- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065156414
作品紹介・あらすじ
1963年、博打をしのぎにしている白壁一家の人見稀郎は、翌年の東京オリンピック公式記録映画監督を降板した黒澤明の後任に中堅監督の錦田をねじ込んで、興行界に打って出るべく動き出す。オリンピック組織委員会には政治家、財界関係者が名を連ねており、あらゆる業種が莫大な利権に群がっていた。日本が劇的に変貌を遂げた昭和の東京五輪をモチーフに、現代エンターテインメント小説の旗手が放つ、長編社会派クライムノベル。
1963年3月21日、翌年の東京オリンピック開催を前に、公式記録映画の監督を務めることになっていた黒澤明が降板した。
博打をしのぎにしている白壁一家の人見稀郎は、親分からの指示を受け、中堅監督の錦田を後任にねじ込んで、興行界に打って出るべく動き出す。
オリンピック組織委員会には政治家、財界関係者が名を連ねており、その下には土建業者や右翼、ヤクザ、さらには警察までもが蠢いており、あらゆる業種が莫大な利権に群がっている。
稀郎は記録映画の監督選定に権限を持つ委員たちの周辺を洗い、金や女を使って言うことを聞かせようとする。
東京が、日本が劇的に変貌を遂げた昭和の東京オリンピックをモチーフに、現代エンターテインメント小説の旗手が放つ、長編社会派クライムノベル。
感想・レビュー・書評
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翌年に東京オリンピックを迎える1963年。映画好きなヤクザ人見稀郎は親分よりあることを頼まれる。オリンピック映画を監督することになっていた黒澤明は降板し、その後釜として錦田という中堅の監督にさせようと。人見は映画興行界を一人爆進する。多方面より横やりが入る、利権が絡み合い、監督は誰の手に。
戦後の復興、昭和を舞台に、実在の人物も絡めていますね、それが真実味を帯びさせているし、オリンピックの影ドロドロ、目が離せませんでした。人見の映画愛、一人突き進む姿、ハードボイルドでなかなかヤクザっぽくないね。楽しめました。時代なのかなあ。私はその時は知らないけれど、そういう時代なんだと物語の世界だけれど想像しつつ味わえました。オリンピックには、悪が潜んでるんだって、今回はどうなんだろうね、詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1963年、博打をしのぎにしている白壁一家の人見稀郎は、翌年の東京オリンピック公式記録映画監督を降板した黒澤明の後任に中堅監督の錦田をねじ込んで、興行界に打って出るべく動き出す。オリンピック組織委員会には政治家、財界関係者が名を連ねており、あらゆる業種が莫大な利権に群がっていた。日本が劇的に変貌を遂げた昭和の東京五輪をモチーフに、現代エンターテインメント小説の旗手が放つ、長編社会派クライムノベル。
設定は面白い。テンポもよいが、もっとボリュームがあってもよかったのではないか。 -
コロナ禍で外出が憚れる年末年始に自宅で夢中になって一気読みさせていただきました。
1964東京オリンピックをめぐる虚実入り混じりながらも確りとした視点にたつ一大叙事詩。オリンピック公式映画の黒澤降板から市川崑登板までの裏面史をオールスターキャストで描く。市川崑の有馬稲子への仕打ちは公然の事実として当時の映画界の雰囲気とテレビの台頭、オリンピック利権に群がる政界・官界・経済界から児玉誉士夫ら右翼、同和団体、宗教団体、そして勿論ヤクザまでが入り乱れる様が、途轍もなく面白い。虚の花形敬の自傷癖あたりを潜り込ませる筆者の想像力はすごい。市川崑の「東京オリンピック」は記録映画としてよりも芸術作品として傑作ではあるが、本当の記録映画としての東京オリンピックは、開催までの喧騒と臆面もなく東京を破壊・大改造した公共工事と、戦争で全く懲りない大政翼賛的な日本人の姿勢を映し出すべきだったかもしれない。 -
過去の東京五輪の記録映画を巡って繰り広げられる謀略を描いたクライムサスペンス。現代でも東京五輪で浮かれているけれど。当時も浮かれている裏側でこんなことが起こっていたのだと思うと……なんだか暗澹とした気分になってしまいます。実在の人物も多く登場するので、さあこれはどのあたりまでがフィクションなのでしょう。
とにかく、スポーツマンシップのかけらもない利権争いの数々にはうんざり。ものすごーく皮肉な感じはします。でもこういうのはどこでもありそうな気がするなあ。 -
65大昔の50年前のお話しとは思えないリアリティでしたね。しかも実名まで登場させて、次の時代の物語も読んでみたい気がする。
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東京オリンピックの裏の顔は…
利権が渦巻く政治と任侠の世界で、オリンピック記録映画の監督の座を巡り、繰り広げられる物語です。登場する監督や政治家は良し悪しは別として当時、スポットがあたっていた方々ばかり。単純にただただいい映画(シャシン)を撮りたかった映画オタクの変人ヤクザ、その夢は泡と消えるのか、それとも現実になるのか? -
まず、タイトルがいい。「悪の五輪」。有象無象のクズどもが五輪マネーのおこぼれにあずかろうとするさまを、これほど簡潔に示したフレーズはない。日本の過去の風景であり、目の前で起きている現実でもある。
それから、映画への偏愛がいい。アウトローの世界にすら違和感を抱えて、映画館の暗闇に居場所を得る主人公に自分を重ねる映画好きは多いだろう。
キャストがいい。児玉誉士夫、花形敬、永田雅一――戦後から高度経済成長期の日本を闊歩した化物が、次から次へと登場し、主人公を五輪をめぐる狂騒と陰謀と腐敗の渦に巻き込んでいく。
前作『東京輪曲』に続く昭和史物だが、本作の根底には日本社会への怒りがある。まったく同意だ。なにオリンピックなんて浮かれてんだよ。それにたかってるだけじゃねえか。 -
実名出されるとどうにも中途半端感が出まくって、どうせフィクションならとことん架空の話で書いて欲しい
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実在の人物がたくさん登場するので臨場感がある。東京オリンピックの裏にこんな利権争いがあったんだな・・。今、「いだてん」見てるので悲しい気持ちになる。