学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か (岩波新書 新赤版 1925)
- 岩波書店 (2022年4月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004319252
作品紹介・あらすじ
二〇二〇年一〇月一日、時の首相・菅義偉は、日本学術会議から新会員として推薦を受けた一〇五名のうち六名の任命を拒否した。この民主主義や法から学問のあり方にまで禍根を残した事件から一年半。しかし、いまだ問題は終わっていない。日本社会の矛盾に直面した当事者六名が、その背景と本質を問う。
感想・レビュー・書評
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2020年10月、時の首相・菅義偉は、日本学術会議から新会員として推薦を受けた105人のうち6人の任命だけを拒否した。問題の核心はどこにあるのか。日本社会の矛盾に直面した当事者6人が、その背景と本質を問う。【「TRC MARC」の商品解説】
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【請求記号:061 ア】
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学術会議問題について、学術会議側からの意見。率直な当時の感想としては、政府の発表が中身がなさすぎるのと、また他方批判側の論点もあまりに日本的リベラルすぎて、薄い内容が引き延ばされただけの情報が続き、何が何やらというのが正直な印象でした。
ふとこの本を手に取る機会があり読んでみたのですが、全く状況は変わりませんでした。
中で繰り返し主張されていたように違法なら、行政訴訟をすればいいのではないかという素朴な疑問もありましたが、政府が説明しなすぎるのは肯定されないとも確かに思いました(それっぽい理由ぐらい考えればいいのに、と)。個人的にはメディア露出する活動的な人文系のアカデミアは政治活動に傾倒しすぎていると思っており、利権の闘いという想像をしてしまいました。
個人的には金銭的な流れについて権威(政府、アカデミア、メディアなど)をもっとオープンにしてほしいと改めて思います。
また、学術会議の説明のところで、戦争に加担したアカデミアの反省から、技術の軍事利用に反対するために、みたいな説明は、個人発信できる世の中に結論ありきの専門バラバラの問題が起こるまでほとんど知らなかった組織が経費を投じられる価値があるのか、個人的には疑問に思いました。
各所で権威を使いすぎて権威なき権威が溢れる昨今、信頼を渇望して決断主義に陥っている人が多くいるようにSNSを見ていると思います。
人文がメディアにおける自然科学の記事の監修をすべきだ、みたいな主張を見た時は笑ってしまった。 -
2020年10月 菅政権で日本学術会議会員への任命拒否案件が起こったが、対象となった6名がこの重大問題を論じている.加藤陽子の議論は問題を掘り下げてよく考察している従来の流れだったが、芦名定道の議論は聖書をベースにしたもので意外性があった.理解できない部分も多かったが、このような議論ができる人がいたことを誇りに思う.宇野重規の対話方式は取っつき易い形を取りながら、重要な視点を与えてくれる素晴らしい構成だと感じた.政府がこの問題に明快な回答をするとは思えないが、この六名の陣容だったら対話自体が無理でかみ合わない結果になると思う.
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学術会議新会員の任命拒否問題。単なる驕った政権の思いつきではなく、発足当初から狙われていたこと、理解できた。ただ、一般の人たちに理解してもらうことを放棄したかのような難しい論文ばかり…ウーン。
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菅首相による学術会議の任命拒否について、簡略に説明されている。学術会議の歴史、現状、拒否された本人からの推測についてマスメディアよりも詳しく書いてあるので、学術会議についての基礎的な知識と任命拒否の問題点を知るにはよい。
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学術会議任命拒否をされた、当事者の6人が、この問題について論考したものである。それぞれの学者が、自分のよってたつ学問を通じて、この問題に関して、当事者でありながら、冷静に客観的に、分析されている。拒否の説明責任は、政府にあるが、この間の他の問題と同様に、理由にならない理由を繰り出し、ダンマリを決め込む。この国の政治の劣化はコロナ禍で明確になったが、民主主義を守るためには声を上げ続けることが必要だろう。その意味では、当事者の冷静な論考は声を上げるための後押しになる。
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任命拒否された6名による応答的論考集だが、ハッキリ言って玉石混交。中でも2章の加藤陽子のは群を抜いてデキがよい。ここでは「トランスサイエンス」の問題が取り上げられている。この問題は昨今のコロナや原発の問題に通じるテーマである。という意味においては「学問と政治」というよりも「科学と政治」という問題が指摘されていると言えるだろう。
次に興味深いのが任命拒否問題に消極的であるとされていた6章の宇野重規。架空の対話形式でちょっと茶化した書き方ではあるが、消極的であった理由が示されている。また、任命拒否問題に社会的関心が大きくならなかったのは「これは自分の問題だ」と思えなかったという点を指摘し、研究者の力が足りなかったと反省の弁を述べている点は興味深い。
5章も興味深い点はあるのだが、キリスト教思想に傾倒しすぎていて特殊。その他の法学系の3人は憲法問題に絡めてやや恣意的解釈によりエモーショナルに政権批判をしているだけで、これでは読者の支持や共感を得るまでには至っていない印象を受ける。この問題を法的問題として指摘する事は可能なのだろうが、それでは「これは自分の問題だ」とは思えないため、社会的関心が高まらないことを自ら証明してしまっているようにも思える。 -
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