- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041880029
作品紹介・あらすじ
巨大都市の欲望を呑みつくす圧倒的な「水たまり」東京湾。ゴミ、汚物、夢、憎悪…あらゆる残骸が堆積する湾岸の「埋立地」。この不安定な領域に浮かんでは消えていく不可思議な出来事。実は皆が知っているのだ…海が邪悪を胎んでしまったことを。「リング」「らせん」の著者が筆力を尽くし、恐怖と感動を呼ぶカルトホラーの傑作。
感想・レビュー・書評
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7つの短編からなり、東京湾をテーマとしたもの。
どれも不気味で、もうちょっと続きを読みたい…!というところで終わってしまう。完全なる種明かしをしないところが、ホラーとしての余韻や想像を掻き立てて良いのかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
水をテーマにしたホラー短編集。
映画になっているから長編なのかな?と思ったら、収録作の「浮遊する水」を映画化したものだったらしい。
お化け的な怖さより、水に対する本能的な怖さが呼び起こされた。底の見えない水たまりってなんであんなに怖いんだろ。 -
幼い頃から私は海が怖かった。
泳ぎは得意で水遊びは好きなのだけど
海は何故か物凄く恐怖を感じる。
圧倒的な大きさ、じっと見ていると
吸い込まれそうな飛び込んで行ってしまいそうな
とにか漠然とした威圧を感じる。
なのでこれは生理的にゾワゾワきたなぁ。
やはり海怖い…。
「浮遊する水」を読んで
水道水を飲まなくなった人、絶対いると思う。 -
あの「リング」の鈴木光司の本なので、「きっとホラーなのだろう恐ろしいのだろう読むのヤーメタ」というのは非常に勿体ない、水にまつわる短編及び連作短編集。「仄暗い水の底から」というホラー映画があるものだから、余計敬遠する人がいそうなのが残念(ちなみに、同名映画はこの本に収録されている「浮遊する水」という短編を映画化したもの)。しかし自分は、あえて"ホラー"とは言わないでおきます(カテゴリはホラーにしてるけど笑)
「浮遊する水」は母子にまとわりつく失踪した少女のぬめぬめとした気配が感じられる、湿度の高いホラー小説ですが、それ以外の短編は、時には怪談であったり、怪異であったり、不思議であったり、親子の遺志であったりと、バリエーション豊か。これをひとまとめにしてホラーと銘打つのはちょっと憚られます。
個人的なお気に入りは、「孤島」「海に沈む森」の2作。後者なんかは、本書のプロローグとエピローグにもつながってゆくのですが、胸を打つ力強さがあります。自分自身が父親なので、余計にそう感じるのかも知れないけど。
とにかく、鈴木光司=「リング」としか知らない方には、ぜひ読んで頂きたいタイトルです。ホラーに偏り気味ではあるし、水という題材なので湿度は高いですが、短編だけに密度も高い。これを読めば、鈴木光司にホラー作家というレッテルを貼ってしまうのは、とても勿体ないことであると感じられるはずです。 -
リングやらせんが流行っていた頃、なんで人がお金を出して怖い思いをしたがるのか全く理解できませんでしたが(笑)小説を読むとホラーでもなんでもなくて、人間そして家族を描いています。面白かった。
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都内のベイエリアのマンションを購入した母子家庭。周りも住んでいる人がいると思いきや、事務所として使われているために、夜の住人は親子2人と管理人だけということが判明する。ある日、屋上で子どものものと見られるおもちゃの入ったバッグを見つけて管理人に届けるが、管理人にも心当たりはない。持ち主が現れないため、管理人がそのバッグを捨てた数日後、またバッグは屋上に現れる。その頃から、子供が風呂で誰かと喋っているような気配がし始める…。
『リング』シリーズの鈴木光司のおそらく初期短編集。水や海にまつわる怪談を集め、さらにプロローグとエピローグを足すことでアンソロジー風になっているものの、接点がある話ではない。
『リング』シリーズの、とりわけ『らせん』以降でのしっかりしたSF展開も印象深いが、本作でもホラーや怪談じみた話が多いものの、メカニズムをベースにしたSFのような作風も少しではあるものの伺い知れる。プロローグを除いて1作目やヨットの話などは、シンプルに怪談だし、漂流していた無人ボートはSFなのかな。
最後の2作は、無理やり怪談風のオチへの導入にしているものの、全体の情景をメタに俯瞰したような不思議な感覚を持ったストーリーが主題となっている。怪談部分は必要だったのかな。
いずれにしろ、おそらく作者が初期に書いた膨大な短編の中から、水にまつわる話を集めたという、背景の努力や蓄積が透けて見えるような力作であり、角川ホラー文庫にありがちなやっつけ書き下ろしややっつけアンソロジーとは格の違いを見せつけられる1冊である。
あんまりたくさん読んでこなかったけど、流行り物作家とは一線を画す(でもやりたいことを突き詰めていくと、読者に理解が難しいものを書く欠点もある)作家なので、角川ホラー文庫という先入観を持たせがちなレーベルばかりで発表しているのはもったいない。角川もドル箱だから離さないんだろうけれども。 -
「リング」シリーズで有名なホラー作家・鈴木光司によって著された、「水」(+閉鎖空間)をテーマとしたホラー短篇集。なお、同名タイトルの映画化作品は、収録されている一編「浮遊する水」を原作としている。
ジャンルとしては「ホラー」だが、全編通じて心霊的なホラーという訳ではなく、ミステリ寄りのものや、極限状態に陥るシチュエーション等、バリエーションに富んだ作品構成となっている。(とはいえ、やはり心霊モノが多めであるが。)個人的に、小中学生の頃に観た映画化作品の印象が強く残っていたので、少々意外であった。(そもそも、本作が短篇集であったことすら知らなかったのだが。)
どの作品も面白かったとは思うのだが、短編の物足りなさをカバーするほどの面白さではなかった。 -
記録
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映画のイメージが強くて、ただのホラー小説かと思っていたら違った。
水。東京湾をテーマにした作品集。
水の持つ底知れぬ恐ろしさ。
形がないものに対してどう向き合えばいいのか。
深く先が見えない底。
息ができないという恐怖。
抗えない自然の力。
マンションの貯水棟、無人島、転覆した漁船、ヨットのプロペラに絡まった子どもの靴。
誰もいないクルーザー。
排水口に絡まる髪の毛。
地底湖。
現代都市、東京に住む人々と、現代の力を持ってしても制御できない自然。
水や海の持つ強大な恐ろしさがリアルに描かれていることはもちろん、それぞれの作品ごとに語り口が異なっていて面白い。
情景描写だけでも恐ろしいのに、心理描写も相まって本当にゾッとする。
そして明確には明かされないそれぞれの結末。あれこれ想像を巡らせるうちに仄暗い水の底に吸い込まれてしまいそう。
個人的に怖くて無理なのは「海に沈む森」。地底湖無理…こわい…
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東京湾をテーマとしたホラー短編集。
『浮遊する水』はその水を飲んだり使ったりしたと想像しただけで気持ち悪かった。
『穴ぐら』は怖かったけれど、最後に主人公の心は救われたんじゃないかと思う。
『海に沈む森』は『エピローグ』も含め、主人公が残した言葉で勇気づけられた人がいて良かった。