プロバガンダと娯楽の関連性を、膨大な資料を元に分析してまとめた本。

好感がもてる点は、これだけ政治や宗教などの思想と密接なものを取り扱っていながら、思想そのものに対しほとんど正否をつけていないこと。プロバガンダを「巧妙に」使った過去の事例や、現在どんなことが行われているかを紹介している。この距離の取り方がとてもクレバーだと思う。

2015年10月22日

読書状況 読み終わった [2015年10月22日]

全体的に読みやすい。特に乃木希典本人だけでなく父である希次や恩師玉木文之進など、乃木に関わりのある人物の経歴や性質にもそれなりにページを割いている。

後半のエピソードだけをまとめた部分はもう少し時期の詳細が欲しかった。

2015年6月21日

読書状況 読み終わった [2015年6月21日]

災いの書が完成したことによる展開の変化を期待していたのだが、全てが「なるようになった」という印象だった。

2015年6月14日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2015年6月14日]

語り部の話が、1巻とは違う主人公から始まる(1巻の主人公アーダムも後から登場する)。ファラーとサフィアーン、二人の主人公はどちらも才能や容姿に優れていて、醜男アーダムとは大違い。

壮大さを匂わせながらある場所に収束する展開、どこかスケール的にこじんまりした印象を受けた。まとまりがよいが、物語としても一冊の本だったときはこの部分は中だるみだったんだろうなあ。

ただ3巻への期待値を煽るという点では成功していると思う。

2015年6月7日

読書状況 読み終わった [2015年6月7日]

クライマックスの「召喚」シーンがとにかく圧巻。このワクワク感やスケール、神性描写は他では味わえないと思う。視覚的に度肝を抜かれるであろうシーンを文章で表現してしまうのだから恐ろしい。

2017年1月25日

読書状況 読み終わった [2017年1月25日]

今まで張られていた伏線というか、各話の中で棚上げになっていた(触れないであった)問題がいっぺんに絡んだ上に決着までついてしまうという、非常に王道な展開。それでいてミステリーや後半のドタバタ展開、さらにはアレクシアの「名裁き」まであり、シリーズの面白さが凝縮されている。

次巻でシリーズ完結ということだが、この巻の最後に起こった出来事で次が読みたくなる良い引きになっている。

2015年5月16日

読書状況 読み終わった [2015年5月16日]

シリーズ最終巻。やや力技ながら、いろいろな問題に決着をつけてしまう辺り流石。この作者の凄いところは活劇を止めずにラブロマンスを展開し続ける点だと思う。

アレクシアの娘プルーデンスの物語をぜひやって欲しい。この世界であれだけ特殊な能力をどう使うか興味がある。

2015年6月29日

読書状況 読み終わった [2015年6月29日]

子供の頃、親にせがんでVHSを借りて見たウルトラマンやウルトラセブンの話に、こんな想いや思想が込められていたとは知らなかった。

自分はどちらかというと、マンやセブンより怪獣の方が好きだった。次はどんな怪獣が出てくるのかワクワクしたものだが、怪獣は憶えていてもストーリーはおぼろげだった。この本を読んで、怪獣の設定やそれにまつわるお話に、強い作家性が出ていたことに驚いた。今また見直せば違った印象を持つと思う。

そういう意味で、実際に脚本家たちにインタビューし、その出自や作家性からウルトラマンの物語に流れるものを可視化しようと試みたこの本は解説本、資料として価値があり、何より読み応えがある。

2015年4月26日

読書状況 読み終わった [2015年4月26日]

不貞を働いたと思われ夫から放逐された主人公が、自分の身に起こったことの真相を知るために父の故郷イタリアを目指す。

顔を合わせれば当てこすりしかしてこない嫌な登場人物は健在&新登場。主人公の冒険自体は想定した以上のことは起こらなかった。二つの物語が同時進行しており、今回は他方が展開することで世界観が動いたという感じ。

2015年5月4日

読書状況 読み終わった [2015年5月4日]

前作の内容をほとんど忘れてしまっていたが、主人公アレクシアは夫を含め頑固で偏屈な人狼たちや陰湿な妹、面倒な友人などを相手に気丈に立ちまわる。この小気味よさと個性的で面倒くさいキャラクターたち、そういえばそこが読みどころだった。

そして、前も思ったがスチームパンクというよりはやはりファンタジー要素が強い。

2015年4月11日

読書状況 読み終わった [2015年4月11日]

「いかレスラー」「日本以外全部沈没」「ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発」など、バカ映画を作り続ける監督の自伝本。

「絶対やせる~」とあるが、ダイエット本ではなく、「この売れるフレーズを一回やってみたかっただけ」とのこと。こんな感じなので、中身もちゃらんぽらんなエピソードや失敗談ばかり載っているのかと思いきやそうではない。

「バカでくだらない」ことを照れくささとか謙虚さから卑下したりはせず、バカをやることへの情熱や苦労、そして矜持のようなものが語られている。だから文章に謙虚さはない。自分はナルシストだと書いてあったけど、本当にそういう印象を受けた。

ご本人のゆるーい感じが出た表紙に反し、ダメさや失敗談で笑って元気になるのではなく、誇りを持って我が道をゆく男に発奮する本だった。監督が考える「常識ある狂気」という考え方は自分も本当にそう思う。

2015年1月12日

読書状況 読み終わった [2015年1月12日]

面白かった。事件や流行、著名人の言動など世間を賑わせるものの正体を、著者が「プロレス脳」で見立てて解説してくれる。

興行としての涙ぐましい努力や、レスラーの「引き受ける」力の凄さは、何かを提供する側の人間なら共感できるはず。

2014年8月11日

読書状況 読み終わった [2014年8月11日]

「のはなしし」読了。笑える話もあれば良い話もある。言葉の選び方がうまく、頭でイメージすると不思議とおもしろい絵が出来上がっている。そしてなぜに子供時代の記憶が引っぱり出される。最後の話はゲーム好きならではで、じんわり感動させてくれる。

個人的には「見間違い」の話の中に出てくる「ドラえもんえかきうた」のたとえがスマッシュヒット。あれは実際に見た人しか分からないだろうが、憶えている人はあの文脈で出されるとその凄さが分かるはず。

2014年7月17日

読書状況 読み終わった [2014年7月17日]

伊集院光のエッセイ集、文庫版。子供時代のディティールが細かい話などは世代は違えど「似たようなことやったわー」と思い出させてくれる。また、「イヌの巻」「キジの巻」には、著者が撮りためた「謎の」写真が載っている。「たこやき屋の『タコ』イラストコレクション」「歯科医の看板の『歯』のイラストコレクション」など、見てクスっと笑える。たまにくる真面目な話がまたいい。

2014年6月24日

読書状況 読み終わった [2014年6月24日]

伊集院光のエッセイ集、文庫版。この人は子供時代のことを本当によく憶えているなあと思う。エピソード一つ一つの「盛ってない」具合と、世代は違うものの「あるある」な感じの塩梅がとてもいい。ラジオの抑揚ある喋りや照れからくる勢いある口上とは違った面白さがある。どこから読んでも面白い。

2014年6月24日

読書状況 読み終わった [2014年6月24日]

調書のように延々と現場の情報を書き連ねたような話から、怪奇ムード漂う物語など、バラエティに富んだ短篇集。推理小説慣れしていないので、特にデュパンの話に代表される前者は集中力を要した。短篇集の中には両者をうまく折衷した話もあり、「黄金虫」は読みやすかった。

2014年7月9日

読書状況 読み終わった [2014年7月9日]

退職した刑事の父に、現職刑事の息子が事件の情報を聞かせ、父が動機や犯行の方法を推理していく安楽椅子探偵もの。余計な展開はなくただただ事件のひも解きで構成されている。あとがきにあった、実際に起こった事件の動機や手口があまりにも納得できるものではないので、論理的に考えて一つの物語にした、という話は興味深い。楽しんで書いたんだろうなという気がする。

2014年5月27日

読書状況 読み終わった [2014年5月27日]

安楽椅子探偵要素が強い、ミス・マープルの短篇集。事件が発生して段階的に進んでいくのではなく、「こんなことがあったんですが~」という、話し手だけが真相を知る事件に対して犯人と動機をピタリと言い当てる。話の一つ一つが短いので、ちょっとした謎かけ感覚で読める。

2014年5月16日

読書状況 読み終わった [2014年5月16日]

冒頭の長々とした説明を抜け、奴隷アイユーブがある大仕掛けのために夜毎に話を聞くようになるあたりから俄然面白くなる。その重層的な展開がすでに千夜一夜物語の構造に則っていて巧いと思わせる。アラビアンムードもさることながら、人物の妄念のような描写が優れている。

2014年5月8日

読書状況 読み終わった [2014年5月8日]

香港マカオ編の、見るもの全てに対する驚愕や異様な熱気はあまり感じられず、旅の終わりについての独白が多くなっている。

自分も期限のない目的地だけ決めた旅行をしたことがあるが、目的地に近づくにつれて、帰った後の生活のことばかり考えていたことを思い出した。

2014年5月16日

読書状況 読み終わった [2014年5月16日]

「冬の十字架」が発売中止になった頃の雑誌連載をまとめた本。エッセイのようだが物語風でもあり、主役や登場人物は都度変わる(連作もある)。

時期が時期だっただけに、世の中や誰かに対する怒りや恨み辛みが書いてあるが、ユーモアがある書き口なので読んでいて嫌な気分にはならない。

「大人って、こんなに怒るんだ」と自分もいい年をした大人なのに思ってしまった。たまに自分のことを言ってるんじゃないかとドキリとさせられたり、その後で励まされたり、共感できる部分があったり……。贔屓があるかもしれないが、とにかく嫌な気分にならないのだ。

2015年1月20日

読書状況 読み終わった [2015年1月20日]

「伯林-一八八八年」のみの感想。

「森鴎外(林太郎)とビスマルクの推理対決」という抜群の引きと、舞姫が世に生まれる理由となるような話の展開に序盤はぐいぐい引きこまれた。

2014年8月11日

読書状況 読み終わった [2014年8月11日]

童話のような空気感の物語だが、平易な言葉で語られる内容は人の生き方について考えさせられる。特にクリスタル屋の店主の話は、歳を重ねた人ほどズシリとくるのではないだろうか。

2014年3月13日

読書状況 読み終わった [2014年3月13日]

「ハイドリヒ暗殺に関わる二人の戦士の話」と、「それを忠実に描ききろうとする著者本人の話」を同時に描いた小説。著者の想像が入る余地を極力減らそうとする純粋さが、時折傲慢さにすら感じた。それに拍車をかけるのが、他のナチスに関する資料や同じ題材を扱った書籍を評価(大体こき下ろす)するところだと思う。

そういうところが鼻につく反面、歴史をそのまま語ることにどれだけ潔癖になろうと他人というフィルタを通る時点で意図や真意は曲っていくもの、ということに自覚的になれるかもしれない本。

ハイドリヒ暗殺に関する話をさわりだけ知りたいのであれば別の本が良いと思う。より詳細な描写を求めるならいいかもしれない。

2017年1月25日

読書状況 読み終わった [2017年1月25日]
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