海と毒薬 (角川文庫)

著者 :
制作 : 駒井 哲郎 
  • 角川書店
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レビュー : 168
  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041245255

感想・レビュー・書評

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  • 罰と罪の違いについて。
    罰と罪への対応の違いについて。

    読み応えあり。
    構成が面白い。

  • 戦時下の病院なんて、もっと爆撃とかでやられて苦しんでいる人だらけ…なイメージがあったので、まずは一般の病人が入院してたということが、単純に私にとっては発見でした。
    そして、権力抗争。
    権威をほしがる人間の欲求なんて、普遍的なものなのかも。

    とはいえ、死と隣り合わせの戦争をしていた時代。
    人の命をどう扱うのか、医者として勝呂は悩む。
    読みながら、だんだん自分も何が正しくて何が正しくないのか…わからなくなってくる。
    戦争によって傷つけられるのは、町や人の体だけじゃなく、人の心なんだということを再確認。

    それぞれの人の内面に深く深く入り込んでいく作品。
    戦争という異常なできごとだったからこそ、の部分と、いつの時代も変わらない人間の本質的な部分と。
    どちらも感じられ、読みごたえがありました。

    文体も読みやすく、遠藤周作の他の作品も読みたくなりました。

  • 恥ずかしながら遠藤周作の小説を読むのはこれが初めて。
    相川事件については詳細は知らず、あったという事実だけしか認識していない状態だったけれども、いつかは読まねばーと思い、ようやく達成できた。

    平野氏の解説にあった「罰を恐れながら罪を恐れない日本人の習性」を浮かび上がらせるために、普通の生活を送る私たちが想像しやすいよう、小説という体裁をはずれず、”派閥争い”や”恋愛”などを織り込み、結果小説としても問題提起としても成功しているところに作者の力量を感じた。

    悩み続ける勝呂に寄りそっていたはずが、いつの間にか戸田の感情に共感することもあり、読んでいる間何度も混乱に陥った。
    恐ろしいことに、たしかに戸田の言うとおり、この時代、こういう状況下に置かれたら私は罪を犯すだろうと平然と思っている時間があったからだ。

    それでも何となく、いや、多くの人がこうした場合流されて戸田や浅井のような行動を取るんじゃないか? と思ったりもした。
    しかし、果たして本当にそうだろうか、日本人が神を持っていないということも大きいんじゃないか、いや神とは何だ? とかぐるぐるし始めて、結局答え出ぬままパンクして終わってしもうた……

    今でもまだ印象に深く残っているのは、小説や詩にはからきしの勝呂がよく心に浮かばせるという「羊の雲の過ぎるとき~」詩だ。
    私も詩の教養はさっぱりだけれど、あれを読んだとき何となく救いを包含した悼みの詩だという気がして、だから勝呂はあれを心に浮かばせたとき、大きな偉大なものに抱かれ、少しでも救われるような気がしていたんじゃないかと思っていた。
    だからこそ、最後に罪を得た勝呂があの詩を呟けなかったことに私も打ちのめされ、まだ黒い海を漂っているような感じなのであったー。

  • "日本人は罰を恐れ、罪を恐れない"
    この言葉が実に的確に日本人を表している。怯える男、良心の無い男、嫌悪を抱く女。戦争中の生体解剖が行われた"相川事件"を通して描かれるのは読者に問う良心であり、愚かさだと思う。読んでいる最中、病院の薬品の匂いと黒い海を想像していた。それだけ熱中できる名作。

  • リアルだった。空気って怖いね。事実のままではなく、小説にしたよさが完璧に出ているという事なんだなぁと、解説を読みながら思えた。やはり、日本人は、こういう風になりやすいんだろうか。
    戦争のことだけについていうと、この本だけじゃなく、他の本やテレビなどからもおもったのが、一旦始まってしまうと、段々感覚が麻痺してきて、というか麻痺させないと生きていけないところに追い込まれるのが戦争なんだろうなとおもった。一旦そうなってしまうと、止めることも出来ないよな。
    文章が読みやすかった。
    「私」が、この後、医院へ通うのかが、わからないままなのがいいのかな?あなたなら、ということなんだろうか。

  • 太平洋戦争、本土への無差別的な空襲が激しくなった頃、アメリカの戦闘機B29の乗組員が捕虜として、九州にあるF病院に連行された。その病院では生きたまま解剖するという、おぞましい生体解剖が行われた。
    この作品は、実際にあった出来事を題材に、小説化したと言われている。
    本来、人の命を救うべき立場の彼等がヒトを生きたまま解剖するという不条理な罪意識を、登場人物それぞれの視点で巧みに描いている。
    元々は問題的ではない常識的な人たちが、時代背景や利害関係よってに流されていく様子は、まさしく毒薬であると言える。
    「沈黙」と並び、罪に対する意識について問いかける筆力は凄まじく、寝る前に読む本でないことは間違いない。

  • これはなんとも言えない。明日は我が身ですよ。時代、状況、立場によっては自分が裁かれる側になってしまう恐怖。つまらない嫉妬、優越感、個人の良心の呵責を確かめる材料であったり、同調圧力によって断われず…あるあるです。怖いな〜。

  • 苦悩する人としない人の差とはなんだろう。
    罪とはそもそも人の決めた倫理の中にあるから、
    その範疇に収まらなければ、
    感じるとこはできないんだろうなと思った。
    チャンスがあるからものにしたい。その欲求のみ。

    ただ、読んでくときの違和感はぬぐえませんでした。たぶん、フィクションとノンフィクションの違いなんだろうけど、生体解剖事件の本を読んでからだったので、各関係者こんな複雑な思い抱えて、参加してたとは思えませんでした。

  • 戦時下での人間の罪や良心について考えさせられる作品でした。
    外国人捕虜の生体解剖について関係者の十人十色の感情が描かれています。
    生きた人間を医学の進歩の為に解剖することは、殺人と同義ではないのか?それとも、医学の進歩の為に欠かせないことなのか?
    戦争という時代背景で、実験体が敵である捕虜だから死ぬことを前提として解剖しても良いのか?同じ日本人であればそのようなことは出来ないのか?
    結核治療の為に必要な実験だとして、私個人としては
    如何しても殺人の概念が頭から離れず恐怖や呵責で苦しみ逃げてしまう勝呂は正解だと思うし、
    未来の人の病気を治す為に致し方ないと割り切れる助教授や看護婦長も正解だと思うし、
    戦争という激動の時代で死の価値観が屈折している戸田も正解だと思いました。
    おそらく程度は違えど現代にも同じようなことはあって、
    まさに人類の苦悩の核心を突いていると感じました。

  • 以前に一度読んだことがあったのだが、恥ずかしながら残酷だなぁという感想しか抱けなかった。
    ただ、医学生になった今読み返すと少し違った気持ちを抱いた。まず、以前より専門用語がわかるようになったため、手術の生々しさが伝わってきてより、強烈に感じる。そして、生体解剖など絶対に間違ってる、決して行ってはならないことだと強く思った。心臓が少しドキドキした。

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著者プロフィール

遠藤 周作(えんどう しゅうさく)
1923年3月27日 - 1996年9月29日
東京生まれ。父親の仕事で、幼少時代を満洲で過ごす。帰国後にカトリックの洗礼を受けた。1941年上智大学予科に入学したが、中退。慶應義塾大学文学部仏文科入学・卒業後、カトリック文学を学ぶためにフランスへの留学。帰国後の1954年『アデンまで』を発表し小説デビュー。1955年『白い人』で芥川賞を受賞し「第三の新人」として脚光を浴びた。
1958年『海と毒薬』で第5回新潮社文学賞及び第12回毎日出版文化賞、1966年『沈黙』で第2回谷崎潤一郎賞、1979年『キリストの誕生』で第30回読売文学賞評論・伝記賞、1980年『侍』で第33回野間文芸賞などそれぞれ受賞。1995年に文化勲章を受章している。
上記受賞作のほか、1993年刊行『深い河』もキリスト教と日本人をテーマにした代表作と見なされており、映画化された。60年代以降「狐狸庵山人」(こりあんさんじん)を名乗り、様々なエッセイを記した。数々の作品が欧米で翻訳され高い評価を受けており、存命中ノーベル文学賞候補だったこともよく知られている。

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