車輪の下 (岩波文庫 赤 435-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003243527

感想・レビュー・書評

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  • 世界の構造に対する虚無感がさらに募った

  • 自然や風景の描写や心情表現がとても美しくて、魅力的だった。車輪はギリシア神話(?)の、運命を象徴するもののことで、心身ともに健康で美しい思い出に溢れた時代と、知識。おとなからの押し付けでからだも心も壊していく神学校時代のことを車輪の下にしているのかなと思ったが違った。
    何度か読み返したくなる本。

  • 教育とは敷かれたレールの上を歩かせるだけのものなのか。一人の貴重な人間の将来が奪われてしまったことに悲しみを覚えた。
    最後の酔っぱらった中での溺死は事故なのか、故意なのか描かれていなかったが私は自ら川に入ったのだと思う。
    救われない少年の話

  • 教育とは何なのかを考えさせられる
    良いとされる人生のレールに子供を乗せる親や教師、そして自分の周りの狭い世界の中では成功しそのレールに乗ることを望んでいる子供は自分の運命がわかっていない
    何も考えずにレールを進む子供もいれば、多感な時期を過ごす中でそのレールから外れてしまう子供もいる
    そして死んでしまったハンス。その死因は語られない。
    そのことがむしろ、読み終わった後に、彼の周囲の彼への期待や強制を自分と照らし合わせて内省に向かわせる。


    以下、あるサイトからのコピペ

    +++

    主人公ハンスは、他の子供たちと同様に自然や動物を愛する素朴な少年。

    唯一違うのは、彼は学問に優れた天才であること。

    ハンスは父親や学校の先生など周囲の大きな期待を背負い、一心不乱に受験勉強をする。

    そして見事、エリート神学校への合格を果たすのだ。



    しかし、神学校での規則や価値観に縛られた日々は、ハンスの神経を弱らせる。

    彼は神学校を中退して、「脱落者」という不名誉な称号と共に帰省。

    かつてエリートだったハンスは、同郷の仲間たちよりも遅れて肉体労働の見習いとなる。

    それは肉体的にも精神的にも苦痛なことだった。

    物語のラストで、ハンスは死体となって川で見つかるのである。



    ハッピーエンドの小説が多い中、今作は主人公が死んで物語は終わりを告げる。

    死因は分からない。

    死ぬ直前に、ハンスは酩酊していたから、事故で川に落ちたのかもしれないし、もしかすると自殺したのかもしれない。

    とにかく主人公の少年が死んで物語は終る。



    「車輪の下」は救いのない小説と言われる。

    確かに、小説を読み終わった後、陰鬱な気分になるだろう。

    しかし、この救いのない作品は、現代人を救ってくれる一冊でもある。



    僕達は成功体験からだけ学ぼうとしている。

    でも、成功者から学んだとしても、誰もが彼らと同じように成功できるとは限らない。

    一方、僕達は失敗体験からも学ぶことができる。

    誰もが先人達の失敗を教訓に、人生を正しい方向へと導くことができるのだ。



    100年以上前の作品ながらも、「車輪の下」は現代人の必読書である。

    だって、誰もがハンスになる可能性があるのだから。

    良い学校、良い仕事に就くことだけが、幸せなのだろうか。

    周囲の視線や期待、価値観に捉われすぎて、自分らしさを失ってはいないだろうか。



    僕達はハンスであり、だからこそハンスのような結末を迎えるのを避けなくてはいけない。

  • 小学4年頃のお気に入り

  •  3回読んだ

  • この若造の甘ったれ感が嫌いな人もいると思うけど、自分は好き。何せ、年を食った今でも甘ったれなので。

    子供の人生が周りの大人の都合で決まってしまうってことはよくあることだと思うんだけど、よくあるってことが実は怖い。アシストしてるように見せかけて、実は目隠しした少年を自分の都合の良いように歩かせてるんだと思うと怖い。

    それにしても情景の描き方がキレイ。どんどん引き込まれていく。目の前にその世界があるかのように。ここでその形容詞か?!って思うこともあるけど、まあ時代が違うし。言葉は生き物。

    結局はみんな自分中心なんだから、自分中心に生きないと損。そう言われてる気がする。そうしないと戦車にひかれるぜ。

  • 主人公の気持ちと、みずみずしく描かれる森林や河の様子が胸に響く。期待されながら学校に入り、大人が確信しているひとかどの人物になるために勉強を重ねてきた主人公が、友情を知り、愛情を知り、仕事を知って…これからだったのに。
    成績や教師への従順さでしか生徒の値打ちを測れない教師、大人たちが招いた結果なのか。だけどそういう気持ちは思春期の誰でも経験する。周りを信頼せず、自分を素直に表現しない主人公の性質も、結果に寄与した気がする。もちろんそれができないのが思春期なのだけど。

  • あまりにも言葉が、文章が、美しく、若者の繊細な感情を表すヘルマン・ヘッセ。自伝的とも言われる物語には、時代を越え国境を越え言語を越え、人々に普遍的な青春時代の脆さ・儚さを彷彿とさせる力がある。
    翻訳は1958年の出版なので古めかしい部分もあるが、それも含めて味わい深い作品。

  • 誰しも経験したことのある、教師との相克について考えさせられる作品

著者プロフィール

ドイツ生まれのスイスの作家。主に詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者。南ドイツの風物のなかで、穏やかな人間の生き方を描いた作品が多い。また、風景や蝶々などの水彩画もよくしたため、自身の絵を添えた詩文集も刊行している。1946年に『ガラス玉演戯』などの作品が評価され、ノーベル文学賞を受賞した。

「2022年 『無伴奏男声合唱組曲 蒼穹の星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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