未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)
- 講談社 (2017年6月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062884310
感想・レビュー・書評
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「今から婚姻数や出生数を上げても無意味」。
一部の研究者から最近ようやく聞かれるようになった言葉だが(政治家含む非専門家のレベルはさらに低く、いまだにこれを主張しているようなていたらく)、本書はたった1行で、その恐るべき真実をつきつける。
2020年、日本人女性の半分は50歳以上になる。
今は2017年、わずか3年後のことである。わずか3年後には、日本人の半数のそのまた半数が、初老(以上)と言われる年齢になるのだ。
もっともよくよく考えてみれば、今に始まった話ではない。日本の高齢化率が25%を超えていると言われ始めてから、すでに久しい。
むろん、日本の高齢者が全員女性であるはずもないが…「日本の高齢化率は25%」と、「日本人の(だいたい)半数のそのまた半数が50歳以上」というのは、「年齢が高い人の人数」という点では、ざっくり同じようなことを言っているとも考えられる。
なのに、このインパクトの差は何だろう。
この調子で、著者はとかく見えにくい少子高齢化社会の未来予想図を、具体的かつ苛烈につきつける。その容赦のなさといったら、普通の人なら心が折れかねないほどだ。
ただ、それもこれも「普通の人」にこの問題の深刻さを認識させ、「すみやかに本気を出す」ことを求めるがゆえのこと。末尾には将来の日本社会に向けた処方箋や、若い人たちに向けたメッセージまでもがきちんと示されているので、「いたずらに不安にさせられた!」と腹を立てるには及ばない。
10の処方箋のうち最も感心させられたのが、「高齢者の削減」。ここまで、とにかく厳しい(悲観的な)ことばかりを言ってきた著者なので、まさか…とドキリとさせられるが、要は「高齢者」の定義を変えようというのだ。
現在、「生産年齢人口」とは15〜64歳と定義されている。これを19〜70歳にスライドさせよう、というのが著者の主張である。
いまどきの60代は、10年前(50年前ではない、「わずか」10年前である。これには少々驚かされた)の60代より、知的・精神的・肉体的に5〜10歳は若いという。この人たちを、「60歳になったから」とただ遊ばせておくのはもったいない。
また同時に、いまどきは15歳で社会に出る人はごく少ない。15〜64歳ではなく19〜70歳が、現在の日本社会の実情には合っている——まことに当を得た指摘である。
64歳には個人差もあろうが、15歳のほうはまったくそのとおり。かつ、64歳より目につきにくかった箇所である。思わず膝を打った。
「死ぬまで働かせるつもりか!」と反発する人もあろうが…と著者は言うが、まさしく自分の親やよく知る上司がこの年代にさしかかりつつある私としては、その反論こそナンセンスに思えた。
60歳でいきなり「毎日が日曜日」になってしまったら、いったいどれだけ老け込んでしまうことか。自分自身を取っても、死ぬまで働くのか…などといった慨嘆より、60歳になったからと問答無用で社会から放り出されたらたまらない、という思いのほうが強い。働けるうちは働きたいし、そうすればなんとか食べていくことができるだろう——「年金だけ」「賃金だけ」では、それが叶わない額だったとしても。
それには、人生の楽しみをすべて「定年を迎えた暁には…」と先送りさせられるような過重労働社会を変えるとか、そもそも年齢で区切らず、労働に耐えられない者に(若くても重病を患うなど)年金が支払われる方式に切り替えるなど、いくつもの変革が必要になるだろう。しかし、これは世に数多ある「少子高齢化・労働人口不足対策」の中でも有数に実現へのハードルが低く、効果が大きい策に思えた。
2017/6/22読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人口減少社会の行く末が分かりやすくまとめられていて、末恐ろしくなった。今でも高齢者が多く子どもが少ないと感じるのに、これからがピークとは驚くばかりだ。今の自分にできることは子育てかな。がんばりたい。
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人口減少の速度は、著者の言っているスピードを超えており2022年度日本人の出生数は80万人を割ってしまったとニュースで見たことがある。生涯未婚者を如何に少なくし、家庭を持ち子育ての喜びを国民に伝えてゆく啓蒙活動に政府はお金を使うべきではなかろうか?
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■人口減少カレンダー
2017/「65~74歳」人口が減り始める
2018/75歳以上人口が「65~74歳」人口を上回る
2019/ITを担う人材がピークを迎え人手不足が顕在化し始める
2020/女性の過半数が50歳以上となり出産可能な女性数が大きく減り始める
2021/団塊ジュニア世代が50台に突入し介護離職が増え始める
2022/団塊世代が75歳に突入し「ひとり暮らし社会」が本格化し始める
2023/団塊ジュニア世代が50台となり企業の人件費はピークを迎える
2024/団塊世代がすべて75歳以上となり社会保障費が大きく膨らみ始める
2025/東京都の人口が1398万人とピークを迎える
2026/高齢者の5人に1人が認知症患者(約730万人)となる
2027/献血必要量が不足し手術や治療への影響が懸念されるようになる
2030/団塊世代の高齢化で東京郊外にもゴーストタウンが広がる
2030/ITを担う人材が最大79万人不足し社会基盤に混乱が生じる
2033/空き家が2167万戸を数え3戸に1戸は人が住まなくなる
2033/老朽化したインフラの維持管理・更新費用が最大5兆5000億円程度に膨らむ
2035/男性の3人に1人,女性は5人に1人が障害未婚という「未婚大国」になる
2039/志望者数が167万9000人とピークを迎え火葬場不足が深刻化する
2040/全国の自治体の半数近くが「消滅」の危機にさらされる
2040/団塊ジュニア世代がすべて65歳以上となり大量退職で後継者不足が深刻化する
2042/高齢者数が3935万2000人とピークを迎える
2045/東京都民の3人に1人が高齢者となる
2050/世界人口が97億3000万人となり日本も世界的な食料争奪戦に巻き込まれる
2050/現在の居住地域の約20%が「誰も住まない土地」となる
2050/団塊ジュニア世代がすべて75歳以上となり社会保障制度の破綻懸念が強まる
2053/総人口が9924万人となり1億人を割り込む
2054/75歳以上人口が2449万人でピークを迎える
2055/4人に1人が75歳以上となる
2056/生産年齢人口が4983万6000人となり,5000万人を割り込む
2059/5人に1人が80歳以上となる
2065/総人口が8807万7000人で2.5人に1人が高齢者となる
2076/年間出生数が50万人を割り込む
2115/総人口が5055万5000人まで減る -
参院選前に読了できてよかった。おそらく、少子化対策に対する抜本的な案をもっている政党などいないだろう。ならばまず、東京一極集中を改善しようとしてくれている候補者を探してみようかな。
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少子高齢化について書かれたベストセラー。
少子高齢化の問題点について、皆具体的にイメージできていない。
なので、近い未来に起こるであろう状況を、具体的な年とともに記載する。
今も確かに傾向として感じられることが、どんな事態になるのか、示される事で、自ずと危機感が身近に感じられるようになっている。
この表現がさすがです。
暗い未来ばかりでなく、筆者の10の具体的な打開策が書かれてうるので、最後は未来に希望が持てる仕組みになっているところが良いです。
解決策の一つのイタリアンモデル。
職人の高い技術、芸術性によりオリジナルのものを作り、世界中からバイヤーが集まる。
この前テレビで見た、墨田区が職人とデザイナーをマッチングして、新たな製品を生み出している、というのも、この流れなのだなと。
新たな考え方で課題を解決すること、新たな組み合わせを考えること、課題を具体的にイメージすること、が大切なのだなと感じた。 -
義務教育の社会の教科書にしたい1冊。日本人は少子高齢化に楽観視しすぎ。確実に世の中で起こることが書かれているので、今から危機感もって対応したい