妻が椎茸だったころ (講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935500

感想・レビュー・書評

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  • 5編の短編集。どれもそれぞれ違う面白さがあって良かったけど、やっぱり表題作がいいな。定年を迎えた主人公の妻が突然死、妻が残したレシピノートに夫は謎の一文を発見する。「私は私が椎茸だったころに戻りたいと思う」はて妻に椎茸だった頃があったのか?と素朴に考える男性と、その話を聞かされて私はジュンサイでしたってさらっと言い出す料理教室の先生との温度差に男女の思考回路の違いが象徴されているようで不思議な可笑しみがある。まあ料理する人としない人の差だと言われると料理より皿洗いのほうが好きな私としてはぐうの音もでませんが(苦笑)ラストでちょっとホロっとしました。

    「ラフレシアナ」は、別にミステリーではないので叙述トリックまで言ってしまうと大袈裟かもしれないけれど、小さい仕掛けが随所にあって、常識人ぶってる主人公が実は一番変な人だったという、これはむしろ一種の「信頼できない語り手」ものともいえるかもしれない。恋人がウツボカヅラとか絵的にもシュールでブラックだし、極彩色の悪趣味感が好き。

    「蔵篠猿宿パラサイト」は隕石にまつわる奇妙な言い伝えのある温泉宿に行った女子大生二人の話。実はいかにもB級SFにありそうな展開ではあるのだけど、温泉で女子大生が、となるとその違和感が面白い。「ハクビシンを飼う」は一種の異類婚姻譚と捉えてもいいかしら。「リズ・イェセンスカ~」はオチがアメリカっぽい(?)んだけどマザーグースの唄にもありそう。

    ※収録作品
    リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い/ラフレシアナ/妻が椎茸だったころ/蔵篠猿宿パラサイト/ハクビシンを飼う

  • ちょっと怖くて、愛おしい 五つの「偏愛」短編集
    亡き妻のレシピ帖に「私は椎茸だった」という謎のメモが。不在という存在をユーモラスに綴る表題作のほか、突如あらわれた男が語る物語「ハクビシンを飼う」など、〝ちょっと怖くて、愛おしい〟偏愛短編集。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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