モモ (岩波少年文庫(127))

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141276

感想・レビュー・書評

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  •  今から書くことは、すべて私の心の中で、1ミリも思っていないことです。感じてないことです。嘘です。情報は疑ってかかるべきです。とくに下に書かれた文章とかには。この本の感想を書くのは苦痛でした。でも、なぜこれほどまでに苦痛なのかわかりませんでした。ある日、小谷野敦のレビューがこのモモのアマゾンページに載りました。そこで、ようやく痛みの理由を知りました。
     引用します。
    『これを読んで、日本人はあの盆と正月の帰省ラッシュといった愚かなことをやめるであろうか。話題の映画に殺到し、早く観ようとするのをやめるであろうか。やめたなら幸いであるが、どうもそうは思えないのである。
     この本は、「なんで話題の映画を早く観なきゃいけないの?」と言っているはずなのである。この本に感動しつつ、それをやめないとしたら、それは何にもなっていないのである。』
     ああ、その通りだ、そうだ、と思いました。
     私はこの小説を感動できなかった。だけれど、感動した風に書いたのが、下記の通りとなります。
     ……。

    「ごめん、時間ない」、「私が焦ってるの、見ててわからないの?」、「無駄口叩かないで」、「相手してる暇ないから」。
     私たちは今、とても窮屈な時代を生きています。『モモ』に登場する時間どろぼうにすっかり時間を奪われてしまったからです。
     現代に生きる私たちはこんな言葉に囲まれていると思います。もっと合理的になれ、効率良くしろ、余計なことを考えず生きろ。充実した人生を送れ、眠る時間以外は自分磨きに集中しろ。資格を取得して、自己啓発して新しい自分になれ。マニュアルを頭に叩き込んで即戦力になれ。そうしないと周りに置いて行かれる。みじめな人生が待っているぞ。他の奴のことなんて考えるな。時間はないんだ。
     そんな「~をしなければ生きていけない」で占められた空気の中で私たちは息も絶え絶えに呼吸して過ごしています。
    「世界で一つだけの花~♪」という歌、大事だよね、とでも言えば、嘲笑と共に「甘えだ」、「ふざけるな」、「贅沢言うな」と袋だたきにあい、恥をかいてしまいます。

     ミヒャエル・エンデの「モモ」の主人公『モモ』はこれらの空気の化身『時間どろぼう』と戦う物語です。
     モモは街の外れにある円形劇場の廃墟を住処として、人々と仲良く暮らす女の子です。ある日、時間を無駄にして生きるな、その時間を私たちに預ければ利子をつけてお返しするという時間貯蓄銀行を運営するどろぼう達が現れます。街の人は、なんて無駄な時間を過ごして来たことだろうと思いこみ、モモに構わなくなって必死に働き始め、何も考えないエゴの塊となります。どろぼうは、人が貯蓄した時間を葉巻に変えて、それを吸って生きている存在です。彼らを相手取り、モモは一人一人の大切な時間を取り戻すため、様々な困難を乗り越え、みんなを忙しいだけの空気から解放するという話です。
     ミヒャエル・エンデ(1929-1995)は南ドイツ生まれの児童文学作家で、モモは1972年の作です。岩波少年文庫として小学5・6年生以上向けであるものの、大人でも十分読み応えのある一冊です。
     モモと時間どろぼうの対立は、資本家に人間としての生き生きとした労働を奪われることに警告を発する寓話に読めます。時間=お金として、儲けるために機械化・合理化を果てしなく続ける資本主義経済について批判的に考えることができます。
     しかし、それだけでモモは終わりません。想像力を奪う、情報社会批判をも含んだ描かれ方がされていると思います。
     例えば物語の中に登場する子ども達は、どろぼう出現前には円形劇場で冒険家ごっこをするのですが、時間どろぼうが現れると、子どもは外に出られず、施設の中で、頭がよくなる遊び道具を相手に、日々を送る羽目になります。
     私たちも、朝起きて、夜中まで必死に働き、手の空いた時間はテレビ、アニメ、ゲーム三昧。ネットでは様々なニュースに対して、バッシングと誹謗中傷と反射的な言葉の数々に晒され、二手三手先を熟考する想像力はどこにもありません。
     私たちはどうすればそれを取り返せるでしょうか。
     モモを読めばわかることがあります。
     どろぼう達を撃退したモモはたった一つ、特殊な能力を持っていました。
     人の心を開かせ、本音で語らせ、本気で考え、スッキリとさせることです。自らの言葉で考える力を人は持っているんだということに気付かせる「聴く力」をモモは使えるのです。モモは何も話さずそこにいる。人の話を真剣に聞く。それだけで人々は幸せになり、想像力と思いやりのある社会を築くのでした。
     私たちの目は映像社会でとことん肥えてます。嗅覚も舌も非常にグルメであると思います。ただ、聴くことはいかがでしょうか。そして考えることは……。
     いちいち考えてる暇なんてない。たくさん本を読んで何か吸収しないと……。おいしい話以外、聴く気ない。そんな空気に飲み込まれそうな時や忙しさに心奪われかけた時、読みたい本だと思います。

  • 2021年末の大掃除で発掘した本です、この本は2021年の間に読む本の様ですね。読みかけになっていたために、評価は「★一つ」にしております。内容が不満足だったわけではありません。

    2021年12月29日作成

  • 途中で脱落しました…。
    いつかまた読みます。

  • ベスト&ロングセラーの本なので、期待して読んでみたががっかりしただけだった。起承転結の「起」の部分が長すぎ。時間を奪われた人々の生活や、ドクター・ホラとの出会い、時間泥棒との対決、についてが余りにあっさりと書かれ過ぎていて、勿体ない。この本を「面白い」「素晴らしい」と評する人達は、ファンタジー小説的な読み物は「モモ」が初めてなのだろうか。とにかく、全く面白くなかった。

  • ■観光ガイドのジジが三つの作り話を披露する(金魚とクジラの話、地球をまるまる作り直す話、空飛ぶ鏡と心臓の結び目の話)。口が達者なジジはメディアのスターになっていく。
    ベッポは寡黙な清掃員。慎重な性格だがモモを助けるためならなんだってやる。
    モモは……モモは主人公なのに顔が思い浮かばない。パーソナリティがつかめない。表紙に使われている後ろ向きのイラストは大失敗。モモの印象をさらにあいまいなものにしてしまっている。ちなみにwebで世界の『モモ』の表紙を覗いてみたら日本版と同じなのが多かったが、他にあったのがやはりモモが後ろ向きな別のタイプのと、全く印象が違う顔だちのモモたちなのと、灰色の男たちかカメだけ描いてモモを避けているのとの3パターンだった。世界のイラストレーターたちもモモのビジュアル化には苦労しているようだ。

    ■モモのグループは、モモとジジとベッポ。この三人で小さい三角形を作っていて、これが大きい三角形のいち頂点になっている。大きい三角形のあと二つの頂点はそれぞれ、灰色の男たちと、マスター・ホラ。人物相関図はスタンダードなハリウッド映画といっしょ。だが三角形で生じるはずの緊張感がまったく足りてない。

    ■作者は児童書に哲学的な厚みを持たそうと努力はしたのだろう。しかし残念ながら自由闊達に描いた前作『ジムボタン』には遠くおよばない。

    ■それにしても大島かおりという訳者の日本語。これはまさに拷問だ。

  • 国教?943 E

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