終末のフール (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464436

感想・レビュー・書評

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  • 伊坂幸太郎作品ではこれが一番好きかもしれない。
    「隕石で地球滅亡が知らされてから数年経った後のパニックがちょっと落ち着いた小康状態」という絶妙な所を切り取った作品で、終わりに向かう人々の絶望しているわけでもなく案外淡々としている描写が良い。
    この中では冬眠のガールがとても好き。

  • 生きなきゃ。がんばって生きなきゃ。

  • 次の朝、目覚めたら世界がなかったらいいのに。
    って、ちょっと辛いことがあったときに思ったりしたことがあるけど、カウントダウンな感じで、そんな事があったら、それでも自分は生きてるのかな。

    地球に寿命があるってTVで見たときは、
    自分がとっくにいない世界のことなのに、
    絶望したのを思い出した。

    なのに、ストーリーは全部どこかほのぼのしてて、みんなが、一人じゃないとこが、かっこいい。
    かっこいい人を目標にして過ごそう。

  •  「世界の終わり」というありがちで魅力的な背景。きっと世界はめちゃくちゃになっているところも多いだろうけれど、その中で閉鎖的に書かれた仙台の住宅街。伊坂作品の醍醐味である、複数の主人公が間接的につながっている描かれ方。なかなか個性的なキャラクターが面白い。お気に入りはキャプテンことスーパーの店長。
     僕の個人的な感想だけれど、終末であれば、もっと人間的なものが表面に出るキャラクターが出ていいと思ってします。主人公たちは世界の終わりを認めて、日常を日常に過ごしているけれど、もっと吹っ切れた登場人物がほしかった。

  • 「世界が終わる」
    この状況に直面したら自分はどうなるか。
    それでも明日を生きようと思えるか。理性を保てるか。本能に溺れるか。恐怖に打ち勝てるか。
    色んなことを考えながら読んだ。

    登場人物が皆まっすぐで綺麗。
    どんなに暗い中でも希望は生まれるんだなと思った。
    最後のシーンが印象的。

  • あと3年で隕石が地球にぶつかる。

    そんな世界で生きる人々の、ささやかな日常生活。
    子供ができたり、死のうとしたり、恋をしたり。

    連作短編集なので、前回の登場人物が次の話に少し顔を出すような
    伊坂流の遊びごころは健在。

    ≪隕石がぶつかり世界が終わる≫というと、
    新井素子の『ひとめあなたに……』を思い出す。
    今作は、パニックが一旦おさまってから、またパニックが始まるであろう間までの
    束の間の平和な時間なのかもしれない。

  • 泣ける本を探して購入。
    結果一滴の涙も出なかったけど、まさに「万馬券を当てた」ような出会いだった。
    泣けない、だけどいい。そこが良い。
    そんな本は初めてです。
    どの話にも必ずある最高の一文に惚れ込みました。
    大好きです。

  • 死、という目に見えないなにか
    隕石、という見たことのないなにか

    そんな恐怖が過ぎ去った、
    ちょっぴり平和な瞬間たちの物語。

    毎日毎日、人は暮らしてゆく。
    日常、は続いている。
    未来が無いと知っていても、
    彼らは毎日生きてゆく。
    なんのために?
    人は動物であって、その枠からは逃げられないのだと改めて思う。

  • 八年後、小惑星が地球に衝突し、世界は消滅します。

    …突然そんな宣告を受けたとき、人はどんな風に生きていくのか。
    仙台にある架空のマンションを舞台に、複数の主人公がまっすぐに時に不恰好に終末のときを生きている、オムニバス作品です。


    読み終わって感じるのは、私達は意外と、終末の世を生きてる世代なのかもしれない、と思った。
    突然小惑星の衝突を報じたニュースを見た世の中の反応はきっと911の時に近いし、直後の秩序を失った世の中、食糧の奪い合いと逃げるための大渋滞は、おそらく311直後の東京を浮かべる人が多いと思う。
    この街で、誰が生きているか定かでない。道ゆく人は「お互い、無事で何よりだな」と声を掛け合い、懐かしい友は誰かしら家族を失っている…それは、今の被災地の姿に他ならない。
    いつ世界が滅びるかなんてわからないけど、私達もこんなに酷い世界に生きて、でも毎日過ごしている。
    上述のような連想をしてしまうから、万一こんな事態になったら、やっぱり世界は混沌として治安は最悪になり生きるのが難しい時代がくるのかな、とも思うけど。
    けど、ビルに吸い込まれる飛行機の映像を見ながら、世界中が祈ったあの気持ち。子ども達に両国のことをバランスよく理解させようと努めたあの先生。クラクションの音のない、静かな甲州街道と、そこに立つ、「トイレ開放してます」のプラカードを持った人達。そして、被災地でであってきた人達。
    もう少し、日本には、マシな結末が訪れると信じてみたいな。
    ひどい社会の描写から離れて、どこか平和なマンションの住民たちの様子に、そんな希望が浮かびます。

    作中、すごく心動かされた言葉。
    「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」(中略)「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

    私も多分、終末を予言されても、道は変えないなー。
    明日死んでも後悔しない生き方、なんて陳腐だけど。
    少なくとも、そのときそのとき、それ以上の選択はない!という生き方をしている。していきたい。

    ちょっと泣きました。

  • あと3年、というスパンが絶妙なのだと思う。
    「いつか」でもなく「間もなく」でもない、
    長いような短いような、何かできそうでもあり何も出来なさそうでもあり、のんびりしてても良さそうで焦らなきゃいけないようで、
    でも「それ」が確実に近づいているのだとわかるその感じが、この「世界」の雰囲気を決定付けているように思う。

    生きていこう。世界も人も酷く脆いけれど、
    最後の時にはきっと、眩しく光り輝いて消えていけるのだから。

    解説にあった、塩でスイカの甘さを引き立てるような働きを「死」に求める、という行に激しく納得。小説においては「死」はスパイスみたいなものらしい。多すぎると料理はクドくなって重くなる。隠し味程度で充分。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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