国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062630863

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹の小説。
    複数の女性を通過して、成長していく物語なんだと思います。
    実際、世の中には人間的には未成熟でも社会的に成功している人って結構いるけれど、本作の主人公も、運を掴んで安定した生活を手に入れた、結構そのタイプ。

    多分これは10年前に読んだら、何も面白くなかったと思うのです。それは自分が世間知らずすぎたからで、
    でもあくまでフィクションと割り切って、出てくる女性(割とひどい扱いを受けている)もすべて創作と思えば、「ああ、こうやって人は自己を開示し、結婚という他者との生活に折り合いをつけられるようになるのかな」と思います。
    本人が最後に破滅するとこまで行かないとこを除けば、割と太宰っぽいかも。

  • ハードカバーの新刊が出てすぐ買ったが、またこの話かと嫌になってすぐ古本屋に売った。
    あれから20年以上経って、どんな小説だったっけとふと思い再購入。
    たしかにまたこの話かとは思ったが、こんなに痛切な小説だったのか…。自分が年をとって色々な経験をしたからこの小説が身にしみたんだろう。彼の作品中、最も悲しみを表した小説だと思う。

    ノルウェイの森同様、最後に「現実」を選択するが、そこに希望も喜びもあるわけではない。悲しみがあるだけだ。
    失ったものは失ったもの、失われたものは失われたものということを認めるのはとても難しい。
    夢はどれほどリアルでも夢でしかないということはあるときにはとても辛い。

    村上春樹特有の回りくどさは比較的薄く、一定のザクザクとしたリズムで話が進んでゆく。
    このリズムの保ち方は見事で、色々な要素が入ってきても全体を貫くトーンがまったくぶれない。一つの曲のような小説だ。

  • 2年ぶり2回目。

    気取ったフランス料理店の支配人がアメリカンエクスプレスカードを受け取るときの顔つきについて考えることとなった。

  • どうして、村上春樹の書く文章ってすごく自然にぬくぬくその世界に入り込ませてくれるんだろう。
    おもしろかった、時間が経ったらもう一度読みたい本。
    「僕」は良くないことをしてるけど悪人とは言えないかんじ、
    登場人物それぞれに「誠実さ」を感じた。
    わたしは、僕も有紀子も島本さんもいい加減な人ではなく、それぞれの誠実を確立しているように感じてよかった。誠実な人ばっかがいいけど、誠実な人ばかりいると世の中って複雑になりすぎて、みんな苦しくなるのかもとふと思った。好きじゃないけどいい加減な人もいないと、世の中上手く回らないのかもと思った。
    誠実なのはやっぱ好きだなと再確認させられた。
    ラストスパート部分は、車でトンネル通ってるペースで進んでわたしは好きだった。

  • 新しい自己になりたいと動き出す時、今現在の自己と動き出した自己には間隙が生じ、不安定性を生む。

  • 「ねぇ、」の多さが鼻に掛かるけど面白かった。
    分かりやすい言葉で、恋でも愛でもないどうしようもできない何かを描ききっていて痛快だった。

  • 主人公の不安定さを感じる小説だが、なにかぼんやりしていて、つかめないところがいい。

  • ▼トモダチであるはずの異性が、「自分のことを好きなのでは?」と感じたり、「自分はあのひとのことを好きなのでは?」と悩んだり。まして相手にはパートナーがいたりするとまた甘酸っぱい辛い。「相手と両思い?」とか感じると酸っぱい甘かったりして。体力と時間と愚かさと、「未経験さ」が揃って、若さのフォーカードの時期にそんなこんながあると、たまンないですよね。ところが大人になってからだと、修羅場になりかねません。そして、そんな修羅場のほうが、野次馬として、つまり観たり読んだりするには味わい深いようです。ヒトの不幸はテイストオブハニー。
    ▼松田優作さんと小林薫さんと藤谷美和子さんの映画「それから」(1985)が昔から好きで、森田芳光さんの映画の中でも、ちょっと別格だと思っています。松田優作さんも小林薫さんも、黙っていても良し。しゃべっても良し。藤谷美和子さんは、黙っているぶんには素晴らしい。それに、笠智衆さんも草笛光子さんも、圧巻の素敵さです。「三角関係映画」というジャンルでは、「突然炎のごとく」にも劣らない、世界に誇れる1本。原作の「それから」も、漱石でいちばん好きで読みやすい小説です。段取りで言ってしまえば、主人公の代助が、かつて親友だった男の妻と、不倫の恋愛に落ちていく、っていうだけの話なんですが。
    ▼「国境の南、太陽の西」村上春樹。講談社、1992年初出。2019年8月読了。
    ▼中学生の頃、多分1986年に村上春樹さんの小説を読み始めました。確か「風の歌を聴け」をなんとなく買って読んで、面白かったからそのまま順繰りに「ピンボール」「羊をめぐる冒険」「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と読んでしまって、新作を待っていると「ノルウェイの森」が発売になり。長い間うっかり火にかけたまま忘れていた油を敷いた中華鍋に一気に野菜と肉とを放り込んだときのような、ヒステリックなまでのブームが起こってしまいました。あれ、すごかったですね。
    ▼その後、村上春樹さんは、「ノルウェイの森」みたいな小説を渇望している世間に向けて意地悪をするが如くにいつも通りの村上節の「ダンス・ダンス・ダンス」を上梓、なんというか、サザンオールスターズのような存在には絶対にならないことを示した訳ですが(笑)、そのあたりで個人的には興味が移ったのか、村上春樹さんの小説を読まなくなりました。再び読み始めたのが40代から。ほぼ全部読みましたが、いくつか歯抜けになっていたひとつが、「国境の南、太陽の西」。
    ▼主人公はジャズ・バーを経営している中年男性で、奥さんがいて娘がふたりいて、順調。そもそも奥さんの父の経済援助で成功してきています。そんな主人公が、昔(かなり昔)の女友達と、不倫の恋にゆるやかーに、ゆるやかーに、どんぶらこと落ちていくのが描かれます。村上春樹版「それから」。そういう愉しみ方もできます。書いているほうはそんなつもりはゼロだと思いますが。最後は、かなり曖昧ですがなんとなく破滅しそうな感じです。それもちょっと「それから」っぽい。
    ▼細部はもう忘れていますし、いつも通り?難解と言えば難解だし、個人的には全然解釈しないでただ読むので、あまり内容は語れません(笑)。恐らく解釈を試みれば、メタファーとか幽霊とか象徴とか色の使い分けとか心理分析的なこととかが語れるのではと思います。なんだけど、言ってみればデニーロとストリープの「恋におちて」を見ているような単純なエンタメ感も十分にあります。あの映画は、極上。うまいっ!職人芸!
    ▼閑話休題。この本、面白いんですが、オモシロい一方で、独特のいつもの村上節というか、気障といえばキザ....悪意を持てば、かっこつけとも言えるような感じも満載ですね(笑)。この小説、嫌いなひとは嫌いだろうなあ・・・でも不愉快に思いながら読み通しちゃうんだろうなあ・・・。そのあたりの「語り口」って、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」とほぼ同じなんだと思います。
    ▼ネットでチラ見したんですが、解釈によっては、この主人公のその後が「ねじまき鳥クロニクル」になっていくそうです。それはそれで、「それから」っぽい。「門」「道草」が、「それから」の続編と考えることもできるので。
    ▼全然話は変わりますが、「それから」っていうタイトル、かなりズバ抜けて、かっこええなあ・・・と思います。「国境の南、太陽の西」のほうが、(タイトルだけで比べると)うーん、やっぱり・・・気障?・・・。村上春樹さんの書くモノが嫌いかとというと、僕はそんなことは無いどころが真逆で、ほんとうに大好きなんですけれど(笑)。漱石も好きなんで。

  • どうしても、僕のことが好きになれない。
    男の自分勝手だと思う。昔の恋人が自分のことを思い続けていてほしい(しかも自分だけを!)また、自分によってついた傷を未だに負っていてほしい。でも僕には帰るところがある。女はそんなに弱くないし、優しくない。バカじゃない。
    ナット キング コールの音楽だけが救いだった。
    2018.9.15


    過ぎ去ったらもう2度と戻ってこないもの。
    ストーリーはすっかり忘れていた。揺れ動く気持ちはわからないでもないが、今回は島本さんが好きになれない。。

    2023.10.6

  • 後半になっていくにつれて今までずっとリアルな話を展開していたと思っていたものが、ミステリアスな雰囲気に。
    島本さんは幻想だったのか。最後のイズミの描写はなんだったのか。一回読んだだけでは難しかった。

    最後に妻である有紀子は僕に対して「何かに追われているのはあなただけではないのよ。何かを捨てたり、何かを失ったりしているのはあなただけじゃないのよ。」と言い、そして僕は思う「そして、おそらく今度は僕が誰かのために幻想を紡ぎ出していかなくてはならないのだろう」と。

    人はみんな何かを失っていくけど時間は元に戻らず進み続ける。不確定な未来に向かって。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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