木製の王子 (講談社文庫 ま 32-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062738293

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な家系図をもつ一族。安城は実の親の手がかりを求めて彼らに接触する。と、殺人事件が起きる。
    動機はわかるが、ロジックについていけなかった。

  • 麻耶雄嵩にしては比較的、ペダンティックな感じは少ない感じ。だけども、登場人物のキャラの濃さというか、いやらしさは毎度のことか(笑)

    今回の時刻表ミステリー(笑)は、半端なさ過ぎて理解することをある意味諦めた。でもなんとなく読めてしまったのは最終的にそのしかけを上回ると、いうかなんというかのトリックがあったからだろうかね。

    それにしてもホワイダニットがいつもすごい感じで驚く。前時代的な背景がないとここまでの事件は起きないというお決まりなのかもしれないねぇ。

    あとタイトルの意味がよくわからないのだが、どういうことなんだろうか。

  • マジで入手困難。
    探した探した。
    やっと入手できて、嬉しくてついつい読んじゃったけど、せっかくメルカトル鮎シリーズ順番通り読んできたのに、『鴉』の方が先だったんだね…(持ってたのに!)
    でも本作品にはメル出てこなかったから無問題だった。
    ただし『翼ある闇』『夏と冬の奏鳴曲』『痾』を読んだの前提の書き方してるので、前三作は読んでた方がいい。
    私は読んでたけど、なにせ本作品を手に入れるのに時間がかかっちゃって、前作三作から間が空いてしまい、ディテールを忘れててちょっと悲しかった。

    時系列としては『翼ある闇』の前後のエピソードという設定である。
    本作品にはメル出てこないけど、読んでて「あぁ、このあたりでメル死ぬんだなぁ…」としんみりしてしまった。
    木更津&香月コンビが『翼ある闇』以来の再登場で嬉しい。
    やっぱり木更津&香月のコンビは好き。木更津は天才名探偵だけど、他のワトソン役と違って香月(ワトソン)は友人として敬意を払われてる。
    木更津がイイ人だからかもしれない。
    ても、天才なら犠牲者が増える前に解決してくれ。(笑)
    ていうか今鏡家の事件は、世間的には木更津の滅茶苦茶な推理が真実としてまかり通ってるみたいで、驚いてしまった。

    初期の麻耶さんの作品は、読者を置いていきかねない作風なんだよねぇ。その癖の強さ嫌いじゃないけど。
    結局、宗教がらみの話だった。
    信仰が動機と深く絡んでるので、およそ承服しかねるが、割り切るしかない。
    その上で、時間が逆行して系図が逆さまになって、なんて(こんなの分かるか!)、よく思い付くなぁこんなの。という感想が強い。
    晃佳が自分の父親(系図上)を「義父」と言ってるところがあって、麻耶さんは地の文で嘘つかないポリシーがあるので、この親子関係に何か秘密がありそうだってとこまでは推測できたんだけど。文字通り義父だったんだねぇ。

    ただ、ちょっと宗教のそら恐ろしいところが描写され切れてなかった気がした。
    聖家族を創造するには、対概念としての闇は不可欠なのかなぁ。家族が欲しかっただけなら、破滅の思想まで設定しなければ済んだんじゃないかなぁ。
    だって規禎は宗尚のホントの息子でしょ?名前の法則で那智家の方の系図になっちゃったけど。
    万が一再会出来たときにはちゃんと聖家族の方の系図に組み込めるような理論を構築すれば良かったのに。
    安城くんが錯乱現場から脱出できたのは良かったと思ったけど、結局彼は自分の両親について誤解したまま田舎に帰ってしまったんじゃなかろうか。
    まぁ、真実を知ったところで幸せではないか…。

    あと『夏と冬の奏鳴曲』以来の如月烏有が出てくるけど、最初から最後まで釈然としないまま流されて生きてる。
    可哀想に。烏有の記憶は果たして戻るのか。

  • 理想の家族なんてない
     読者を嘲笑うアリバイトリック、崩壊することで構築される結末が実に良い。例によって著者は答え合わせをしてくれない。「蛍」「夏と冬の奏鳴曲」はうまく咀嚼できなくて消化不良に終わったが、こちらは読み返したくなるようにできている。だが、もう1度読み返してみるとあらたな謎が・・・これは書評サイトの力も借りて補完。
     それでも、一番の謎は如月の存在。これで終わりなのだろうか。

  • 最初、厨二病の話かと思った。そしたらまさかの“そして誰もいなくなった”状態。
    あと、烏有さんしっかりして。

  • ここから読み始めても大筋の事件はわかると思いますが、今までの長編と繋がってはいるので出版順に読んだほうが確実に楽しめます。

    分刻みのアリバイ崩しは凄かったですけど(麻耶先生の話なら普通に崩すことに意味はないのでは…?)と言い訳半分ほとんど自分では考えないまま通りすぎてしまいました…。

    今回もすっきりする最後じゃなかったし烏有さんがなんか心配ですが、今までの長編に比べれば「うわぁぁぁ!!!」とはならない。あっさりしてるんだかもやっとしてるんだか…みたいな終わり方でした。

  • 意味深な描写が読み終えた後で一気に意味を持ちはじめて、読み込めば読み込むほど真相のさらにその先、物語の裏に潜む事実が現れてくる。狂気を淡々と描くのが麻耶さんは上手いと思うし、それが得体の知れない恐怖をより強くしていると思う。中盤完全に放置しておいての如月締めには少々困惑。

  • 久しぶりの麻耶初期作。
    この装飾過多な感じの文章が堪らない!
    この頃の麻耶ってミステリの中におセンチな群像劇も垣間見得て、読んでいて心地いいんですよね。
    本作を読むには『夏と冬の奏鳴曲』『痾』に連なる一連の騒動を把握しておいた方がいいと思います。とはいってもどちらも入手困難なのがアレですが…
    そして、本書を語る上で外せないのが分刻みの細かすぎるアリバイでしょう。
    私は自分で考えることを早々に放棄し、ただ流れを追うだけになってしまいました。
    アリバイ崩しの真相は逆説的なもので、ははぁと唸りはしましたが、驚いたというよりはなんとか理解したという状態でした(爆)
    この本の白眉は、真相が暴かれた後にその力を発揮する本書の構成です。
    このような事件のミステリを思いついたとして、どうしたらこういう構成を思いつくのか、麻耶の頭の中はどうなっているのでしょうか?
    世間的な評価はあまり高くないようですが、凝った構成が事件に無理なく組みされており、十分良作だと思います。

  • 「分刻みのアリバイ崩し」で有名な作品。この精緻なタイムテーブルを引いたのはひとえに◯◯のため…って、すごい逆説、すごい皮肉(笑) さすがマヤタン。
    ここまで非の打ち所のない本格ミステリの手法でやられれば、そりゃぐうの音も出ないというものでしょう。

    閉じられた家系とか、いわくありげなキャラクターの名付けとか、みんなが「よかれと思って…」やったことがことごとく裏目に出たりとか、うじうじしてる烏有さんとか、名探偵・木更津とか香月くんとか、そのあたりもいつものマヤタン。好き嫌いは分かれるでしょうが私は大好きですね。

    「こんな家あるか」とか「こんな奴いるか」とか「こんな真似不可能」とか、新本格の他の方たちにも増して、マヤタンには言ってはいけない。野暮の極致。
    21世紀のアンチ・ミステリの正統後継者に対しては、ただ愛を捧げることが許されるのみなのであります——カーテンフォール。

    2013/12/3再読

  • アリバイ崩しが思ったより作品の一部分でしかなかった。
    うゆーさんが今回から探偵として頑張って行くのかなと思ったらそうでもないし。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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