つかのまのこと

  • KADOKAWA
3.42
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040650630

作品紹介・あらすじ

作家・柴崎友香が俳優・東出昌大をイメージし純文学小説を執筆。さらに、<物語>に合わせ写真家・市橋織江がその世界観を撮り下ろし。作家、俳優、写真家。各界で第一線を走るクリエイター3者が集結し、<一冊>を作り上げた、“新しい純文学”。

「わたしのほうが幽霊である、と気づいたのは、早い時期であったように思う。」かつての住み家であったのであろう、“この家”を彷徨い続ける“わたし”。その理由がわからないままに時は移り変わり、家には次々と新しい住人たちがやってくる。彼らの光景を見守り続ける“わたし”は、ここで、いったい何を、誰を待っているのか――。ラスト、あなたはその<結末>に、きっと涙する。あなたは、大切だったあの人の“顔”を、覚えていますか?

感想・レビュー・書評

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  • “どれぐらい長い間ここにいるのか、既に思い出せない”

    東出昌大さんを主人公にイメージして創作した、柴崎友香さんの小説。市橋織江さんが〈物語〉に合わせて撮り下ろした写真も収録されている。


    どうやら、私は幽霊のようだ。この家に住む誰からも認識されていない。たまに外に出ると話ができる人がいる。塀の上を歩いていた岸部という男だ。それも、ある日姿を見なくなった。

    家にはいろんな人が住んだ
    どの家族にも私と縁があるようには思えない

    縁側がにネコ、のような塊があり、触ろうとすると「ギィーーーー」と声のようなものを出して、消えた。ネコかと思うけど、三つの目が光ってる。


    幽霊がこんなに美しくて、恨んでもいなくて、ただ漂ってるだけならば、私もなってみたいと思った

    そのとき、寂しいと思うのだろうか?

    ケイシー・アフレックの「A GHOST STORY」という映画を思い出した

    ある日、若い夫婦の夫が交通事故で亡くなる。
    シーツをかけられた夫はむくりと起き上がり家に漂う。
    妻は思い出のある家を引き払う。メモを壁の隙間に挟んで。
    そのメモが見たくて夫の幽霊はずっと家に漂い続ける。
    いろんな家族がその家に住み、過ごし、育ち、また家を出る。
    その間ずっとシーツを被った夫は漂い続ける。
    壁の隙間のメモを取り出すために壁をカリカリとほじり続ける。
    たまにこちらを見つめる子供に出会ったりもする。
    また家族は出ていく。

    幽霊の物語は、愛の物語だ

  • 柴崎友香×市橋織江×東出昌大のコラボ。小説と写真、そこに東出君のキャラクターがどう作用するか気になり手に取ってみた。
    柴崎さんの独特の浮遊感漂う文体が、とても心地よい。現実なのか非現実なのか、今なのか過去なのか…日本家屋に住み着いている幽霊の目を通して描かれる情景が少しシュールで、それでいてどこか寂しさと切なさを帯びている。
    しっとりとした余韻の美しい作品だ。

  • 『幽霊が現れたり消えたりするように、わたしにもほかの人間が見えたり見えなかったりする。人々だけでなく、世界の全体が遠のいて、虚空に投げ出されたような心地になる』

    夢十夜の第一夜を彷彿とさせるような味わい。柴崎友香が踏み出した新しい境地を伺う思いがする。如何にも主人公の男性であるような男優の写真が少しうるさいような気にもなるけれど、写真が伝えるものは文章が描き出そうとするものを邪魔する訳ではない。一瞬でもなく永遠でもない。そんなふうに写真のフレームに封じ込められたものは、短篇小説の言葉の世界と良く共鳴している。

    デビュー以来、作家自身と同じような世代の等身大の主人公を描くことの多かった作家が描いた怪奇譚という種はこんなふうに開花するのか。あるいはアイオワの地で受けた刺激が作家のパレットの色味を広げたのか。百年待った訳ではないけれど、その花の放つ淡い色の力がしんしんと伝わって来る。香りではない。薄い蒼の滲んた白の持つ力。輪郭も曖昧なその色と周囲の空気との交わり。ただただ拡散してゆくだけのこと。そんな小説を柴崎友香はいつの間にか書くようになっていたのだなと、苔の上に座っていた男のように気付く。傑作。

  • 彼(そもそも男なのか?)にとっては、この家族が引っ越して去っていく間も、言うなればつかのまのことなんでしょう。
    古いおうちって本当に少なくなりました。この、本当にいい家が、取り壊されずに、次の人がやってきますように。

  • 柴崎さんの作品『寝ても覚めても』に主演したということで、今回は東出昌大をイメージした作品。東出昌大の写真集みたい。

  • NHKの朝ドラ「ごちそうさん」の頃から東出くんが好きで、そんな彼をモデルにして書かれた小説があると知り、手に取った。中身は東出くんの写真と小説が一緒にまとめられている。東出くんをモデルにした「わたし」は幽霊で、自分の事はなにも思い出せない。ただ、家に住んでいる人々を見守る日々。特にこれといった大事件は起きず、不思議なお話です。でも、時々、「はっ!」とさせられる文章に出会えます。まるで、この小説自体が「幽霊」みたいだと感じた。

  • あたたかい、さみしい、せつない、、、色んな感情を抱きながら読みました。
    1人で静かな部屋で読むと、すっと入り込んできました。

  • 東出昌大をモデルにしたと思われる幽霊が登場する。
    「つかのまのこと」のとおり、幽霊が居ついている古い日本家屋の住人の移り変わりも、幽霊からしてみればきっとほんの短い間だったんだろうと思う。静かに淡々と過ぎる一日とも認識していないような日々。実際にそこかしこにそういう存在がいるんじゃないかと、ふと考えてしまった。

  • 柴崎友香の幽霊の話は大好物です。もっとこういうの読みたい。

  • 文学と俳優さんの写真を合体しており、東出さんの雰囲気と文体がわりとマッチしていました。しかし、写真は写真、小説は小説で分けた方が集中できるかなぁ、と。この世に未練があったのでしょう。家に住みついている幽霊が家の移り変わりを見届け、やがて一番会いたかった人にようやく出会うまでのストーリーはちょっぴり切なかったです。

  • ふぅん…
    ちょい切なくて、いい話と写真集?のコラボみたいな。
    特に東出昌大さんのファンではないけど、たまたま図書館にて。
    好きな俳優さんだと嬉しいかも。

  • 当たり前なんだろうけど、ヘアメイクさんがしっかりついて、このナチュラルヘアを作ってるんですねー。

  • 雰囲気が良い。東出くんぴったり。

  • 東出昌大の写真集?とコラボしたファンタジーというかある旧家に住み着いた地縛霊の話、まあちょっといい話という感じだった。

  • とても淡々と進んでいく、東出昌大さんの写真多めの本ですが、好きでした。
    今日も東出さんが出演されている落語の番組を見ていたので、一人称のこのお話が東出さんの声で再生されました。
    短いお話なのですが、光と不思議な時間の流れがあります。
    幽霊の「わたし」のこれからをぼんやりと考えてしまいます。

  • 東出昌大の写真が有って成り立つ世界だと思った。
    淡々と話が進み終わってしまう。つかの間に。

  • +++
    かつての住み家であったのであろう、“この家”を彷徨い続ける“わたし”。その理由がわからないままに時は移り、家には次々と新しい住人たちがやってくる。彼らを見守り続ける“わたし”は、ここで、いったい何を、誰を待っているのか―。俳優・東出昌大をイメージして作品を執筆、さらに写真家・市橋織江がその文学世界を撮影した、“新しい純文学”。
    +++

    東出昌大さんを想定して書かれた物語ということである。どうやら幽霊として、ある古い日本家屋に住み着いている男の目を通してみた日常の風景。当て書きというだけあって、折々に挿みこまれる写真が、物語と一体になって、胸のなかがたいそう穏やかになる気がする。窓も開けていないのに、ふと空気の流れを感じるとき、もしかすると人ならぬものが通って行ったのかもしれない、などと想像してしまいそうになる。変わっていくものと変わらずに在るもののことを考えてみたくなる一冊である。

  • 何者でもない、誰にも知られない、誰にもかかわれない。彼の中にはその家に住む人たちの記憶が積もっていくのに、誰も彼のことを知らないというさみしさ。どことなく漂う懐かしさみたいなものも相まって、少し切なくなる。

  • 東出君をモデルとした小説。異色、というが『騙し絵の牙』も同じようなものかと思ってた。まだ読んでないけど。
    東出君がとにかく好き。だからぜんぜんいいんだけど、
    いまいち、小説と写真がズレている気がする。かっこいいからいいけど。別物感が...かっこいいからいいんだけど。

  • 2019 2/3

  • 面白い試みだけど自分には合わなかった。

  • 10/2

    図書館で借りたもの。
    「わたしのほうが幽霊である、と気づいたのは、早い時期であったように思う。」かつての住み家であったのであろう、“この家”を彷徨い続ける“わたし”。その理由がわからないままに時は移り変わり、家には次々と新しい住人たちがやってくる。彼らの光景を見守り続ける“わたし”は、ここで、いったい何を、誰を待っているのか――。
    俳優・東出昌大をモデルに描かれた物語。

    30分で読み終わった。
    もっと読んでいたかったなぁ。
    静かな空気感で、東出さんの柔らかい雰囲気に合ってた。
    物語は淡々と進みちょっと物足りない気もしたけど、、

  • もし幽霊が居たらこんな感じなんだろうなあと、リアルに感じられた。

  • 東出さんが古い日本家屋にすみつく幽霊を演じていらっしゃる。とてもよくお似合い。その家に住む家族に向けられるまなざしの温かさと、自分の顔も名前もわからない、その存在のあいまいさから滲み出るような寂しさとが混じり合って、なんとも言えない読後感があった。

  • 東出昌大さんの素敵な横顔のカバーを外すと、きれいな赤の表紙。写真も懐かしい昭和の雰囲気で良いです。
    自分がだれで、ここがどこで、何をしているのかもわからない主人公。
    作品紹介で「ラスト、あなたはその<結末>に、きっと涙する。」と書かれていましたが…
    偶然の再会? でも結局誰かわからず、再会も主人公の一方的なもの  どうにかなるわけでもなく
    これで心残りなく旅立てるということだろうか?
    消えていった人たちはどうだったのか、ただ一瞬にして消えていったのか    う~ん もう一つ
    何かが欲しい。

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著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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