新装版 海と毒薬 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769259

感想・レビュー・書評

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  • 個々人の内なる価値判断基準、神の存在、または良心とも言われるものから行動をおこすこと。このアンチテーゼをひたすら描写したのだと思う。
    あくまで組織内部の人間関係や、異性関係やなどを前提とした行動とはどのようなものかを描写したのだと思う。
    なぜ日本が太平洋戦争を引き起こし、敗戦したのか、ということにも重ね合わせられているようだ。

  • あなたにとっての「良心」とはなにか。

    生体解剖がどれほどいけないことだったのか、私には分からない。
    ましてや戦時中で捕虜を生きたまま解剖するとは!という声が出版当時は聞こえてきそうだが、現代のわたしがこの本を読んだとしても、そのような感想は出てこなかった。
    現在でも病理解剖と言うのも行われているし。
    生きたまま行うのはうわ、っと思ったが麻酔はかけられていたし、描写であったようにどうせ捕虜として戦争で死ぬならば今後の生きる人のためになるならいいんではないか?っという様なことに納得してしまう自分が嫌になった。

    なにか、自分が正しいと心を律するために誤魔化すような能力だけ秀でてしまい本当に考えなければいけないことを考えれていないと思った。
    誰かに意見を言われたら「確かにそうだね」とすぐに意見を流されてしまい「良心」が変わってしまうような日本は今そんな世の中になっている気がする。

    誤ったニュースが報道されたとしても自分で真意を調べずにすぐに自分の意見を主張する。悪いと思ったら徹底的に批判する。
    その後、本当のニュースが流れたとしても前回の自分の意見を撤回することなくまた意見を変えて流される。
    そういう自分にならないように意識していかなければならない。

  • 戦時中の医療現場について。どうせ死ぬなら空襲で死ぬのも医学の発展のために死ぬのも同じである、いやむしろ後世の人々のために貢献している、という考え方は、当事者ではなく遠いところから聞くとなんとなく正しく思えてしまうのが怖い。そして、その状況を医学界の人間目線で描いていき、やはり罪の意識を持ち続けていくのをみて、倫理観について考えさせられた。

  • ある町の怪しい医者、勝呂。彼が過去に関与した"捕虜に対する人体解剖"に関する人間の過去、命、倫理を問いかける。戦時中の命に関する考えの狂いや、人生観によって考えが変わる中で、神の概念の少ない日本人の特徴が描かれているのではないか。

  • 長崎に行くので再読
    きっと今後も何度も読み返すんだろうな、、、

    無神論者が多い日本人の「罪と罰」。
    私たちは何を畏れ、何に敬意を払い、何をもってして己を律するのかな。
    事件に加わった医療者たちの背景が、一部を除いて描かれていて、彼らは少し自暴自棄気味に描かれてる?
    そんな状況下じゃない限り、こんなこと出来ないんだろうな。それは少し救いか?

  • 高校生の頃読んで何度も読み返している。戸田のターンが好き。良心の呵責とは?なんどもなんども考えさせられた。

  • 戦争犯罪に対し心の迷いを抱く勝呂にフォーカスを当てている物語だが、描写がとてもリアルで目を背けたくなる部分も多々あった。しかし、心情描写を強く読み取れる箇所が少なく、物語としての起伏は少ない印象だった。

  • 最初しか読んでない。つまらん。

  • 良心とは何かを問う本。

    作中の医師や助手、看護師は他人の眼、社会の罰にたいする恐怖しか持たない。彼らは過去に人を殺した経験を持ったり、他人の命を自分の手柄のために利用しようとした。中心的に描かれる学生の勝呂はそのような存在ではないが、意思がなく周りに流され人体実験に参加する。
    対して、医師の妻の白人女性は患者を見殺しにしようとした看護師に対して神が怖くないのか、神の罰を信じないのかと詰問、対照的に描かれている。

    良心が神を信じることから生じるかはわからないが、信念から生じるものなのだろうと感じた。

  • 太平洋戦争の時、実際に九州の大学で起こったアメリカ捕虜への生体解剖…そんなショッキングな事件を題材にした小説。

    「どうせ死ぬんだから、今後の医療のための死ならむしろ有益」という派の医師達や戸田。一方「人を殺す医療はあっていいものか」的な生体実験に懐疑で戸惑いがあった勝呂。

    今だと誰しも正論でおかしいと抗議できるはずだけど、当時のような戦時下だと正常な判断はできるものなのか…?私も麻痺して、やるしかない、と思ってたかもしれない…そう思ったら自分にこわくなった

    てかそもそもこの事件もフィクションだ、と思いたかった。海水は代用血液として使えるのか、肺は片方取っても死なないのか、生きた捕虜を使った人体実験…

    まずそんなことが本当に日本人によって起こされてた事実が一番ショック…

    数年くらい時間置いて再読する

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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