終末のフール (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 2047
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464436

感想・レビュー・書評

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  • この本との出会い。

    失恋した翌日だった。地下鉄に乗っていると一つの広告を見つけた。それは集英社文庫の広告で、「この夏に``はじまり``となる一冊、``ナツイチ``を見つけませんか。」という内容だった。いつもの僕なら簡単に見過ごしていたと思う。だけど、その日は違った。家に帰ってから、パソコンを前に何か面白そうな本はないかとナツイチを探していた。数日後、気になった本を求めて本屋へ行き、一冊買った。 それがこの本だった。

    「死」を設定することによって「生」を考えるという作品は多い。そんな中で、すべての人が世界の終わりを迎えるという話はとても興味深い。それは誰もそんな状況を体験したことがない、非現実的だからだ。下手な描写をすればたちまちつまらなくなる。だけどこの作品にそんな懸念は必要なかった。描かれる状況、人間関係、心情、倫理観が緻密に、巧妙に、バランスよく表現されていて、とても心地よかった。

    読み終えてあとがきを見ると、次のようなことが書いてあった。

       小説は哀しみを抱えている人によりそうもの

    ああ、なるほど。こういう出会いもあるのかと思った。

  • 再読です。
    8年後に小惑星が衝突すると予告されて5年過ぎた頃。余命3年となった仙台のヒルズタウンの住民たちのお話。

    「終末のフール」父親と娘の確執が辛かったけど、長男の和也の思い出話が最高におかしかったです。10数年越しに確かに和也は魔物を倒しに来たのだなぁと。

    「太陽のシール」の富士夫の決断、友人の土屋家族の気持ちに泣けてきました。

    「籠城のビール」はかなり複雑でやるせないのですが…
    最後の「三年逃げ切ればいいんだろ?楽勝だぜ」が秀逸です。3兄妹の平和な日々が頭に浮かび、妹や母のいない世界でも最後の最後まで生きようと思えたのだなと、ジーンときました。無事に2人が逃げ切れますように。

    「鋼鉄のウール」の苗場さんのぶれない生き方がかっこいいです。「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」という言葉が胸にドカンときました。

    「天体のヨール」の二ノ宮のキャラが好きです。深刻な状況で嬉々として小惑星の衝突を待っている二ノ宮の天体オタクっぷりがおかしくて、なぜだか癒されました。

    「深海のポール」は最後、作りかけの櫓を前に、終末のその最後の瞬間を想像して娘を一秒でも一瞬でも長く生かそうと思う渡部に泣けました。ハチャメチャだけど渡部の父親も素敵です。

    新興住宅が舞台ということもあり、家族の話が多かったです。「演劇のオール」も疑似家族のお話…
    ダメな父親も出てくるけど、かっこいい父親もたくさん登場しました。終末を前に子どもを生む決断をする富士夫、病気の息子を残して先に親である自分が死ぬという不安がなくなったという土屋、少しでも娘に長く生きてほしいと思う渡部、息子を守って死んだ蔦原の父親、それぞれの子どもへの想いに感動しました。
    伊坂さんが描く家族のあたたかくて力強い感じがとても好きです。

  • 8年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから5年が過ぎた世界が舞台。3年後に「死」を控えた人々の生きる姿を描いた8編の短編集。

    仲違いをしていた父娘、人類の死を前に待望の妊娠が分かった夫婦、地球滅亡の知らせとともに両親に先立たれた娘など、地球の終りを目前にしてパニックを起こす世の中を尻目に、残りわずかな時間をどのように過ごすかを模索する人々に焦点を当てています。
    登場人物は身の回りにいそうな、ごく普通の人びと。だからこそ非現実的な設定にも関わらずリアルです。紆余曲折はあれども、それぞれが決断した“残りの3年”は「生きること」への真摯な姿勢と決意があります。

    逃れられない「死」を前に、いかに「生」を謳歌するか。
    こんなにも「死」がべったりと側にある作品なのに、読後は「生き方」ばかり考えてしまう。

  • 8年後に小惑星が地球に衝突し、滅亡する---

    人はその事実を突き付けられた時、どう行動するだろうか?





    「8年後の地球の終わり」を予告されてから5年が過ぎたころの仙台が舞台。

    そのころには絶望からパニックに陥った世界も、徐々におさまって「小康状態」になっていく・・という描写が生々しくてドキドキした。





    残された3年をどう生きるか。

    「人生は怠惰に生きようとするには長すぎて、何かを成し遂げようとするには短すぎる」

    3年という限られた時間ならなおさらだ。





    自分ならどうするだろう?

    まず、暴漢や盗人や狂人のあふれかえるパニックの中「その日」を迎えるまで生き延びられるのか、それすら自信がないけれど。





    人間は脆い。

    自棄を起こして無秩序の世界に身を落としたり、自らの命を絶つ人、精神に異常をきたしてしまう人

    老後を考える必要性がなくなって、仕事を辞める人(そのため流通機関が機能しなくなり食糧難にも陥る)

    一見何も変わらないように見えても、「いつ命を奪われるかわからない、緊迫感」に不安が蓄積されて時々嘔吐する人もいる





    そんな中で、自分なりのぶれない軸を持っている人間の強さが眩しい。



    「鋼鉄のウール」に出てくる、苗場というキックボクサーは世界の終焉を予告されても変わらず練習に打ち込む。



    「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?あなたの今の生き方はどれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

    「ぼくにできることは左フックとローキックしかないですから」

    「自分に今できることをやるしかないですから」





     イマ デキルコト ヲ ヤルシカナイ・・・





    終末論に限らず、生きていく上で何かに行き詰ったときのヒントがこの本にはちりばめられているような気がする。

  • 「明日が世界の終わりでも、私は今日林檎の木を植える」

    最近こんなことばに出会いました。
    そして、読み返したくなったこの本。

    明日ではなくて、8年後。
    小惑星が衝突して、世界は終わる。
    そう告げられた後の大混乱を経て、いよいよタイムリミットが近づいた、世界の終わる3年前。
    いろんなかたちで終末を過ごす人々。

    「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
    このことば、カッコいい。
    結局のところ、人生は、永遠と永遠の間にあるつかの間の閃光にすぎないのだから。

  • 3年後に小惑星が衝突して人類が全滅するという状況での様々な人間模様。当初のパニックはおさまり、世情は平穏に見える中でのそれぞれの心情や出来事が語られる。各物語に、他の物語の登場人物が絡んできたり様子が語られるのもおもしろい。
    引きこもって本を読んでいた子が、新たな目的を見つけにいろんな人をめぐる「冬眠のガール」、子供やおばあちゃんなどに関わり役割を演じていたのがという「演劇のオール」などがおもしろかった。
    最後の「深海のポール」で語られる「じたばたして、足掻いて、もがいて。生き残るのってそういうのだよ、きっとさ」というセリフが印象に残った。地球が破滅しなくても、生きるってそういうことで、この本のどの物語でも語られているように何かしらで人同士繋がっていくのだろう。

  • 小惑星が衝突し地球が亡くなる。パニックから落ち着きを取り戻したころの、ある住宅街の住人たちのそれぞれを描いた物語。伊坂さんの中では珍しいミステリーじゃないお話。でもそれぞれの人物がリンクしてる感じは伊坂さんならでは!絶望の中でも生きる人々の姿が暑苦しくなく、でもなんか温かく描かれてるのがとてもよかった。

  • 世界が滅亡するというテーマに沿った程よく退廃的で程よく哀愁を感じる短編集。この間見たエンドオブザワールド という映画もそうだったけど、世界の終わりに対してこういう視点で人の生き方を描くっていう事自体好きなのかも。いままで読んだ伊坂作品の中でもぶっちぎりで好きだった。

  • 数年後に隕石が衝突して地球がなくなってしまうことが分かってる世界のお話。
    何かが解決するわけではないけど、絶望の中で生きる人たちの日常をとおして、その人たちの中にある希望が見てとれる。
    伊坂さんの小説はどんな絶望の中にあっても、なんか絶望を感じさせなくて、登場人物も飄々としてるのがいい。
    伊坂作品の中で一番好きな小説。

  • これは何ともテーマが単純究極!短編だけど、ある町の人達が所々繋がって飽きないし全世界共通している設定!また現実離れしてる。いざ読むと入り込んでいた。

    死に対しての認識は事故や病気、老衰などあるし小説やTVでも多々。それに対して悲しんだり、怒ったり…色んな感情があるが何処か他人事なところもあるけど、この本を読むとそうじゃなくなる…
    直ぐそこに死があるとわかっている時、俺はどうするのだろうか…
    そんな答えを沢山散りばめている本。
    色々と考えるけど、正直にそうならないとわからないのが答え。

    唯一、この本であっー多分そうなるんだろうなーと思うのは、暴徒したあとは静寂なんだろうと思う。何故なら確実な死が目の前にあって長い期間考える時間があった場合の人達は、最終的には受け入れていたのが思いだされるから。

    いつ来るかわからけど全ての人が共通している事でもある。何もなければ目の前の事しか見えてないのも幸せな証拠。だけどクライマーズハイと、この本を読んで私自身『今生きている事』の意義を確認し、そして、これから信念がぶれないく、少しでも1人でもよいので何か残したいと思った。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。
2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。
上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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