- Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004203193
感想・レビュー・書評
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「色好み」という価値意識が、文学をはじめとする文化的なものと密接に結びついていたことを、平安時代の文学作品を中心にとりあげながら明らかにしている本です。
紫式部、清少納言、和泉式部の「色好み」に対する態度の差異にかんする著者の読み解きは興味深く感じました。また著者は、「色好み」の価値観がしだいに衰退していく過程にも触れつつ、『建礼門院右京太夫集』においてその最後の輝きが見られるとして、高い評価をあたえています。
日本の古典文学のみならずフランス文学にも造詣の深い著者だけあって、フランスのサロンにおける恋愛観と文学との結びつきにも言及しながら「色好み」の文化的な性格を輪郭づけていく指摘がいくつかなされていて、「色好み」という日本的な価値観を立体的に捉えることができるように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平安時代・王朝国家期を中心に、貴族社会の美的理念としての「色好み」の発生から終焉までを古典文学の独自解釈を通して明らかにしている。『枕草子』や『源氏物語』をはじめとする諸作品に対する独特の「読み」が興味深く面白いのは確かだが、1980年代の著作なので、現在の歴史研究・文学研究の水準に照らせばいろいろ問題がある。著者は自覚していないが、「色好み」が形骸化・頽廃化していく院政期から鎌倉期は「家」の成立時期と重なり、親族・家族構造の変容が文化にもたらした影響を追究する視座を示唆しているといえる。
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源氏物語は平安の当時、風刺小説であり風俗小説だった!?魔性の女性和泉式部、古典に見られる「色好み」の変遷など平安以降の恋愛感の詳細が描かれています。