- Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062738293
感想・レビュー・書評
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理想の家族なんてない
読者を嘲笑うアリバイトリック、崩壊することで構築される結末が実に良い。例によって著者は答え合わせをしてくれない。「蛍」「夏と冬の奏鳴曲」はうまく咀嚼できなくて消化不良に終わったが、こちらは読み返したくなるようにできている。だが、もう1度読み返してみるとあらたな謎が・・・これは書評サイトの力も借りて補完。
それでも、一番の謎は如月の存在。これで終わりなのだろうか。 -
意味深な描写が読み終えた後で一気に意味を持ちはじめて、読み込めば読み込むほど真相のさらにその先、物語の裏に潜む事実が現れてくる。狂気を淡々と描くのが麻耶さんは上手いと思うし、それが得体の知れない恐怖をより強くしていると思う。中盤完全に放置しておいての如月締めには少々困惑。
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久しぶりの麻耶初期作。
この装飾過多な感じの文章が堪らない!
この頃の麻耶ってミステリの中におセンチな群像劇も垣間見得て、読んでいて心地いいんですよね。
本作を読むには『夏と冬の奏鳴曲』『痾』に連なる一連の騒動を把握しておいた方がいいと思います。とはいってもどちらも入手困難なのがアレですが…
そして、本書を語る上で外せないのが分刻みの細かすぎるアリバイでしょう。
私は自分で考えることを早々に放棄し、ただ流れを追うだけになってしまいました。
アリバイ崩しの真相は逆説的なもので、ははぁと唸りはしましたが、驚いたというよりはなんとか理解したという状態でした(爆)
この本の白眉は、真相が暴かれた後にその力を発揮する本書の構成です。
このような事件のミステリを思いついたとして、どうしたらこういう構成を思いつくのか、麻耶の頭の中はどうなっているのでしょうか?
世間的な評価はあまり高くないようですが、凝った構成が事件に無理なく組みされており、十分良作だと思います。 -
「分刻みのアリバイ崩し」で有名な作品。この精緻なタイムテーブルを引いたのはひとえに◯◯のため…って、すごい逆説、すごい皮肉(笑) さすがマヤタン。
ここまで非の打ち所のない本格ミステリの手法でやられれば、そりゃぐうの音も出ないというものでしょう。
閉じられた家系とか、いわくありげなキャラクターの名付けとか、みんなが「よかれと思って…」やったことがことごとく裏目に出たりとか、うじうじしてる烏有さんとか、名探偵・木更津とか香月くんとか、そのあたりもいつものマヤタン。好き嫌いは分かれるでしょうが私は大好きですね。
「こんな家あるか」とか「こんな奴いるか」とか「こんな真似不可能」とか、新本格の他の方たちにも増して、マヤタンには言ってはいけない。野暮の極致。
21世紀のアンチ・ミステリの正統後継者に対しては、ただ愛を捧げることが許されるのみなのであります——カーテンフォール。
2013/12/3再読