老虎残夢

著者 :
  • 講談社
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感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065245620

感想・レビュー・書評

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  • 第67回大賞受賞。2021年。
    2作受賞してるのだ。
    中国の宋の時代。みなしご紫苑は泰隆に拾われ、養女となり、武術をしこまれる。同じく養女となった恋華とラブラブ中。泰隆が奥義をさずけると3名の武術師が集められる。そして殺される泰隆。
    ジンギスカーン。ふーん、みたいな。

  • 江戸川乱歩賞受賞作。中国の宋時代を舞台とした、武侠小説にしてミステリ。雪密室(しかも孤島の館!)で起こった事件、さまざまな能力を持った容疑者たち、フーダニットとホワイダニットがぞんぶんに楽しめます。
    なんといっても武侠たちの使える能力を前提にしたフーダニットが楽しいです。雪密室なのに足跡を残さずに行き来できる人物とか、普通ならありえないのだけれど。それもきちんと前提にされれば論理としては本格だし。各自のとんでもない能力を用いたバトルのようなものがときどき繰り広げられるところも面白く、ぐいぐい読めました。このあたりの読み心地はコミカルですらあります。しかしそこからさらに何故事件が起こったか、のホワイダニット究明になってくると、歴史的情勢も踏まえて急にシリアスな印象に。なるほど、こういう時代の物語にはあまり詳しくないのだけれど、あんなものを学ぶのは普通じゃなかったのか……。
    ラストも好きだなあ。館ミステリのお約束(笑)。切なさの残る結末ではありますが。読後感は穏やかな気がします。ラストで描かれているのはあの人たちのことなのかな、などとも思ったりもして。

  • 武術とかあまり親しみないけど、情景が浮かぶくらいにわかりやすい表現で、頭の中でイメージできたから、サクサクと読み進めることができた

  • 武侠小説であり、軽攻、内功、知らないことばかり、密室、館の謎き百合要素(女性の同性愛)もあり新感覚の江戸川乱歩賞これは読まずにはいられない驚天動地のミステリーです。

  •  師の知己である3人の武侠を迎えた翌朝、湖の中の島に建つ八仙楼で師の死体が発見された。楼へ行く唯一の手段である船は島側にあり、密室状態であった八仙楼へ渡ることができたのは卓越した武功の持ち主だけ?! たった一人の弟子・紫苑は師の仇を討つべく、3人の武侠と共に八仙楼で調査を開始する。
     南宋が舞台の武侠小説的ミステリー。


     図書館本。
     何だろう、武侠小説としてはちっともワクワクしない。
     序盤、地の文がずっと説明文のよう。アクションシーンになっても動作の解説ばかりで、武術らしい空気が感じられない。専門用語の解説のためもあるとはいえ、これはちょっと……。3人の武侠を迎えてからは読みやすくなるんだけど。
     武侠小説を設定に持ち込んだのが、内功や軽功といった特殊設定や江湖の掟を持ち込むためだけなのも寂しすぎる。死体発見以降、登場人物たちは八仙楼にカンヅメ状態になり、アクションシーンはほとんど無い。坊さんが湖にぶち込まれた程度かな。匕首を受け止めたりもするけど、物足りないし。
     無茶な要望ではあるが、武侠小説としての楽しさも追求して欲しかった。

     デビュー作ということで、難点も多い。
     まず、湖の形状が分かりにくい。弓張月とか扇形に近いらしいが、説明を読んでも全くピンと来ない。
    『矢をつがえる弦の部分から矢の本体までの一番長い距離で、半里強はある。』
     弦から矢の本体まで??? 半径なのか? そもそも矢の本体って何なのだろう。矢じり? 矢柄?

     そして、武侠小説にありがちな人間離れした技の数々。どの程度のことができるのか、詳しくない者にはサッパリわからない。
     一応、武侠たちの口から解説はあるが、これは可能でこれは不可能という条件が厳密に呈示されたわけではない。
     元々物理法則なんぞ無視した技だし、何をどこまで可能かなんて知らんがな。

     宋代の知識がある程度無いと話がよくわからないのも難。
     文中でよく解説してくれてはいるのだが、宋と言われて連想できるのが日宋貿易しかない私にはツラかった。人名も宋代ではテムジンくらいしか分からず、注釈のようなものが欲しかった。

     更に、3人を迎えての宴会から死体発見の辺りで、真相に薄々見当がついてしまう。論理的な推理など抜きで。
     登場人物の言動や雰囲気等の描写で、なんか胡散臭いな、不自然だな、と感じてしまうんだものなあ。

     デビューしたばかりなので今後に期待、と行きたいところだが、乱歩賞選評や作者のプロフィールからすると、武侠小説にさほどの思い入れは無さそうな感じ。
     武侠ミステリー作家としての躍進は期待しない方がいいのかな……?

  • ミステリーは読みにくいと思ってたけど、この本はすらすら読めた。登場人物みんな魅力的だった。愛が絶望とか憎しみとかにつながってしまうのが苦しかった。でも、憎しみを乗り越えて愛に戻ってきたのが良かった。最後は人によって解釈が異なるだろうが、愛で終わったのだと思ってる。因縁から抜け出して、紫苑と恋華は仲睦まじく暮らしたのだと思う。

  • 人里離れた場所で暮らす武術の達人と、その義娘と愛弟子。
    ある日奥義を伝承するためにと呼ばれた客人が3人。なぜ自分にはその権利がないのかと不満に思いつつも、3人を客人としてもてなし、翌日には継承も行われるはずだった。
    師父が死ななければーー。

    馴染みのない舞台設定ながら、違和感なく読み進められたし、なにより謎を1つずつ解いていく感じがミステリーとしてとても面白かった。
    ミステリーのこうした純粋で単純なわくわくを感じられたのが久しぶりで、嬉しくなっちゃった。

  • 中国史の話かと思いきや…

    完全にあの作品のオマージュでした。
    各章の始まりの漢詩、登場人物の描写から、色彩感覚溢れる宋の雰囲気がとてもよく表れていた気がする。

    謎解きに関しては、結局、なんだったのかがまどろっこしくて、よくわからないこともあり、なんとなく消化不良だが、雰囲気は楽しめた。

  • 江戸川乱歩賞受賞作の武侠小説ミステリ。
    内功、軽功などを前提とした特殊設定はあるが、しっかり本格ミステリになっている。
    武術の達人である梁泰隆がその奥義を譲る相手は、弟子ではなく他の三人の武侠の中の一人だという。三人がやってきた晩に事件は起こる。奥義とは何なのか、そして事件の真相は‥
    最初は孤島の密室殺人から始まるが、終盤になって話が壮大になってくるのはワクワクした。宋と金の関係など時代背景も面白かった。

  • 中国が宗と呼ばれていた時代、そこには心身を鍛練した武人が、若く美しい女性の弟子と血の繋がらない愛らしい養女と修練の日々を過ごしていた。
    そこに三人の訪問者がやって来て……

    と、まあこう書くといかにもシンプルな構成になってしまうけれど、そこはさすが江戸川乱歩賞受賞作品、ファンタジックながらも荘厳なミステリー。特殊設定の密室でありながらも人と人の心理、技能の探り合いの中互いに愛憎を晒し合ってゆく。

    登場さえしなかったけれど蒙古のテムジンがそれらの影響を~に大陸の大きさ、歴史の壮大さを垣間見られました。

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著者プロフィール

1980年、京都府生まれ。帝塚山大学大学院法政策研究科世界経済法制専攻修了。南宋を舞台にした武侠小説『老虎残夢』で第67回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。筆名は、敬愛するアメリカの伝説的ギタリスト、フランク・ザッパからとった。

「2023年 『星くずの殺人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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