医療ミステリーアンソロジー『ドクターM』ポイズン (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022650191

作品紹介・あらすじ

足の痒みに悩む水尾爽太は、訪れた薬局で毒島という女性薬剤師に出会う。誤診を見抜いた彼女に興味を抱き、伯父の病状について相談すると、話は予想外の方向へ──(「笑わない薬剤師の健康診断」)。医療ミステリーアンソロジー第2弾!

感想・レビュー・書評

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  • 医療ミステリー、7人の名手が紡ぐ名作揃い。
    それぞれ謎あり、ユーモアありで、楽しめます。

    診断学で真理を見抜く臨床医。
    動物と話が出来る獣医。
    事件を事故に偽装する皮膚科部長。
    尊厳死を巡る混沌、などなど

    『是枝哲の敗北』、『笑わない薬剤師の健康診断』が好きですね。

  • 朝日文庫による医療系ミステリーのアンソロジー第2弾。
    サブタイトルにポイズンとあるが、いわゆる毒殺縛りというわけではなく、掲載内容は、臨床医、獣医学、がん抑制薬学、薬剤師、終末医療、美容整形と、前作同様に幅広い。
    作家陣も旬の方から往年のベテランを取り揃えており、キレのある短編ばかり。
    連城三紀彦は定番のアダルティぶり。
    海堂尊も、トンデモっぽい大風呂敷だけど、さもありなん的な巧さ。
    連作シリーズからの掲載作品もあり、気になるモノはここから追いかけるきっかけになるかも。個人的には塔山郁の「笑わない薬剤師の健康診断」がヒット。元ネタ本チェックしてみようと思った。
    COVID-19感染拡大により何かと注目されがちな医療関係。それに因んでのモノではなく、そうなる前からの企画らしい。

  • 浅ノ宮遼、五十嵐貴久、大倉崇裕、海堂尊 塔山郁、葉真中顕、連城三紀彦『医療ミステリーアンソロジー『ドクターM』ポイズン』朝日文庫。

    医療ミステリーアンソロジー第2弾。7人の作家の短編を収録。前作よりもさらにキレの無い短編が目立つ。恐らく各作家の連作短編集の中から1作だけをセレクトしたことがキレの無さの原因かと思う。ならばノンシリーズの短編ばかりをセレクトした方が良かったのではと思うのだが、医療ミステリーのノンシリーズの短編というのはなかなか無いのだろう。

    大倉崇裕『是枝哲の敗北』、塔山郁『笑わない薬剤師の健康診断』、連城三紀彦『夜光の唇』が面白かった。

    浅ノ宮遼『片翼の折鶴』。末期癌に冒された妻の響子を睡眠薬で殺害しようとする獣医の達也。それを見抜いた医師の西丸。劇的な推理でもなければ、驚愕の結末も無いという極めて平凡な短編。★★★

    五十嵐貴久『老人と犬』。偶然というか、本人の意に反して、殉職した父親と同じ南武蔵野署に副所長として配属された立花令子はあるトラブルを通じて不思議な能力を持つ獣医の土井徹と知り合う。犯行動機が全く描かれず、犯罪として立証されることも無いことで、ふわりとした感じのストーリーで終わってしまったのが残念。★★★

    大倉崇裕『是枝哲の敗北』。本格的なミステリー短編。聖南総合病院の皮膚科部長の是枝哲は不倫関係にあったMRの足立郁美を事故に見せ掛けて殺害する。完全犯罪を狙った計画的な犯罪だったが、警視庁捜査一課の福家は他殺を疑う。少しずつ是枝を追い詰める福家だったが……★★★★

    海堂尊『ガンコロリン』。極北大学の倉田教授が画期的な癌の抑制薬『ガンコロリン』を開発する。その情報に飛び付いたサンザシ製薬は新薬として薬事申請を行う。薬事申請から僅か半月で使用が認められた『ガンコロリン』だったが……ミステリーの要素は無く、医療コメディといった感じで、本当につまらない。★★

    塔山郁『笑わない薬剤師の健康診断』。水虫と思われる足の痒みに悩む水尾爽太は、訪れた薬局で毒島という女性薬剤師に出会う。毒島は爽太の症状から水虫ではないと見抜き、他の皮膚科を紹介する。足の痒みから解放された爽太は毒島にお礼を告げると共に伯父の病状について相談する。★★★★

    葉真中顕『リビング・ウィル』。終末期医療に於ける尊厳死を巡るブラックな短編だった。渓流釣りの最中に足を滑らし、救助されたものの意識不明に陥った祖父。尊厳死を選択すべきか、延命措置を行うべきか家族は大いに悩むが……★★★

    連城三紀彦『夜光の唇』。これは傑作。整形医の藤木は田村葉子という女性から整形の依頼を受ける。洗練された美貌の葉子には整形など不要と思われたのだが……★★★★★

    本体価格840円
    ★★★

  • 「こんな話だった」と後で思い出して話せる、印象の深い話が色々集まった、
    ドクターMのアンソロジー2冊目。
    前回は分厚くて盛り盛りだった。
    こんなふうにテーマがあって、このくらいのボリュームだと読みやすいかも。

    『ポイズン』毒はいろいろだった。
    文字通り毒や薬のトリックもあれば、皮肉や毒気にあふれた話、人の心にひそむ毒など。
    シリーズ物の中の1編というものもあって、元のシリーズが読みたくなった。
    獣医の土井先生、福家警部補(ドラマ化されていたんですね)、薬剤師の毒島さん。
    アンソロジーのいいところの一つは、読みたい作家さんが増えることだ。

    『片翼の折鶴』浅ノ宮遼
    双極性障害の妻は、自分が死んだら脳をブレインバンクに提供して、自分を苦しめていた病に対する研究に使ってほしいという意思表示をしていた。
    同時に、癌にもかかっていて、あと半年の命だった。
    彼女は夫にあることを依頼する。

    『老人と犬』五十嵐貴久
    元警察官の老人は、現役時代に取り締まっていた暴力団の一派に殺される、という考えに取りつかれている。
    南武蔵野署の副署長・立花令子(たちばな れいこ)が話を聞きに行く。

    『是枝哲(これえだ さとし)の敗北』大倉崇裕
    是枝哲は49歳にして総合病院の皮膚科部長。院長の娘を妻に持つおかげだ。
    不倫関係にあるMR足立郁美が急に結婚を迫ってきて、邪魔になった。
    完全犯罪のつもりだったが、福家警部補に追い詰められる。

    『ガンコロリン』海堂尊
    ガン撲滅は、人類の悲願である。
    しかし、飲むだけで癌を撲滅し、予防もできるという夢のような薬が開発された後、医学界に、そして人類に何が起きるか。

    『笑わない薬剤師の健康診断』塔山郁
    ある時は医師以上に患者の身近に寄り添う薬剤師。
    薬のことを語り出したら止まらない毒島(ぶすじま)さん。

    『リビング・ウィル』葉真中顕
    「リビング・ウィル(生前の意志)」とは、万が一の時に(植物人間状態になった場合など)、尊厳死を希望するか否か、あらかじめその意思を書面に記したもの。
    皮肉な結果に。
    これは、笑っていいのか、戦慄しなくてはいけないのか。

    『夜光の唇』連城三紀彦
    美容外科医・藤木集介は結婚13年、浮気を繰り返していた。
    結婚記念日に、妻からの贈り物が届く。
    少し時代が古い作品だが、さすがの細やかな描写がゾッとさせる。
    ホラーだ!サイコホラーを感じる!!

  • 『ガンコロリン』はコメディっぽい感じ。
    『笑わない薬剤師の健康診断』は他の話も読みたくなる。
    『リビング・ウィル』はちょっと考えさせられる。

  • 2016年11月東京創元社刊浅ノ宮遼:片翼の折鶴、幻冬舎2008年11月刊五十嵐貴久:土井徹先生の診療事件簿から老人と犬、ミステリーズvol.76(2016年春)大倉崇裕:是枝哲の敗北、小説新潮2013年6月号ガンコロイン騒動記改題海堂尊: ガンコロリン、2019年5月宝島社文庫刊薬も過ぎれば毒となる薬剤師・毒島花織の名推理から塔山郁:笑わない薬剤師の健康診断、2017年10月小学館文庫刊政治的に正しい警察小説から葉真中顕:リビング・ウィル、小説すばる1994年4月号連城三紀彦:夜光の唇、の7つの短編を2021年10月朝日文庫刊。シリーズ2作目。動物の言葉がわかる先生が出てくる「老人と犬」が面白そうで、土井さん本を読むことにしました。「笑わない〜」の薬剤師さんが新鮮で、面白い。

  • +++
    足の痒みに悩む水尾爽太は、訪れた薬局で毒島という女性薬剤師に出会う。誤診を見抜いた彼女に興味を抱き、伯父の病状について相談すると、話は予想外の方向へ──(「笑わない薬剤師の健康診断」)。医療ミステリーアンソロジー第2弾!
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    「片翼の折鶴」 浅ノ宮遼
    「老人と犬」 五十嵐貴久
    「是枝哲の敗北」 大倉崇裕
    「ガンコロリン」 海堂尊
    「笑わない薬剤師の健康診断」 塔山郁
    「リビング・ウィル」 葉真中顕
    「夜光の唇」 連城三紀彦
    +++

    誰もが関わらずにはすまない医療を題材にしたミステリだが、切り口はそれぞれにまったく異なり、飽きることなく愉しめる。たださすがに医療にかかわるミステリなので、そのまま命を左右する分、恐ろしさもひとしおである。ことに、リビング・ウィルの難しさには、改めて唸らされた。自分のこととして、しっかり考えなければと思わされる。怖さを含めて愉しめる一冊だった。

  • 医療ミステリーのアンソロジー。う~ん私的にはインパクトがある短編はなかった。

  • ガンコロリンはそこそこ面白かったが、他はありきたりだったり内容が薄く楽しめなかった。2.7

  • 『リビングウィル』葉真中顕★★★★
    安楽死と尊厳死をきちんと書き分けてあり、好印象。ここが曖昧だと話がおかしくなる。
    意識が戻らず、いわゆる植物人間になると言われた親族が損得勘定や、リビングウィルについて考える。
    でも患者本人は、実は意識はあるが発信できない、そんな状態だったら…
    そして意識があるとしたら患者本人の気持ちが変わることもあるかもしれない。
    本当に難しい問題だと改めて感じる。

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