慈雨 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458589

感想・レビュー・書評

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  • 定年退職後に妻と四国巡礼に出た元刑事の話。過去に捜査にあたった幼女殺人事件に冤罪の可能性があり、贖罪の気持ちで巡礼していたら同様の事件が起きた。家族への想いや信念を持つことを巡礼からヒントを得ながらいろんな問題を決着させる。面白く一気読み。

  • 初柚月さん。

    以前から気になっていたが、やっと読めた。
    じんわりと沁みる作品だった。
    号泣するわけではないが、目頭が熱くなり続ける。
    特に後半からラストにかけて、刑事の矜持とゆうか決意が柱となり、なんてゆうかアツくなります。

  • 2020年7月30日読了。

    孤狼の血シリーズ以外では初読。

    群馬県警を退職した神場は奥さんとともに四国を訪れ、四国巡礼お遍路の旅に出る。
    そこで見る悪夢、16年前の少女誘拐殺人事件。

    そして、巡礼中に発生する16年前に酷似した少女誘拐殺人事件。

    ちょいちょい胸にジーンとくる描写、そしてラストも電車で読んでいて思わず涙ぐむところだった。

    柚月裕子、女性なのになぜこんなに男性の心を読差ぶることができるのか?女性だからこそ、揺さぶることができるのか?

  • 誘拐された少女が、山中にて遺体で見つかった。その状況は、犯人が既に逮捕され収監されたはずの16年前の事件に酷似していた。16年前、当時の事件を担当した神場は、すでに退職している身でありながら、今回の事件の捜査関係者に連絡を取る。

    は〜面白かった!てっきりぐいぐい捜査に関わっていくかと思いきや、全然。神場はお遍路をしていて、そこで出会う人や物事、妻とのやり取り、追想など心の動きを見せながら、それとは別に現場の動きがあるという、明確な線引きのもとで話が進展を見せていく。そういう魅せ方なのかと面白かった。

  • 刑事物だけどちょっと変わっ感じの推理もの?

    主人公は刑事を退職したばかりの神場。現役時代に心残りである幼女殺害事件を初めとして、悔恨の念を鎮めるため四国お遍路さんの旅にでる。妻と一緒に。

    旅先で知る新たな幼女殺害試験。
    すでに刑事を引退した身でありつつも気になって仕方がない神場は、元部下である緒方に連絡をとり、事件の詳細を聞き取りつアドバイスを与えていく。いわゆる安楽椅子探偵タイプの推理ものになっている。

    この物語の特徴は3つ。

    一つはお遍路の旅。
    全て歩きの旅でお遍路さんの神社を順番に回っていくロードムービー的な楽しみ方ができる。
    地元の方々のお接待という文化も知れるし、それぞれの神社の特徴も知れる。ちょっとしたお遍路の気分が味わえる。妻との絆も深まるし、よい。

    一つはちょっと変わった推理もの。
    上にも書いたけど、主人公は事件の現場には行かないし、捜査にも加わらない。お遍路の旅を続けながら、悩みながら、苦しみながら、部下の緒方の報告を元に気づきを与えていく。決して全てお見通しの万能感はない。意外なきっかけでわかってしまったきっかげが事件解決の要因となる。ただし、事件の真相がわかるのはだいぶ後半だし、真犯人の個性も全く描かれていない。事件解決は本作品の主題ではないことが分かる。

    最後の一つは重厚な人間関係。
    主人公の神場の元部下の緒方は娘と付き合っており、神野は結婚には反対している。でも優秀な元部下であり、頼れるのは緒方だけ。
    昔の幼女殺害事件における冤罪の可能性を隠蔽した秘密を知る鷲尾との関係性。その秘密は知ってしまったら、緒方は警察に失望し刑事を辞めてしまうのではないか。
    長年連れ添ってきた妻にさえその秘密を明かしていない。明かしたら軽蔑し、自分から離れていってしまうという不安と苦悩。
    一人娘の出生の秘密も物語に厚みを加えている。実の娘ではなく、殉職した同僚が残した娘であるという真実。
    数々の不安、苦悩を抱えつつ遍路の旅を続けていく。

    お遍路の旅の終わりに近づくにつれ、事件の真相も明らかになり、人間関係のもきれいなところにおちつく。

    親が心配しなくとも子供はしっかり育っているんだよ。というのが本作品の一番のテーマかな。

    最後は優しい雨に包まれてゆっくりと終幕。
    派手な作品ではないが、しみじみと心に染みる良作だった。

  • 刑事という職業の奥深さを目の当たりにしたような物語


    家族、隣人、職場の仲間、部下…様々な人間関係が積み重なって、定年退職を迎える主人公の心情に繋がっているのだけれど、底辺にあるのは刑事という職業ならではの、後悔や罪悪感…


    ひとつの事件を通して、主人公の生きてきた道筋を繋いでいく過程に引き込まれる一冊でした

  • いわゆる刑事ものとは違って、新しい切り口で人間ドラマが紡がれていく。定年を迎えた刑事とその妻の関係性が丁寧に描かれた良作。

  • 近年、刑が確定して何年も服役した人が、冤罪を訴えて再審請求などをして、無罪を勝ち取った!という事例がいくつもあるけど、そんな報道を見るたび、「ふーん・・・でも、え!?じゃあ、真犯人はどこにいるの?放置?ずっと放置?これまでも?これからも?」と胸がざわつくのは私だけじゃないですよね。
    引退した刑事は、過去に扱った事件を忘れられずにいる。乱暴され、遺棄された少女。そこへ、似たような事件がまた発生する。
    自分が逮捕した犯人は、真犯人だったのか?もしかすると自分たちはとんでもない過ちを犯していたのではないか?自分が過去に犯した罪を認めない限り、今回もまた、真犯人に近付くことができない。彼とその周りの刑事たちが、覚悟を決め、事件に立ち向かう。
    ちょっと刑事たちが暑苦しいけど、なかなかの読み応えでした。

  • 以前『狐狼の月』を読んだが、作風はずいぶん違う。こちらの静かな語り口も悪くない。
    この作家さんはオジサンが好きなんだと思う。オジサンへの愛情を感じる。そして、重たいテーマではあるが底辺に浪花節が流れているようだ。

  • 冤罪の可能性を黙認した過去を持つ、引退した刑事の話。
    自分の正義感が、周辺の人を不幸にする葛藤。
    ただ、幸せか不幸かを決めるのは結局のところ本人次第。
    娘に「幸知」と名付けた背景はそういうニュアンスもあるのかな。

    私情をどちらに向けるか?
    生きるというのはそういうことなのかもしれない、と思った。

    ただ、本書がミステリーに分類されているのは意外。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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