新装版 海と毒薬 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769259

感想・レビュー・書評

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  • 遠藤周作、もっとちゃんと読もうと思いました。反省。

  • 一言で言えば、日本版「罪と罰」なのかもしれない。

    初期の場面で‘私’が様々な人間と関わるが、その人間達の過去の話はスティーブンキング小説のような日常の中に潜むリアルな狂気を感じさせる(狂気、恐怖、畏怖、似合う言葉がみつからない)

    アメリカ捕虜の人体実験に関わる主な人間のバックグラウンドと内心の描写が秀逸で、まさに罪と罰のようななんとも言えないなんとなく黒く粘っこいような作品だと感じた。

  • 昔の作品で読みにくいのかなと思ったけど、読みやすかった。手術シーンがとても生々しく描かれていて世界に引き込まれた。海と毒薬というタイトルはどういう意味なのだろう。自分なりに考えてみた。海は手術中に床に血液が固まらないように流している水。毒薬は、勝呂先生が、後方で全員を見渡していたときの「よく解剖ができるな…」と、まるで他の人たちが毒をもっているようだ…そんな感じかな。あまり、わかりやすく表現できない…
    数年後、また再読したい。

  • 読みやすい文体ではなかった。
    しかしながら、日本人とは、という問いを張り巡らせた作品であることは理解できるし、また高校時代に読書感想文の課題として読んだときとはまた違う読み方ができたのではないかと思っている。
    戦争に関する小説はまだ経験が浅いので、またいろいろ物色していきたい。

  • 夢中で読んだ…
    良心の呵責について考えさせられる

  • 戦時中の大学病院外科が舞台で、人の生死が日常のすぐ近くにある物語の設定が読者に与えられる。
    物語の進行は淡々としていて贅肉が少ない。性別も性格も違う複数のキャラクターの視点から事件が語られる。

    こういう設定なので、ショッキングなはずの出来事を、まるで遠い国の戦争をテレビで見ているような気分で受けとめることができてしまい、読み進めるのが苦しいといったことがなかった。

    ただ、これはあくまで傍観者的、第三者的に事件を見ているからなのではないか、いざ自分が当事者となったらどうなのかと思わせる。

    もし自分が当事者だったらを考えるとき、後半の登場人物たちの異なる立場、性格、性別、国籍からの独白が手助けになる。

    本当に舞台設定のよくできた話だと思った。

  • 周りも同じような事をしているという考えが伝播し戦争に繋がったのかと改めて考えさせられる。
    同じような事も良い影響を及ぼすものであれば問題はないのであろうが、反対のものであれば目を覆う事態になる。
    一旦立ち止まり、考え、否定するべきと感じた事ははっきり否定する軸を持つ必要がある。
    しかしその軸を持つにあたり何が必要なのか?
    戸田が自分が不気味と思うくだりが私の心に響いた作品。

  • 戦争中の絶望的な心理状態が、この作品の核になるものであると感じたし、興味深かかった。
    この本の解説に、この本の素晴らしさが語られる一方で、最近の人の感じ方に疑問を持つような書かれ方がされていて、考えを持って作品と向き合いたいと思った。

  • 苦しい…。
    描写が生々しくて終始呻きながら読んだし、ちょっと心臓痛い。
    落とし込むのに時間が必要です。。

  • 医者の序列且つ腐敗した制度が描かれる。
    上田ノブが印象的で大場看護婦長との湿っぽい抗争がリアル。
    ヒステリックなヒルダさんの存在は、キリスト教の押し付けがましい負の側面を描かれているようにも思えた。
    キリスト教にある個人の「罪」意識は、他者に刃を向けることがある。
    正義の押しつけはキリスト教限ったことではないが、宗教の負の側面として包括することはできるだろう。
    ヒルダさんに対する周囲の嫌悪感は、
    「ああ、またキリスト教か」
    という日本人独特の感情を描いているのかもしれない。

    満州や大連など現代にはない戦時中のロマンにやや惹かれる。
    戦争に対する憧れはないが、第二次世界大戦前後の終末感、これから始まる惨劇前の雰囲気にかえってロマンスを感じてしまう。
    生きていたら、満州で生まれたかった。
    カズオイシグロの『私が孤児だったころ』にもある上海もまた心躍る。
    死に目には会いたくないが、この頃にしかない
    雑多な雰囲気がたまらなく好きで、読み応えがあった。

    内気な勝呂、サイコパス戸田、観察眼阿部ミツ、ボロ雑巾ノブ
    それぞれに漂う倦怠感が味わい深い作品だった。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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