オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061490970

感想・レビュー・書評

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  • Yahoo!NEWSのアプリの責任者から「この本、おもしろいっすよ」と薦められたので読んでみた。確かにオスマントルコが第一次世界大戦まであったのは現代史で習ったような気がするけど、それがどのようにして興り、どのようにして滅んだのか、更に言えばどうして長期間、イスラム世界を統治することができたのかとか、ほとんど知らなかったので、読んでみて納得するところもありとても勉強になる本だった。

    オスマントルコは、十字軍とイスラム軍がしのぎを削るアナトリア(いまのトルコの一部)の戦士集団のひとつであったオスマン・ベイが起こした国で、ななんと13世紀末に成立したらしい。つまり、オスマントルコは1300年代~1900年代まで存在した超・長寿の帝国であった。そして独自の直轄軍と自慢の大砲技術によって、長期間、ヨーロッパに対して優位でありつづけた。(その前にはモンゴル帝国の脅威に晒され続けていたことを考えると、西欧優位の世の中は本当にごく最近の歴史であることがよくわかる)

    超・長寿帝国の力の源泉は、上記の独自の常備軍と軍事技術、平民や奴隷階級を最高権力にまで上り詰めさせることのできる大胆な(ゆるい?)人材登用制度と緻密な官僚機構、そしてイスラム法に基づく厳格な法の執行ルールとスルタン兼務による宗教権威との一元化などにあるとこの本では指摘している。

    ローマ帝国もモンゴル帝国も長期の統治の途中でだいたいは分裂を起こすのだが、最後はグタグタになるなるもののオスマン帝国は最後まで1つをなしていたのは驚きに値する。そうしたことを更に勉強する上でも、また中性から近世の世界史に改めて興味を持つ上でもお手軽なキッカケとなる本だったように思う。

  • 西欧よりすごい、という主張が多かったように思います。巻末に参考文献がついてないですが参考文献ないんですか?

  • 2015年はトルコが一定の存在感を示した年だったと思うが、その行動原理があまりにも理解不能で、この国がどういう成立ちだったのか興味を持って購入した本。
    アジアの一部族だったトルコ人が、いかにして巨大なオスマン帝国を作り上げたかを実にわかりやすく教えてくれる良書。
    一点。なぜオスマン帝国が西欧諸国に屈したのかという点に関する記述が充実していないのが大変残念ではある。
    ・ビザンティオン → コンスタンティノープル → イスタンブル
    ・オスマン「帝国」の本質はゆるやかな統合・やわらかい専制。欧州に先行して中央集権的な支配組織・常備軍の設立を実現
    ・トルコ人の心のふるさとは内陸アジア・遊牧民族
    ・ムスリムのウィーン包囲は、西欧キリスト教世界におけるキリスト教の革新にも少なからぬ役割を果たした

  • 世界史が苦手である自分としてはぼんやりとしたイメージしかないオスマン帝国だが、イスラム世界の中で特に強大な力を持っていたことくらいは知っていた。それが何故そうなのか、そしてそれが何故崩壊したのか、それについて答えてくれる本だ。
    柔らかい専制という言葉は柔軟な人事システム、および宗教を軸にすることで民族の壁を越えようとするアイデンティティの包摂の仕組みの2つを指す。「イスラムの寛容」ということだ。
    ただし、無教養な僕は急いても仕方ない。キリスト教国に多様さがあるようにイスラム教国にも多様さがあるはずなのだ。そのことは心に留めなくてはいけないだろう。

  • 西欧人の見た「残虐な征服者」は、西欧をはるか にこえる先進国だった。羊飼いでも大臣になれる 開放的な社会。キリスト教世界で迫害されたユダ ヤ難民を受け入れた宗教的寛容性。多民族・多宗 教の超大国を支えた「柔らかい専制」の秘密に迫 る。

  • 一気に読めるオスマン帝国入門書。

    我々日本人は、学校教育の影響もあり、どうしても西欧の視点から歴史をみてしまいがちだが、本書のようなオスマン帝国を主語にした歴史の本を読むと、世界の多様性が実感できて面白い。

    オスマン帝国で興味深いのは、どうやって階層の固定化を防止し、能力主義に基づいた政治組織・軍事組織を作ってきたかどうか?

    そして、イスラムをベースにしながらも、民族・宗教や出自に関係なく、あらゆる住民が迫害されずに自由に住んでいられたのかどうか?

    西欧社会や中国社会とはまた違った文化・文明がここにはあり、日本人にとってなじみの薄い、イスラム社会においても大きな影響力を持ったオスマン帝国の実態を知ることができる。

  • 知っているようで知らないオスマン・トルコ。こういうちょっと曖昧なところを抑えると、世界史も地理も全体に対する理解度がぐっと増す。気がする。副題にあるように支配体制システムの話と思いきや、大半は国家元首と領土拡張の話。言うなればオスマン帝国の”物語”。新書の歴史モノは圧縮しすぎて逆にわかりづらくなってる事が多いが、本書は各元首の立ち位置から社会体制、侵略の歴史など要所をバランスよく抑えているため、珍しくわかりやすい。まぁ歴史がそんなに長くないだけあって、ハプスブルク家やサウジアラビアみたいに血脈同名入り乱れたりしてないからかもしれないが…。
    なぜオスマン帝国が栄えたかに関して答えることは難しいが、どのようにしてオスマン帝国が栄えていったのかがわかる一冊。

  • オスマン帝国の歴史やシステムなどについて、分かり易く、てっとり早く知ることが出来る。
    ただ、中途半端感が否めない。「えっ?ここで終わり?」と思ってしまった。

  • オスマントルコに限らず、アラブやトルコの歴史上にも小説・映画のテーマにすれば面白くなりそうな人物や事件が多そうなことに気付く。欧米社会のアンチテーゼではなく、純粋な歴史・文化の学びの対象として、またはエンターテイメントの対象としてこれら地域にもっと目を向けてもいいのではないか。

  • 11/01/08 オスマン帝国史を概観できる良書。

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著者プロフィール

1947年生
1982年 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、法学博士
東京大学東洋文化研究所教授などを経て、
現 在 東京大学名誉教授

著書:
『オスマン帝国――イスラム世界の「柔らかい専制」』(講談社現代新書、1992年)
『オスマン帝国の権力とエリート』(東京大学出版会、1993年)
『オスマン帝国とイスラム世界』(東京大学出版会、1997年)
『世界の食文化(9) トルコ』(農村漁村文化協会、2003年)
『ナショナリズムとイスラム的共存』(千倉書房、2007年)
『文字と組織の世界史』(山川出版社、2018年)
『オスマン帝国の解体――文化世界と国民国家』(講談社学術文庫、2018年)
『文字世界で読む文明論――比較人類史七つの視点』(講談社現代新書、2020年)
『食はイスタンブルにあり――君府名物考』(講談社学術文庫、2020年)
『帝国の崩壊――歴史上の超大国はなぜ滅びたか』(編著、山川出版社、2022年)他

「2023年 『オスマン帝国の世界秩序と外交』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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