慈雨 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 456
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458589

感想・レビュー・書評

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  • 悔恨と再生を本部全体で表現したら、こうなるんだな。という作品。
    物語の前半部分で主人公の心情とリンクするようにずっと梅雨空のスッキリしない天気、同時に進行していく事件も絡まって重々しい。
    それが少しずつ全ての事に晴れ間が見えてきて最後には天気雨となり、過ちや心に溜まった全てのものを洗い流してくれるところの展開の仕方はとても上手だし流石、プロの物書きといった感想を持った。ただ、物語が動くまでに過去の追憶の長い部分があるのでそこが少し長くて個人的に、ダレてしまった。

  • 警察官を定年退職した主人公神場は救えなかった被害者への弔いのため四国八十八ヶ所巡礼の旅に出る。
    旅をしながら神場は16年前自身が関わった冤罪事件に対する後悔の念が拭えなかった…

    そんな時16年前と同じ手口の幼女殺人事件が発生し、
    神場の過去にケリをつける最後の捜査が始まる。

    面白いのは神場は退職していて遍路旅中なので直接捜査しないところ。かつての部下、同僚に連絡しながら事件解決するストーリーが新鮮。遍路旅中ってのがいい。

    そして自分も小さい子を持つ親であるから、この幼女殺人事件を見逃した神場の気持ちがよくわかる。
    最近小さい子が犠牲なる事件を目にするたび心が痛む。
    なんでよりによって子供が…と。
    自分が警察の立場なら同じように後悔したと思う。
    だから一層物語にのめり込めた。

  • 警察を定年退職した人が夫婦で四国のお遍路さんを回る話で、私はお遍路さんマップを見ながら読んだ。

    過去担当した事件が冤罪の可能性があるにも関わらず、警察組織の隠蔽しようとする力に屈してしまい自暴自棄になり、その過去を清算したいとの思いでお遍路の旅に 出ます。途中出会った鶴という名前のおばあちゃんとの会話で以下のような場面がありました。“人生はお天気とおんなじ。 晴れる時もあれば ひどい嵐の時もある。それは御大尽様も私みたいな田舎の年寄りも同じ 。人の力じゃどうにもできんけんね。ほんでね、、、鶴はちょっとおどけるように肩をすぼめた。ずっと晴れとっても人生はようないんよ。日照りが続いたら干ばつになるんやし雨が続いたら洪水になりよるけんね。晴れの日と雨の日が同じぐらいがちょうどいいんよ。鶴の声には諦めや自暴自棄といった投げやりな色はなかった。人生の苦楽を 知悉した潔良さがある。“知悉:ちしつ、細かい点まで知っていること。

    DNA型が同一で冤罪となった菅谷さん事件を彷彿させる。
    警察が自らの身を守るが故に本当の犯人を逃してしまう。警察、検察は罪深い組織だ。袴田さん事件もすぐに謝罪し、真犯人を探すべき。もう遅きに失したが。

  • お遍路の旅とマッチしていてよかった。
    妻の香代子さんができた人で素晴らしい。
    純子ちゃん事件と犯人が同一だったのかわからないままなのがちょっと引っかかる。
    でも物語としては、この形が最良なんだろうな。
    お遍路で出会った鶴さんの話が良かった

  • 主人公と部下、上司、家族との繋がりを強く感じることが出来た。
    人間ドラマとしても読みごたえ抜群。
    お遍路を通して、自分の犯した罪を償おうとする主人公の苦悩と決意に感動。
    そして、それを支える妻の芯の強さにも心打たれた。

  • 神場智則は、警察を退職し妻と四国巡礼の旅に出る。そして神場には忘れられない事件がある。純子ちゃん殺人事件だ。犯人の 八重樫を逮捕した。しかし彼を見かけた人が現れたが、調査しないまま逮捕した。そして今起こっている、愛里菜ちゃん殺人事件が、純子ちゃん事件と類似していた。やはり、八重樫は冤罪だったか?神場や鷲尾、緒方は、純子ちゃん事件を独自で捜査した。犯人を逮捕するなら、100%か0%だと思うが警察も組織の集団。後悔を残すような事件があってはいけないと思う。

  • 元警察官の神場は、四国遍路にいた。16年前に捜査した少女誘拐事件と酷似した事件が発生。冤罪だった可能性が濃厚に。

  • お遍路さんもの?と思いきや違いました。

    柚月さんは人の気持ちを書くのがうまい、と思う。

    重厚
    でも重すぎない
    (重い内容の時ももちろんあるけど)

    そしてこの小説は情景がめっちゃ浮かんだ。

    別に自分が神社仏閣にいるわけじゃないのに、
    なんだか風を感じたり、空の風景がふと思い浮かんだり。

    おめでとうございました。
    ご結婚も(するでしょうし)Wでおめでとうございます(*^^*)

  • 退官後の神場が妻とお遍路しながらの
    過去の冤罪かもしれない事件と
    現在起きた事件との交錯。
    なかなか重い話だったけど
    お遍路とか、退官後の刑事とか
    設定が珍しく、興味深く読んだ。

  • いつか歳をとったら、夫婦2人でお遍路やりたいなと思った。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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