にとどまっている。臓器移植法が十分な論議がされず、国会で通ったことへの反感をうまく、切り裂きジャックはついてくる。世論も、臓器移植は、本当にいいのか?という論議が始まる。そして、臓器移植を受けた人たちが切り裂きジャックを怖がることに。
被害者の共通点がわかることで、事件を担当している現場経験が少ないエリートの鶴崎管理官は、テレビで切り裂きジャックに挑戦状を叩きつける。「ジャック。お前の狙いは何だ。お前の欲しいものはなんだ。もう二度とお前に犯行を起こさせない。すぐ首に縄をかけてやる」と呼びかけるのだ。そのことで、第三人目の被害者が出る。エリートの出世狙いのスタンドプレー。
そして、第四人目は、やっと確定して警察は保護するのであるが、切り裂きジャックとしての犯人は?意外な人物が犯人として捕まえられるが、さらに真犯人は違った。犯人探しよりも、臓器移植の是非を問う論議がためになった。 -
臓器移植×切り裂きジャック。
犬養刑事が主役の本格ミステリ。
荒川署の目の前にある公園で
あらゆる臓器を摘出された死体が見つかる。
事件は連続殺人事件の様相を呈し、
刑事犬養隼人が
コンビを組んだ古手川和也と
事件を追う。
臓器移植、
脳死、
英国で起きた切り裂きジャック事件などの
問題をからめながら、
フーダニット、ホワイダニットを
追い求めるミステリ。
前半で日本における臓器移植の是非なども語られ、
そこら辺が事件にからむのかなとも思いつつ。
ラストは二転のどんでん返し。
ホワイダニットが
どうも少し弱い気がして、
二転は素晴らしいが、
尻すぼみな印象だった。 -
好きだなぁ
-
面白くてあっという間に読了。
犯人の動機がちょっと弱いのが気になった。
気持ち悪いだけでなく、親子の情にホロッとさせられる場面もあり、作品に厚みがあった。 -
先にうっかり「ハーメルンの誘拐魔」を読み、シリーズ物ということで第一作目の本作を読んでみました。
脳死、臓器移植x警察、社会派ミステリー
主人公の犬養刑事補とフレッシュな小手川刑事のバランスも良く一気に読めました。
脳死って確かにセンシティブな問題で、特に肉親が絡むと感情の落としどころが難しいと思う。そこに臓器移植が絡むと自分の生々しい感情がむき出しになると思う。
建前では、臓器移植賛成、使ってもらって助かる命があるなら使ってもらうのが正しい行為、みたいな。
だけど、それが自分のお腹を痛めて産んだ子だったら?
みたこともない他人の命を救うために差し出せるのかな?
…難しいテーマだと思います。
肝心の犯人は、最初に気になった人かと思いきや「ほほう」となりました。
胸糞な動機なんですけどね。
ラストシーンは目頭が熱くなりました。 -
正統派ミステリ。刑事モノ。
内臓を抜き取るという猟奇的連続殺人事件のグロさとピシピシと張る空気。
お間抜けな警察上層部と犯人に振り回される現場刑事。
臓器移植と死生観。
どんでん返しを狙ったラスト。
スピーディな展開にぐいぐい引き込まれ、読後は映画やドラマを観終えたような軽い疲労感。
魅力的ではあるし、正しくて不満も残らない。でも、何か残して欲しかったと思うのは欲張りすぎなのか。