天地明察

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.22
  • (1913)
  • (1576)
  • (676)
  • (93)
  • (35)
本棚登録 : 10409
感想 : 1856
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740135

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 以前、「光圀伝」の読了を断念した身としては、同じ江戸時代の物語(もう戦国ではない)に身構えたものだが、まったくの杞憂だった。物語は改暦がテーマとなっている。改暦は天の動きを解明して、暦という人の作った理に落とし込む行為であり、暦は権威、権力と結びつく宿命にあるわけだけど(エジプト、ローマを見よ)、けっして難しい読み物ではない。もちろんそんな側面もありつつ、主人公の渋川春海の青春物語として成り立っていて、恐ろしく軽やかで、爽やかで、読んでいて心地良い。ニコニコしながら読んでると、突如悔しさや悲しさや怒りが押し寄せてきて、その後また爽やかな心地が訪れる。さらに、いつのまにやら明治維新の構図がわかったり、江戸幕府が安定した統治を行えた構図がわかったりもするお得さだ。とりあえず読んで、コロナ疲れを癒していただきたい。

  • 改暦と言う、今まで考えてもいなかった事が、想像を絶するような歴史の積み上げと計算によって生み出されたことがわかった。主人公である渋川春海の描き方が非常に良い。囲碁や算術と言った、ともすれば頑固や真面目なイメージから全く違う人物像であり、失敗しながらも周囲の人びとの暖かい支援を受けて達成して行く姿に感銘を受けた。遅まきながら、映画も見て見たくなった。

  • 現代人もこういう風に生きられないはずがない。
    同じ日本人なのだから。
    ー養老孟司氏

  • 良かった!最近読んだ本の中で一番良かった!!
    日経新聞の夕刊で紹介されていて手にとりました。2010年本屋大賞1位。


    ときは江戸、第4代将軍家綱の時代。
    大名など相手に囲碁を打つ(指導をする)お家柄に生まれた渋川晴海。
    あるとき幕府から受けたお役目を果たすうち、
    800年続いた暦に微妙なズレがあることを確信する。
    算術をはじめあらゆる学問を駆使し、多くの協力者と共に改暦を目指して奮闘するお話。


    いやぁ…時代モノは苦手ですが、これはすんなり受け入れられた!
    とっても素晴らしかったです。
    恥ずかしながら渋川晴海という名前を初めて知りました。

    暦を変えるなんて、そんな大それた事を江戸時代に試みた人々を尊敬します。
    「天地明察」、おすすめです。

  • 「暦」はこうして編纂されたのか。 読みやすく、人情話を交えて、言葉遣いも現代的、新しい世界を見たような一冊だった。


    将軍や大名に碁を指南する名家に生まれた渋川晴海は、譜面にある碁を打つことに飽いていた。
    彼は、奉納の絵馬の中に算額というものがあるのを知る。

    そこで、算術と衝撃的な出会いをする、掲げられた算額の問題にてんでに答えを書き込んであるのだが、中でも「関」という人物が即答して、出題者は「明察」と書いてある。彼は問題と回答を見て心身が震えた。

    こうして晴海は算術と深く関わることになる。碁の相手は、江戸の家老であり老中であり、時には将軍の御前での展覧試合だった。

    「暦」編纂の下地になる、北極星を目標にして全国の地を歩く、天文観測をするメンバーに選ばれる。

    そして、当時使われていた「暦」が実情に合っていない、多少のずれがあることを確認する。
    800年前に制定された「暦」は使っている間に一年のわずかなずれが重なって、結局は大きく二日の誤差を生んでいた。
    それは、「暦」のずれが農業に関わることで有り、日食、月食が予想とずれることでもあった。

    彼は、不動の北極星の角度から得意の算術で、各地の緯度と経度を測定する。

    それを元に作り出した「暦」は自信作で公にも賞賛された。しかしまだ誤差が生じた。
    なぜか、そして辛苦の末に、ついに基本になっているのが、中国の「暦」であることに気づく。
    中国との距離と時間の差を埋めるべく彼は新しい「暦」大和の国の「暦」の編纂を始める。


    ストーリーのあらましをメモしたが、彼とともに「暦」編纂に加わった人々との交わりは爽やかで熱く胸を打たれる。
    難しい算術や天文観察から割りだされる各地の位置計算などはさらりと流され読みやすくなっている。
    和算の天才「関孝和」の話も、まさに天才とはこういうものだろう、一筋に打ち込む才能が、文化を深め、大衆を導いた様子が感動的だった。

    若いころ、小学生と「旅人算」や「和差算」「鶴亀算」などを解いたことがある。
    数学は苦手で特に幾何は悪夢だった。今でも穴の開いた二つの桶に水を入れる計算は苦手だ。ただ言葉の意味がわかる分大人になったら問題の意味だけは分かったw。
    小学生向けだったが、即答できないで、こっそり代数で解き、途中でその意味を考えたこともある。
    小学生達との受験の勉学は厳しかったが喜々として解いていた姿が今も思い出される。いつ遊ぶのかと公立育ちは内心首をひねったが。晴海のような好奇心は今は大人になって全国に、何人かは海外に散っている。そんな時代もあった。

    この時代に、こんな難しい言葉のものを解いたのだろうか、読むのさえ難儀するものを、と舌を巻いた。
    インド人もびっくりでしょう (๑・̑◡・̑๑)ワ〜!

  • 岡田准一・宮崎あおい主演の映画も記憶に新しいが、珍しく映像化ありきではなく本屋大賞だからという理由で買った1冊。

    天体の測量がテーマだが、江戸時代という泰平の世にそのような偉業に挑んだ日本人がいたと知るだけで大変誇らしくなる。

    少し展開はさささっと進む感もあるが、歴史モノとしての読みにくさはなく、冲方丁の文体のリーダビリティの高さが感じられる。

    この本が面白かったので『光圀伝』も読もうとしていた気がするが、文庫化までしたのに未だ手つかず。昔も今も、思考と実行の間には大きな溝が横たわっているらしい。

  • 江戸時代、改暦をめぐるお話。慣れないテーマで難しく感じたが、後半はこの決着がどうやってつくのか引き込まれた。これが史実だったことは知らなかった。日本史、文化史に興味がある人にはオススメ。意外と一気に読めます。映画は秋公開。どうしようかな

  • 歴史に疎く、「大奥」や「龍馬伝」のドラマを見て、ようやく歴史に興味が湧いたくらいの知識の私でもスラスラ読めた時代小説。

    もちろん渋川春海という人物がいたこと、算術が流行っていたこと、囲碁と幕府の関係などは知らなかったので、まるで未知の世界に足を踏み入れたようだった。(まぁ、江戸時代に生きたわけでもないから知っていても既知とは言い難い。)

    算術から囲碁、天文学とめくるめく魅惑の知の世界を垣間みる。学ぶことが楽しくなるような渋川春海のひたむきさに、こんな偉人がいたのかと驚く。そして彼を囲む天才たち。特に保科正之の描写には、私まで平伏してしまいそうになった。清廉でありたいと思った。本当にこのような人々がいたのか。先人をみて、先の我が世を想う。歴史を知る事がまた楽しくなった。

    小説から歴史を学ぶことがこんなに面白いとは。
    味気ない教科書に色をさしてくれる時代小説の1つなのではないでしょうか。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「清廉でありたいと思った。」
      私も「天地明察」を読むまで全然知らなかった人が一杯出てきたので、落ち着いたら読んでみようと思って検索しましたの...
      「清廉でありたいと思った。」
      私も「天地明察」を読むまで全然知らなかった人が一杯出てきたので、落ち着いたら読んでみようと思って検索しましたのが、、、
      中村彰彦「名君の碑―保科正之の生涯」文春文庫
      面白いかなぁ?
      2012/08/01
    • Manabさん
      保科正之の生涯、気になりますね!私も関連書読みたくなりました!
      保科正之の生涯、気になりますね!私も関連書読みたくなりました!
      2012/08/11
  • 尊敬できるライバルが居て、敬い敬われ、研鑽を積む。
    学びとは本来こうであって欲しいと願う。
    学びが、お役に繋がり、刺激のある仲間達と成し遂げる達成感たるや想像に余る。
    人として学ぶ事の多い登場人物は、みんな魅力的で、ビジネス書となりそうな位得るものも多い。
    今の世で何をしたら、来世、関孝和になれるだろうかと、安易に想像する時間も、こんなふうにドラマティックに語り継がれる人生が送れたらと、妄想にふける時間も、読んでこその愉しみ。

  • 本題の改暦にとりかかるまでが長いけど、読み終わって振り返ればもう少しそこに至るまでにどれも必要なエピソードか、と思わされる。ただそれぞれをもう少しコンパクトにしてほしかった気もする…。
    最近よく実在の人物にフィクションを交えた一代記が好きで読むことが多いんだけど、これもそうで、今まで全く知らなかった渋川春海の偉業を知ることができ、細かいところはフィクションだったとしてもこの人の足跡を損なうことはない。何より今の暦に至るまで、昔は太陰暦だった、としか思っておらず、このような経緯があったのだと知れただけでも大きな収穫である。

    あとは江戸では算学が盛んだった、というのも驚きで、主人公が初めに訪れる金王八幡宮にも行きたくなった(算術の絵馬は解けなさそうだが)。

    そして、主人公以外の人物もとても魅力的。一緒に観測をする建部、伊藤の2人は可愛らしさのある、好奇心の塊の少年のままのような老人だし、保科正之ってなんとなく聞いたことはあるけど、こんなに凄い人だったんだ、と興味をそそられた。他の人物も皆それぞれほんとに魅力的。

    ただ映画は岡田くんか…なんかイメージが違ってあんまり見る気にならないなあ。

全1856件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

冲方丁の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
冲方 丁
村上 春樹
東野 圭吾
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
貴志 祐介
京極 夏彦
和田 竜
村上 春樹
綾辻 行人
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×