なれのはて

  • 講談社
4.22
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感想 : 262
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065331439

感想・レビュー・書評

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  • まずは
    加藤シゲアキやるやん!
    という率直な上から目線の感想。

    柔らかく落ち着いた文章が心地よくて
    すっと世界観に入って行けた

    テンポも良くて
    小説だなっていうご都合主義や奇跡の連続に
    ファンタジー感はあるけど
    リアリティもそれなりで。

    登場人物が多くて関係性が複雑で
    情報処理大変な部分もあったけど。

    しっかり小説やったなと。

    ただ直木賞を逃したのは…
    まだまだ人間の心の機微の描写、思考回路のリアリティが必要なのかなと。

    物語としてのキメの細かさ
    『それらしさ』『それなり』の域を出なかったのかなと。

    それこそ絵と同じで
    どこの色合い、どこの部分を取って見ても
    丁寧さや、きめの細かさ、表現力や
    その底に潜んで主張はしない構想や骨組み、思い
    それを包みこんでバランスよくまとめる技術
    そういうのが芸術としての重みや深み、
    余韻を生むのかなと。

    この小説を読んで構成や発想は面白いのに感じた
    物足りなさを考えると、そうなのかなと。

    とはいえ面白くて結局、1日で読了!

  • 一気に物語の世界に引き込まれた。面白すぎるミステリー。戦争の話や現代社会の問題、考えさせられた。正しさは振りかざすだけの矛ではやなく、他者を守るための矛でもある。映像化しそう。観たい。

  • 猪俣家一族が誰も幸せにならなくて、読んでいてしんどいところが多い作品でした。
    守谷や吾妻が事件を追う"現代"と、現代で分かったことが回想される"過去"を行き来するような構成で、読んでいて引きがありました。
    亡者を描く勇と、生者を描く道生の対比もよかったし、時折見える辛い中のささやかな幸せを感じる描写がなんとも言えない感情になりました。
    「正しさは振りかざすだけの矛ではない。他者を守るための盾でもある。」
    この言葉で、守谷の成長を感じられたいい言葉だなと感じました。

  • 初めに言いたいのは自分はNEWSのファンでも、シゲアキ先生のファンでもなんでもない。
    だから推しの作品だから花丸100点!
    と言う感情は一切なくて、ただの一人の本好きとしてめっちゃ面白かった。
    無名の画家が描いた一枚の絵。
    その絵の展覧会を開催したいと言う所から、この作者が誰なのかを調べるため舞台は秋田へ……
    調べていくと徐々に明らかになる戦前、戦中、戦後の忌まわしい過去。
    現代と過去を行き来する話はどうしても読みづらい物が多いけど、この本はそんなことは無く上手い感じに過去の回想が入り、徐々に明らかになる真実が気になって後半は一気読みだった。
    芸能人が本を出すと一発屋の事が多いけど、シゲアキ先生はずっと書き続けてるだけあってアイドル業をしながらこれだけの作品を書ききった事が本当に凄いと思った。
    毛嫌いせず読んでみて欲しい一冊。

  • 前作『オルタネート』から3年ぶり。満を持して上梓された勝負作を読んでみた。

    著者の熱量のようなものが読んでいてひしひしと感じられ、相当気合が入った作品だということはよく分かった。書いてあることはちゃんと伝わるし、一枚の絵からある一族の過去を追っていくという設定も面白い。
    特筆すべきは過去パートのリアルさで、登場人物はみな魅力的で、ぶつかり合いや息遣いが聞こえてくるようで大いに楽しめた。

    一方で現代パートについては、悪いわけではないんだけど気になるところもいくつか。
    まず主人公はそれなりの屈託をかかえているものの、普段は低体温の人物として描かれているため、感情の起伏があまり感じられず、いち読者として感情移入しにくかったように思う。
    また、たぶんすべての読者に誤読が無いようにとの配慮だと思うけど、非常に細かい部分まで描写されているのも特徴的。なんだけど個人的にはちょっとToo Muchで、情景や心情を想像する余地が狭まっているようにも感じられた。自分が担当編集者だったら色々赤を入れて直したくなりそう。過去パートではそんなに気にならなかったんだけどな。
    それ以外にも報道局内で起きた事件の安易さや、かつての戦争についての解釈など、物足りないと感じる部分はいくつかあったんだけど、やっぱりこのボリュームと熱量は率直に評価したいと思った。

  • 秋田が舞台。土崎空襲の悲劇的な時代を背景に人間関係が絡まってもつれて現代まで繋がります。重厚で読み応えがありました。秋田弁もいいです。想像しながら読めます。ラストがぐっときました。

  • 自分にとっての正義は、誰かにとっての悪かもしれない。悲しみが怪物を産み、やがてそれが連鎖するように"血"となり"油"となり流れていく。
    戦争、生と死、正義、愛について考えさせられる夢中になれる物語だった……。
    様々な伏線が絵の真相に近づくにつれて回収されていく気持ちよさ。
    人間の根本にある誰もが隠したい醜さも不器用さもさらけ出すように描かれていて物語に惹き込まれた。

  • 無名の画家、一枚の絵の正体を辿る壮大な物語。次々明かされる壮絶な真相と、その「なれのはて」に心が震える。作家・加藤シゲアキによるこの大作を色眼鏡で見ることなく正面から受け止めて欲しい。

  • 報道とは何か、イベント企画とは何かがテーマかと最初思ったが、1枚の絵、イサムイノマタの少年の絵から広がっていく秋田の猪俣家の闇にまた深い愛に、あるいは無垢なる魂に心震えた。最後の場面感動ものです。
    直木賞、これで取れなかったのが残念です。

  • 無名の画家が描いた1枚の絵で展覧会をしたい。

    ある家族の物語。ある記者の物語。ある画家の物語。
    ある女の物語。ある男の物語。

    同僚、家族、友人、恋人。

    人は一人では生きていけない。
    画家がいなければその絵が生まれなかったように
    その画家は周囲の人がいなければ画家として絵を残すこともなかった。


    ある評論文で
    「現在の著作権法は、著作者を守るためでなく、販売元の利益を守るためにある。本当に著作者を守るのであれば、例えば作家であれば作者の頭の中、構想に著作権を置くべきだ」とあった。

    また、別の書である作家は
    「わたしは、私が生み出した作品が人々の手に渡れば、世の中の人の手によってどこまでも羽ばたいていけると信じて手放す」
    と語っていた。

    この本の中では様々の人の視点、心情が時代を超えて描かれるが
    道夫視点のシーンはない。
    彼が何を思っていたのか。それは障がいを持つことを除いたとしても私たちには難しいだろう。
    立場や角度を変えれば見える世界が違ってくる絵画のように
    道夫という画家もまたさまざまに見えていいのだとおもった。

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著者プロフィール

1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWS のメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』、『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』 とヒット作を生み出し続ける。2020年刊行の『オルタネート』で、21年に第164回直木三十五賞候補、第42回吉川英治文学新人賞受賞、第18回本屋大賞第8位、第8回高校生直木賞受賞。アイドルと作家の両立が話題を呼んでいる。

「2022年 『1と0と加藤シゲアキ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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