- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062205856
作品紹介・あらすじ
葉室麟が、門井慶喜が、土橋章宏が「新選組」を描く! 累計9万部を突破し、ますます進化を続ける「決戦!」シリーズ。戦国時代の著名な戦場を舞台にすることが多かった「決戦!」シリーズだが、今回の舞台は初の幕末。「新選組」の活躍と悲哀を、当代きっての人気作家が描き出す。
感想・レビュー・書評
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鬼火 葉室麟著 担当:沖田総司
子供の頃のある事件がきっかけで無表情になってしまった総司。彼は入門した試衛館の道場主である近藤周介に『笑え』と命ぜらえる。姉から総司が受けたことを知った周介が『笑う』ことで心の傷を癒すと考えたための策。
だが、それは却って笑顔という仮面が総司の顔に能面のように張り付く結果となる。
そんな彼らが上洛を果たし、総司は芹沢鴨と出会い、心惹かれる。
悪名ばかりが有名になってきた芹沢の元へ、かつての仲間が水戸へ戻ってはくれまいかとやってくる。
彼らと共に水戸へ帰り、天狗党へ戻るという芹沢に「行かないでください」と懇願する沖田が新鮮でした。こういう解釈の仕方もあるのねと。
ラストシーンはおなじみの芹沢暗殺シーンで終わるのですが、その時に芹沢が沖田に告げる言葉が印象的で、私はとても好きです。
あと、総司へ土方さんから芹沢鴨暗殺のことを告げられた時、芹沢が水戸で捕まって死罪を待つときに読んだ辞世の句を引っ張ってくるところは葉室さんならではという感じです。
ここにはおそらく多くの人が想像する好青年の沖田総司はいません。心に鬱屈した闇を抱え込んで、能面のような笑みを浮かべる一人の悩める青年がいる。こんな沖田総司が居てもいいと思うのです。沖田も謎が多い人物ですしね。
「足りぬ月」 小松エメル著 担当:藤堂平助
新選組のファンの方はご存知、藤堂平助は津藩主の御落胤説があることはご存知でしょう。
そこから始まるのが、この物語です。ただ一度御手がついて平助を身ごもったと告げて彼を育ててきた母。その母のいない時に酒の匂いをさせて「お前は俺の子だよ」と告げた男。その男を殺してしまったからと、津藩へ形見の懐刀を持たせて屋敷へ送り出した母親。
そこから平助の人生が始まるのですが、下屋敷の老夫婦の養子になり、学問や剣術に明け暮れる日々。幸福な日々であることはわかっているが、元服を済ませた平助はそこから出奔する。
彼が求め続けるのは、常に頭の良い男だったというのが、切ない。
山南にそれを見つけ、そして伊東申子太郎へそれを求め続けて、欠けていない月のような幻影を求める藤堂の姿はどこか滑稽で、それでいて悲しい。
山南が切腹して、伊東は分派して、彼の人生は油小路の悲劇へ向かう。
この物語で一番いいなと思ったのは試衛館と試衛館派といわれる人々をここまで切り離して描いているところ。そこが凄い。
現在、近藤と折り合いが本当に悪かった永倉新八を描いている小松さん、作品楽しみにしてます(*´▽`*) -
新撰組をこのシリーズで扱うなら、是非とも池田屋に絞って欲しかった…。うーん、残念。
とか言いつつ、心が躍ってしまうのはどうしようもない。
結局、好きなんだよねえ新撰組。
永倉、斉藤の二人の話が好き。
明治の世に生き残ったこの二人。だからこそ人間性とドラマに深みが出る。そして、がっちり男臭いのがいい。やはり、それこそ新撰組らしい。
反対に早逝した芹沢、藤堂、山南、沖田には、それこそ無念のドラマが生まれる。そして近藤と土方。トップにはトップの物語がある。こうした様々な人が混ざり合う、群像劇としては最高の舞台なのだなあ。
小松エメルは気になっていた作家。初。
思っていたより内面にぐっと迫る。
違う作品も読んでみたいと思った。 -
面白かったです!決戦シリーズがついに幕末まで、新選組それぞれの話とても面白かったです。決戦!新選組のTOP3は①葉室麟さんの「鬼火」、②天野純希さんの「死にぞこないの剣」、③木下昌輝さんの「慈母のごとく」でした。
鬼火・沖田総司
戦いを避ける・近藤勇
足りぬ月・藤堂平助
決死剣・永倉新八
死にぞこないの剣・斎藤一
慈母のごとく・土方歳三 でした。
ちなみにぼくが好きな新選組隊士TOP3は
1、沖田総司
2、山南敬助
3、斎藤一 です。
決戦!新選組とても面白かったです。【小5】 -
新選組に起きた出来事を複数の作者がリレー形式で、主要人物の目線から描いた短編集。
史実から知られる隊士の性格も踏まえつつ、創作もあることを踏まえながら、本当にこんな会話していたのかもしれないと想像しながら読むと尚楽しい。
個人的には沖田総司と芹沢鴨の話が好きだった。 -
複数の作家が、それぞれ異なった歴史上の人物を主人公に選び、ある歴史的な「決戦」をテーマに寄稿するというアンソロジーシリーズの『新選組』版だ。
多くの小説、漫画などに取り上げられる人気のテーマだけに、あまり歴史に詳しくない自分でも、今回登場する人物たちの多くの名前は知っていた。それぞれの末期や個性についてはよく知らないことも多かったので、一冊通して読むとなかなか興味深い。
物語は、沖田総司からはじまり、土方歳三で終わる。
このシリーズの他のテーマも読んだことがあるけれど、面白いのは、作家や登場人物を変えることで、見え方がガラリと変わること。
たとえば芹沢鴨、伊東甲子太郎、近藤勇の評価や人物像はそれぞれの短編によって全く異なる。
単純に善悪で切って捨てれるようなものではないからだろう。組織として紆余曲折、有為転変があり、それぞれの主義や主張がぶつかり合い、何が正しいのか等は人によっても時勢によっても変わる。
そもそもとして誰も正しさや正義など求めていないのではないかと思えてくる。
人気テーマだけに類型的に描かれてしまいそうな印象のある新選組だが、作者ごとによって個性の違いが際立ち、面白かった。 -
三国志の方どうだろうな
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人気作家の新選組アンソロジー。時系列に並んでいて読み進めやすい。それぞれの主人公の視点から見た新選組結成時から五稜郭まで。沖田と芹沢の話、会津での斎藤の話、北上する土方の話が特にグッときた。
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初めて読んだ決戦!シリーズ。新撰組(浪士組)結成時から函館戦争までを各作者によって沖田、近藤、藤堂、永倉、斎藤、土方それぞれの視点で物語が語られる。
どの物語も個性が光っていて面白かったが、私は特に戊辰戦争を描いた最後の3つ(永倉、斎藤、土方)の物語が特に好きだった。新撰組というと京都でのイメージが強いけれども、戊辰戦争こそ彼らの生きざまの真骨頂だと思う。
また永倉と斎藤の物語では、戊辰戦争後も生き残った彼らの姿が描かれていていたのもよかった。
そして「慈母のごとく」での仏の土方さんがとても魅力的だった!京都での鬼の副長が函館戦争では隊士達から母のように慕われていたという話は有名だが、なぜ仏の土方に変わったのかという流れが近藤の死と上手く絡めて語られていて面白かった。函館戦争時の土方は亡くなった近藤、沖田の性質を取り込んだような性格になったのだなと。
本作は複数作者によって書かれているため物語によってそれぞれの考え方が異なっていて混乱することがあったり、短編のために掘り下げきれていない場面が多々あるのが残念だが、新しい作者との出会いという意味でも決戦!シリーズは面白い企画だと思う。 -
この決戦シリーズはずっと読んでみたかった。それぞれの作家さんのお話が、独立しているようでつながっているようでもいて、結成から函館までが読める。
2017/11/18