経済学の考え方 (岩波新書 新赤版 53)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004300533

感想・レビュー・書評

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  • ミルトン・フリードマンに対する批判が激しかった。

  • 日本を代表する経済学者宇沢弘文氏による「経済学の考え方」の解説になります。本書で最も大事なのは第1章でしょう。経済学とはどのような性格の学問なのかについて、宇沢氏による明確な定義がなされています。経済学は科学でもありながら芸術(アート)でもある。また理論的でもある一方、きわめて実践的でもあり、高度な倫理、正義心が求められる学問分野です。経済学は貧困などの社会問題の解決策を考えられるのと同時に、実はその問題の根源にもなりえてしまうことがあるからです(権力におもねったり自己虚栄心によって反社会的な政策立案をしてしまうことも可能)。

    宇沢氏が本書でどの経済学者を取り上げたのかについては、極めて宇沢色が強く、共通しているのは社会への実際的な貢献、正義感、倫理観を持った人を厳選したという印象を受けました。ソースティン・ヴェブレンとジョーン・オースティンに1章ずつ割いているというあたりにそれが現れています。またアダム・スミスを最初に取り上げているのも、「経済学の始祖だから」という単純な理由だけでなく、まさに経済学とは実践的、倫理的な側面を持っていて、アダム・スミスが人々の暮らしをいかによくできるのかを真剣に考えたという点を評価しているわけです。後半に登場する合理的期待形成派やマネタリズムについての文章からは宇沢氏の嫌悪感が十分伝わって来ます。本当は紹介すらしたくないのだが、経済学が反社会的、反倫理的、反実践的(現実社会をまったく反映していない前提)な存在になってしまった暗黒時代があるのだ、という反面教師的な教訓ということで紹介されています。

    本書は岩波新書ですから、経済学を全く学んだことのない一般の人々でも読めるように工夫されていますが、同時に、現在および未来の経済学者に対してのメッセージにもなっている気がしました。世界をよくするために経済学を発展させよ、その道筋として不均衡動学と社会的共通資本という2つのキーワードを提示しつつ、それをやるのは君たち未来の経済学者なんだ、というメッセージを残しているのです。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705169

  • 昔読んだ本。なぜか図書館の新刊案内に混じっていた。読み直してみたい。

  • 宇沢弘文は、数理経済学から社会的共通資本への急な転向により、ある種の奇矯な人として受け止められているところもあるかと思う。この本を読んで、宇沢が1970年代の「反ケインズ経済学」をどのように眺めていたのかよく分かった。解説することもしたくないのだが、避けても通れないのでイヤイヤ解説すると言明するくらい。学問としての理論がどうこうではなく、歴史的・社会的背景を無視した前提の置き方、そしてそこから演繹される理論を格差などの問題に対する免罪符として用いる姿勢が我慢ならなかったのだろう。もちろん宇沢自身も1960年代のベトナム反戦運動などの文化的影響から自由ではない(多分、日本からアメリカに来た人間には特に眩しく見えることもあったのでは)が、2021年時点の感覚で言うならば、宇沢の問題提起には当時よりもうなずく人が増えているのではないかと思う。

    必ずしも紹介される学説の論理をきっちり追わなくても読める本ではあるが、宇沢先生は読者のレベルを想定するにあたり現代の感覚で言えば手加減がない。ワルラスの一般均衡理論を数式とグラフで解説してくれるのだが、「これまでの議論からただちにわかるように、この供給関数は賃金Wと財の価格Pjとにかんして零次同次である」なんて急に言ってくる。ただちにはわかりませんってば。だいたい零次同次の意味を知らなかった。

  • ・終わりで否定されてるが、経済学史的な本

  • 経済を学ぶ人の名著。だが、僕には難しすぎた

  • 【引用】歴史的過程のもとにおける人間の社会的行動に関わるものであって、繰り返しを許さない歴史的な現象である。実験を行うことはできない、許されないし、天文学のように数多くを観察することのできない。したがって、経済学の研究に際しては、とくに深い洞察力と論理力が必要となってくる。

    経済学は科学の中で最も芸術的なもので、芸術のなかでもっとも科学的なものである。また、すぐれて実践的な面をもつ。

  • 70~80年代の反ケインズ経済学にはぴしゃりと厳しい宇沢先生。たしかに合理性だけで根拠に人間の複雑な行動の総体を一般化するのは無理があるし、そのことに寄りすぎると結局は世の中投機合戦になってしまって、どこが「経世済民」やねんと。

    ソースティン・ヴェブレン、ジョーン・ロビンソンについて調べたくなった。アカロフとスティグリッツのことも、ちゃんと若かりし頃から目をつけていたんだなぁ。

    近代経済学の導入として、ちゃんと勉強になる新書です。

  • 2014年に86歳で亡くなられましたが、戦後長らく日本の経済学をリードしてきた著者による経済学の入門の書です。1988年刊行。

    アダム・スミスからその後の経済学の変遷を平易に解説しながら、”経済学はどのような学問か”を自らの研究体験をまじえて説いています。

    全編通じて大変示唆に富む内容ですが、とりわけジョーン・ロビンソンが1971年にアメリカ経済学会で行った講演『経済学の第二の危機』を紹介するくだりは著者の経済学にかける思いが強く伝わってきます。
    (N)

  • 宇沢弘文氏がケインズ経済学を中心に経済学の成り立ちと考え方について丁寧に論じている。

    いろいろと目からウロコで感動的でさえあった。
    高校生の頃、読んでいたらきっと経済学を専攻していただろう。
    (きっとケインジアンになっていた)
    が、高校生の頃、読んでいたら何が書かれているかわからなかったに違いない。
    社会に出てからの日々の生活や仕事通じた蓄積によって理解できたのだろう。

    この本は30年前に書かれたものだが、現在の課題を予言している。
    いや、現在はその予言すらも越えてしまっている。

    宇野氏が論の中でこきおろしている新古典主義の系譜につながるマネタリズムを中心とした反ケインズ主義は
    その大前提として、雇用の流動性、必要な情報がいつでも必要なだけ入手できる環境、生産物AとBが時間を考慮することなくすぐに交換でき、またそのときに最大価値をもたらすものだけを生産できる仕組みだと述べられている。

    これらについて当時は実現不可能と思われてきたが現代では技術革新によりある程度の実現性がでてきている。

    ・非正規雇用といわれる雇用制度の発達
    ・コンピュータの発達によるビッグデータの取扱い
    ・インターネットをはじめとする情報ネットワークの
     高速化によるクラウドビジネスの発達

    そういう意味ではその状況を踏まえた新しい「経済学の考え方」というものもあるのかも知れない。

    しかし、
    本来、経済学は経済現象を通じて人の幸せを追究する学問と考えるなら、それこそが経済学の本質だと考えるなら、
    上記の現在の経済はその「経済学の考え方を使って」、人がいかにホモ・エコノミクスであるべきかを追究するものになってしまっている。

    数値化・定式化できないもの(幸福感や生きがいといったような人の感情やいわゆる文化に関する活動)は除外される。逆にそういったものさえ数値化・定式化しようとしている。

    それは、かつても今も科学技術がその非人間性の部分を増大したことで
    公害をはじめとする環境破壊を引き起こしたのと同じように、経済学が科学技術化することで非人間的な社会を作り出そうとしているように思われる。

    宇沢氏はそういった経済学の課題への対応として「社会的共通資本」を提言しているが、3.11の地震と福島原発事故を経験した今、それすらも、もう間に合わなくなってしまっているのかも知れない。

    しかし、それでも現代の課題を解決していくのはこれら過去の思考の積み重ねの上ににしかないのだと考える。

    この本を読み終えた上で中途で積読状態となっている「人類が永遠に続くのではないとしたら」加藤典洋著を読みなおしたいと考えている。

  • 15/3/6読了

  • 経済学の後退を論じた部分が興味深い。政治との結びつきを求めた結果か。

    経済学の流れがよく分かった。万能で無いことも。

    全体的に行間を埋める思索が必要だった。前提知識があれば良かったのかもしれないが、新書の読了にそのような知識求められるのも現代では酷だろう。数式や概念的な理解がハードルだったか。

    ただ、古典の力は存分に感じた。歴史を画する書物は土台になる。そこから縦横に発展ができる。

    ・ハチスンの人間のための神
    ・資本主義から社会主義に変わっても人間性の向上はない。
    ・社会主義官僚に自由はほぼない。
    ・産業と営利の緊張関係。ヴェブレン
    ・財政支出の増加、所得税の減税。貨幣供給量を減らして、市場利子率を低下させる。ケインズ。
    ・所得再分配のパラドクス

  • 作者の新自由主義嫌いが笑える。

    アダムスミス・・・古典派経済学

    ケインズ(修正資本主義)
    →有効需要の創出
    →完全雇用、経済の安定化を目指す

    マネタリズム
    ・合理的期待性仮説
    ・サプライサイド経済学

  • 初心者向けではない。ただ、経済学の基礎知識があれば、経済学史の核となる論点がすっきりまとめられていて、読みやすいと思います。合理的期待形成仮説やマネタリストに対してはとても辛辣。

  • ゼミの勉強会に参加させてもらうので読みました。

    例えるなら
    経済学は物理学のようで、
    社会学は生物学か地学のよう

    と言うのは今日の先生の言葉。

    私にとっては人間味のある社会学のほうが性にあっているけれど、宇沢弘文さんの経済学の捉え方?は社会学的な要素もあり、貧困の滅亡を目標にあげてるだけあって左寄りの意見。

    アダムスミス問題でもでてきたけれど、経済学は倫理観がある人間が活用しないと、環境やジェンダーを無視した学問になってしまう。

    ウェブレンについての本も出しているようなので、今度はそれを読んでみたいな。

    Apr, 2013

  • 一年春に薦められた本の割には結構難しかった。3月中に再読したい。

  • 岩波新書経済学の解説書

  • 経済学の考え方とはどのようなものか?について、時代を追って解説されています。

    難しいです・・^^;。正直言ってほとんどチンプンカンプンでした。
    経済学の教科書、といった方が良いかも。

    それでも、ちょっと道徳っぽいアダムスミスから始まって、型にはめようと苦心した新古典派経済学へ。
    現実に即したものにしようとしたケインズ、そして、政治的に利用された?反ケインズで失敗・・というふうには読めました。

    読んでいて思ったのは、経済学って、現象を一生懸命型にはめて説明しようとするんですけど、その時になにがしかの前提条件を決めなければならないんですよね。
    でも、現実には条件が一定であるなんてことはなく、しかもものすごくいろんなことが経済の動きには関わってくる。
    企業の活動や政治の動きはもちろん、消費者の心理まで・・。
    ・・・無理なんじゃない?って思って思考停止してはいけないんですよね^^;。

    おもしろいな、と思ったのはヴェブレンという人の言葉。
    「近代的産業のもっている過剰な生産能力を十分にみたす規模まで、浪費的支出をふやすということは不可能に近い。(中略)私的浪費が大きなものであるということは疑いないが、貯蓄意欲と計算高い投資にかんする営利企業的な論理とが、人々の近代的な行動様式の中に組み込まれてしまっていて、貯蓄はいつでも高い水準に保たれてしまう。そのためになにかしかけなければならなくなる。それは政府が効果的な浪費をおこなうことである。軍備、公共的な建造物、宮廷や外交に関わる制度等々が、浪費的であるいう意味で、この問題に関して重要なものとなってくる。」

    ・・・なんか、今の日本の状況と解決策が示唆されているような・・^^;。
    ヴェブレンはちょうど100年ほど前の時代の方。今の日本の状況を知るはずもないのですが。

    1989年初版なのでやや古いですが、経済学を志す学生さんには良いのでは無いでしょうか?

  • 理論家の宇沢先生のわかりやすい著作。

    経済学というと、経済の歴史ではなく、経済学の歴史を語りたがるところが気がかりである。
    経済という現物を見ないと、経済学という原理の価値が下がるのではないかと思った。

    この感想は、経済学部を卒業してから25年離れていて、初めて気がついた。
    誰にでも分かれというつもりはない。

  • [ 内容 ]
    経済学とはなにか、経済学の考え方とはどういうものか―日本を代表する経済学者が自らの研究体験を顧みながら、柔軟な精神と熱い心情をもって、平易明快に語る。
    アダム・スミス以来の経済学のさまざまな立場を現代に至るまで骨太いタッチで把え、今後の展望をも与える本書は、経済学のあるべき姿を考えるために格好の書物と言えよう。

    [ 目次 ]
    1 経済学はどのうような性格をもった学問か
    2 アダム・スミスの『国富論』
    3 リカードからマルクスへ
    4 近代経済学の誕生―ワルラスの一般均衡理論
    5 ソースティン・ヴェブレン―新古典派理論の批判者
    6 ケインズ経済学
    7 戦後の経済学
    8 ジョーン・ロビンソンの経済学
    9 反ケインズ経済学の流行
    10 現代経済学の展開

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • アカデミックな内容でありながら、ロジックとストーリー、著者の自説のバランスが良く、経済学初心者の自分でもこれまでの歴史と課題などを概観することができ、経済学への興味を深めることができた。なかなかの良書だと思う。

  • 【内容】

    宇沢弘文の考える、経済学史の本であると同時に、彼の歴史上における経済思想を一つ一つ評価している本。

    A・スミスからミルトン・フリードマンまで解説がなされているので、なるほどそうだったのかと思わせる箇所も多い。



    【感想】

    少し経済学に詳しい人でないと難解であるとも思える。

    経済学を初めて学ぼうとする人がこの本にとりかかると、少し難儀に思うかもしれない。

    多少は経済学の思想を一通りかじった人が読むべきであるといえる。

    今我々に課せられている使命は、ジョーン・ロビンソンの説く「経済学第二の危機」である。

  • 宇沢弘文ご本人の考える、経済学説の解説本であると同時に、評価本でもあります。
    しかし、現代の経済学思想につながる考え方も随所に現れており、そういうことだったのかと思わせる事も多い。

    ただし、少し経済学に詳しい人でないと難解であるとも思える。経済学を初めて学ぼうとする人がこの本にとりかかると、少し難儀に思うかもしれない。
    多少は経済学の思想を一通りかじった人が読むべきであるかもしれない。
    今我々に課せられている使命は、ジョーン・ロビンソンの説く「経済学第二の危機」である。

  • 既読の「経済政策を売り歩く人々」や「物語 現代経済学―多様な経済思想の世界へ」と取り扱っている射程は概ね同じと感じました。
    一気通読。
    近代経済学の前提やその前提から導出される諸命題などについてコンパクトながらも詳らかに記され染み入るものがありました。
    また上記他書にはあまり記述のない、ヴェブレンやロビンソンについて多く頁を割いたり、他の章でも度々登場するなどしており、感嘆。
    森嶋通夫著「思想としての近代経済学」を手にしながら、これまで本書を手にすることのなかったのは因縁でしょう。

  • 経済学がこれまでどのように形成され、
    その底流にどのような考え方があるのかを明らかにした本

    2年後に再読したい

  • 全然読んでねぇ。

  • 1月?
    本書は、アダム・スミスから現代の経済学に至るまでを通し「経済学の考え方がどのように形成され、発展してきたかという面に焦点を当てた」本であった。ある程度の経済学の知識は読む上で必要である。経済学者の生涯にも触れつつ、そこでの体験が、どのように経済学的な考察へ影響をあたえたのかも記してあり、とても興味深かった。しかし、本書を通じ、私自身の不勉強を自覚させられる部分もありそれは今後の課題としておきたいと思う。今年に入り読んできた新書の中では、レベル、内容の両面から最高レベルであると感じる。

  • 「経済学とはなにか、経済学の考え方とはどういうものか―日本を代表する経済学者が自らの研究体験を顧みながら、柔軟な精神と熱い心情をもって、平易明快に語る。アダム・スミス以来の経済学のさまざまな立場を現代に至るまで骨太いタッチで捉え、今後の展望をも与える」一冊。

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著者プロフィール

中央大学研究開発機構教授
中央大学地球環境研究ユニット(CRUGE)責任者

「2000年 『地球環境政策』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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