ハッピーエンドにさよならを (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 138
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043595075

感想・レビュー・書評

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  • おみごとです!
    表題でおおかたの想像はつくのですが、その期待を裏切らないアンハッピーエンドの11連発。

    あ…と軽いものから、おお!…と周到なものや、嗚呼…とやるせないものまでいろんなイヤミスが盛りだくさん。
    短編集なので、通勤通学にいかがでしょう!と言いたいところですが、1日のスタートにこの世界観に浸ればどんよりすること請け合い。
    「おはよう!」と声をかけてくれた友人や同僚に引き攣った笑顔を見せることになるやもしれません。

    11話もあるのに、読後に各目次を振り返るとどれもストーリーをしっかり思い出せるインパクトある短編集になっていると思います。

    個人的には
    「サクラチル」
    「消された15番」
    「尊厳、死」
    が面白かったです。

    人の心はその人にしか分からない。そこにどんな深い闇が潜んでいるのかは、実は本人にだって分からないから怖いのです。

    今年の4冊目

  •  俺はハッピーエンドが好きじゃない。後味が悪くて嫌な余韻が残る話が好きだ。そんな俺のためにあるような短編集だった。

    『おねえちゃん』
     ほぼ女子高生(理奈)のマシンガントーク台詞だけで構成されてるのが面白い。ト書きと理奈以外の登場人物の台詞は最小限。近所のお喋りオバチャン顔負けの息継ぎなしトーク炸裂ともだちに居たらウザイタイプだわ笑
     ドナーの為に子作りの発想はなかった。実際にありそうでリアリティーある。適合確立UPなら1つの方法としてアリかも。でも、生産された子供が成長して事実を知った時、かなりショックで立ち直れないだろうなぁ。

    『サクラチル』
     酒と学歴で崩壊する家族の話。酒で堕落したニート父、東大目指す40年浪人生の息子、身を粉にして働く母親。うーん、マトモなのが母しかないね。男運なさすぎるお母さんが不憫でならない
    ...最後ぶっ殺しちゃうのも無理もない。
     50歳になるまで大学落ち続けたのは置いといて、父を反面教師にして東大を目指す息子の熱意だけは素晴らしい。何十年も落ちて諦めないのはさすがにアホだけど。いい大学を出て安定した就職をする、ダメ親父になりたくないという想いが強かったんだろうな。俺も母を泣かせるダメ親父の元で育ったから、父親のような人だけにはなりたくない、そう思いながら大人になった。

    『天国の兄に一筆啓上』
     3分くらいで読める超短編。短編集の箸休め的存在かな。亡くなった兄貴宛ての手紙形式の話。感動系の話かと思いきや、まあハッピーエンドな訳ないよね。
     完璧なアリバイで兄を殺し、15年の時効を成立させた弟さん天才すぎ。密室の偽装も隙なかったみたいだし素人の業とは思えん。探偵小説の犯人だったら最強だっただろうな。

    『消された15番』
     息子(恵太)の甲子園中継を邪魔されたから、連続殺人犯(中垣晋)を殺そうとする母(紀美恵)。動機が面白い。進展も無いくせに同じことを繰り返すニュースって鬱陶しいもんね。殺人未遂で終わったから良いものの、もし成功してたらかなり後味悪くなっただろうな。そもそも、紀美江が仕事を断って甲子園に行ってたら全て丸く収まってたのに。息子の晴れ舞台の日なんだから仕事なんて断ろうぜ。
     恵太が会いにこなくなった理由が分からない。甲子園に来なかったから、殺人未遂の母親に失望したから、はたまた自殺してるのか、など理由はいくつか考えられる。親子関係は良好だったはずだから、ぴったり会いに来なくなるのは不自然だなー。個人的には、もうこの世にいない説だと思う。
     
    『死面』
     私が実は死んでましたオチが面白い。幸子のデスマスクのおかげで真犯人の富雄を暴けた訳だから、バッドエンドでもあるけどハッピーエンドでもある。
     デスマスクに義眼を入れた祖父母に狂気を感じた。ただでさえ不気味なのに目までギョロギロしてたら怖すぎるっしょ。肝試しでそのデスマスクを使うなんてなかなかの勇気だ。俺じゃビビって手に取れないね。
     
    『防疫』
     度を超えた教育ママの話。行き過ぎたしつけは虐待と紙一重だと思った。教育熱心なママさんよく居るけど、それって自分を投影してるだけだよね。アレしなさいコレしなさい命令ばかりで、子供の気持ちは考えてなさそう。その点ウチの両親は、俺に勉強やら進路やらを押し付けてこなかったので、窮屈なく伸び伸びと育つことが出来たので良かった。
     真智子の教育方針は理解できない。しかし、人は生まれた時から社会人、という考え方は納得できた。社会人に子供も大人も関係ないと思うから。働いてからが社会人なんて誰が決めたんだろう。社会人という言葉、あまり好きじゃない。
     自分の子に殺される前に殺す。妊娠したお腹の子をあっさりと堕ろしちゃう由佳里が怖い。こんな彼女前にしたら逃げちゃうね。何も知らずに由香里にプロポーズした恋人はさぞ後悔してるだろう。
     
    『玉川上死』
     イジメられっ子の復讐劇。冒頭はひたすら川に浮かぶ物体の描写が続いてシュール。死体じゃなくて生きてる高校生だったのビックリ。コメディタッチな導入からいっぺん、殺人事件が起こり操作パートに突入する。
     茂野と沢井のビデオシーンで、秋山がイジメられてるんじゃないかと思った。わざと仲良く見せるのは、イジメられっ子特有のような気がしたから。最近のいじめはパッと見じゃ見抜けないかもね。秋山がイジメられてるのを利用して、茂野たちに復讐するのは痛快。

    『殺人休暇』
     イケメン高身長&金持ちなのにストーカーしちゃう修司が謎。性格さえ良ければモテモテだっただろうに。モノに釣られた理恵も悪いと思う。キリのいいところでバッサリ切ってれば、ズルズル関係続くこともなかろうに。
     ストーカーの撃退方法が面白い。死んだと見せかけて自殺を誘導するのは良いアイデア。最後の敏江の一言が怖い。修司は本当に死んだのか気になる所。彼の真面目っぷりからすると死んだとは思うけど...これで生きてたら怖い。

    『永遠の契り』
     童貞っぽい男×美人。ラブコメが最後のニュースで崩壊。アツアツの2人が本当に熱々になっちゃって可哀想に。女とヤる時は火元に用心せねば...。
     ハヤサカにがっつくキスはキモかったけど、ヤッた後に裸で正座して謝るミツル笑った。ミツルとハヤサカの今後の展開が見てみたかったなー。

    『In the lap of the mother』
     子連れのパチカス母が子供を死なせる話。パチンコ全く興味ないから、子供連れてまで夢中になる理由が分からなかった。子供放置して6時間もぶっ通しってヤバイだろ。

    『尊厳、死』
     最後の1行のどんでん返しに騙された。ホームレス=男性のイメージが強かったから。だとすると中学生たちは女性に暴行したことになるしヒドイな。
     フジエダのおせっかいもウザかった。一見善人に思えるフジエダよりも、あからさまに嫌悪感むき出しの中学生の方がまだマシかも。

  • 殺人事件の動機だったり、経緯なりを、当事者が起こるべくして起こったことで、当たり前みたいな論調で淡々と語る系の短編集。理由が、ナンセンスだったり、えっ、そこなん?みたいに、どこか予想をずらされるポイントがあって、倫理的には酷い話だけど、どこかコミカル。質のよいブラックユーモアだな。

  • 物語をどこで終わらせるかで、それがハッピーエンドなのかバッドエンドなのかが決まると思う。
    この本は、一番悪いタイミングで終わらせた話の集まりだ。

    個人的には「死面」が好きだ。ホラーのような不気味さがあり、ミステリーの要素もあり、最後までゾクっとさせるものがある。死面のビジュアルが色鮮やかに脳裏に浮かぶのも恐ろしい。
    どうしてもこういう本、特に短編集は、最後ばかりが気になってしまって、途中を読み急ぐ傾向がわたしにはあるようだ。あっという間に読んでしまってこれという感想はないが、いくつかの話は本当に面白かった。

  • タイトルの通りの作品で、救いが無く読み終わった後もスッキリはしませんでしたが楽しく読めました。最後の話の叙述トリックは、この作家の別な作品を思い出しました。

  • 悲しいラストを迎える11の短編集

    おねえちゃん
    真相を知ったときを考えると‥
    残酷すぎるな

    消された15番
    愛情の深さゆえとはいえ逆恨みだよな
    真相を知ったから近寄らなかったなかな

    死面
    最後に分かる真相
    出来心の代償は大きかったな

    防疫
    影響されすぎちゃったんだな

    玉川上死
    父親の想像はあってるんだろうな
    単なる被害者とは見られなくなるよな

    In the lap of the mother
    一瞬にいただんだから余計酷い

    尊厳、死
    一緒にいられなかった理由でもあったんだな

  • 残念ながら推理という点においては期待ない方が良い。大体が先の読めるものだから。
    とはいえ、ただのアンハッピーエンド集ではなく、物語のあちこちに世の社会問題を取り入れているところは良かった。
    それでも、星3つ。うーん、イマイチ。

  • 「どんでん返し おすすめ」とかで検索するとヒットする作品で、前から気になっていたので購入。

    「そうきたか!」と唸ってしまうようなどんでん返し、かといえばそうじゃなかった。ラストの数行でこちらの予想をある程度裏切ってくれるのだけど、自分の期待値は越えていなかったかな。

    とはいえ、一定以上のクオリティは間違いなくあると思うので、買って失敗ということにはならないとはず。

    可もなく不可もなくということで☆3つ。

  • かっこいいタイトルだなぁ〜と思って読んでみたら、ハッピーエンドの話無いじゃん?!全部、トラウマになりそうなくらいなバッドエンド!!
    特に以下三作がとても怖かった、、
    ・サクラチル
    ・防疫
    ・殺人休暇
    殺人休暇は、名案だし、ハッピーエンドじゃん?って思ったのに、相手がもしかしたら自分と同じく生きてるかもしれないっていう一文で、一気にバッドエンドになってしまった
    登場人物がおおかたサイコパスだったから恐ろしい
    でも先が気になる小説

  • パッピーエンドが好きじゃないので好感。
    ただ、ムリにバッドエンドにしてると感じる話もあり。

著者プロフィール

1988年『長い家の殺人』でデビュー。2004年『葉桜の季節に君を想うということ』で第57回推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞をダブル受賞。2010年『密室殺人ゲーム2.0』で第10回本格ミステリ大賞をふたたび受賞。

「2022年 『首切り島の一夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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