ノスタルジー1972

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062202961

作品紹介・あらすじ

1972。何かが終わり、すべてが始まった年。豪華執筆陣がノスタルジーとともに今に繋がる日本を描き出すクロニクルアンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄返還、上野動物園のパンダ、札幌オリンピック、日航機ハイジャック…1972年の様々な出来事を基に紡がれたアンソロジー。
    1972年に生まれたので、これは何としても読まなければ!と意気込み手に取った。夢中で読み終えたが、予想以上のずっしり感であった。自分が生を受けた年は、こんな時代だったのかと今更ながら深く理解することが出来た気がする。思った以上に「戦後」の影が色濃いが、同時に「今」に向けた新しい始まりのワクワク感もあり。いくつもの喜怒哀楽が、どの作品も絶妙なグラデーションで描かれている。当時の空気をリアルに肌で感じたような気がした。
    6篇どれも本当に素晴らしいが、一番印象に残ったのは重松清の「あの年の秋」かな。『恍惚の人』『カンカン・ランラン』『横井昭一さん、小野田寛郎さん』をある一家の出来事に絡めて描き、ものすごく切なくなった。交錯する過去と現在の描写が巧くて、さすがだな重松さん。
    このアンソロジーを編んでくれた編集者の方に感謝です。改めて、自分の生まれた1972年という年についてもっと知りたくなったから。

  • 『恥ずかしながら・・・』覚えている。

  • <NOSTALGIE 1972>
      
    イラストレーション/千海博美
    ブックデザイン/鈴木成一デザイン室

  • 6人の作家さんの短編集。

    1番好きなのは、早見和真さんの「永遠!チェンジ
    ・ザ・ワールド」沖縄が舞台の青春。

    重松清さんの「あの年の秋」は、家族っていいなあと思う。

  • 中島京子さんが読みたくて手に取った一冊。
    『川端康成が死んだ日』さすがによかった。

    妙に心に残ったのが朝倉かすみさんの『空中楼閣』
    札幌五輪の笠谷選手を応援しつつ、昭和っぽさ満載の世界が
    なんとも言えない。
    そして重松清氏の『あの年の秋』
    認知症と言う言葉がない時代、ベストセラーとなった「恍惚の人」を私も読んだ記憶があるが、こちらも昭和らしい家族のありようが何とも心にしみて、思わず最後はな涙してしまった。

  • 1話目の中島さんの話しは実話?と、思ったけど、そうでもなさそう。
    浅倉かすみさんのが面白かった。
    昭和。ちょっとタイムスリップして、楽しみたい。

  • パンダが初めて日本に来たり、沖縄が返還されたり。私はその時代にはまだ産まれていませんが、それぞれの情景が浮かび上がってくるようで面白かった。昭和はドラマチックですね。

  • 今とは違った空気に満たされていたあの頃。嫌でも切れない人の縁。濃密な家族関係。わたしたちの世代にはよくわかる。そんな時代を知らない人ばかりになったら、この世はどうだろか?

  •  私が理想とする小説や映画は、『ナミヤ雑貨店の奇跡』や『三丁目の夕日』的な、レトロ風味でいい人ばかり出てきて残酷な描写がなくハッピーエンドで終わるというもの。
     このパターンの物語を色々と探しているところです。
     本書はタイトルからしてまさにそれにピッタリそうだと思って気楽に読み始めたのですが、意外にもヘヴィーで軽々しく読めない深刻な短編集でした。

     
    中島京子『川端康成が死んだ日』
     幼い日の哀しい家族生活の描写とその44年後。
     ノスタルジーというより、重くて悲しくなってきます。

     
    早見和真『永遠!チェンジ・ザ・ワールド』
     沖縄復帰運動と現代の国会前デモと。
     いくら心ある若者が行動しても、あの頃から何も変わっていないし、むしろ悪くなっているのではと絶望感を抱かせる作品。

     
    朝倉かすみ『空中楼閣』
     買ったばかりのカラーテレビで札幌オリンピックを見る幸せな小市民家族と苦学生と。
     当時はこのような苦学生は沢山いたのでしょうね。
     やがて日本は経済大国となり、苦学生も過去の存在となった……と思っていたら、安倍政権による悪政によって経済格差は広まり、1%が99%を支配する世界となり、苦学生も復活してきているのだった。

      
    堂場瞬一『あるタブー』
     ミステリーというかサスペンスというか、読んでいる時は一番次の展開が気になって夢中になって読めた作品。
     読み終わってみると結局意味が分からないというか。
     作者の経験による新聞記者と警察の関係の描写が勉強になったけど、再読してもう一度よく味わいたい度は一番低い作品。

      
    重松清『あの年の秋』
     短い短編ながら、ある家族の三代に渡る大河ドラマを感じさせる名作。
     1972年の秋が中心に描かれていますが、40年後、あの人がああなっているという時間の経過。歴史というか、【稗史】ですね。

      
     1972年の時点では、博史はまだ小学生ですが、父親も祖母も戦争の経験が生々しく残っていて、戦争を身近に感じています。
     そういった方々がいたからこそ日本は平和的に経済大国になっていったのでしょう。
     そして今、戦争を体験した方々は少なくなり、戦争を知らない・民主主義と平和憲法の有り難さを実感できない馬鹿どもが平和憲法を改悪して軍国主義を復活させようとしているのです。

     
    皆川博子『新宿薔薇戦争』
     作者の回想に伴い、固有名詞が次々と登場。
     最初と最後に自分が登場しない友人達の描写を入れたのは作家ゆえの演出か。

     決して軽々しく読めませんが、名作揃いの短編集でした。
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20180529/p1

  • 懐かしい記憶が甦るような短編が6つ.堂場瞬一「あるタブー」が良かった.西山事件(沖縄密約文書)を背景にした,新聞記者の根岸俊雄の話だが,彼は警察官の三輪葉子と付き合っている.記事の出し方を逡巡する根岸の思いがうまく表現されていた.モハメドアリ,小野田寛郎が出てきたり,あさま山荘事件も出てくる.72年,色々なことがあったことを思い出した.

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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