- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087478600
作品紹介・あらすじ
「筑紫の女王」と呼ばれた美しき歌人・柳原白蓮が、年下の恋人、宮崎龍介と駆け落ちした、世に名高い「白蓮事件」。華族と平民という階級を超え、愛を貫いたふたりの、いのちを懸けた恋-。門外不出とされてきた七百余通の恋文を史料に得て、愛に翻弄され、時代に抗いながら、真実に生きようとする、大正の女たちを描き出す伝記小説の傑作。第八回柴田錬三郎賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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朝ドラ「花子とアン」の蓮さまのモデル、実在した柳原白蓮を描いた伝記的な小説。
94年の作品で、第8回柴田錬三郎賞を受賞しています。
白蓮は26歳で、51歳の伊藤伝右衛門と結婚するところから。
華族のお姫様で、天皇の親戚にあたる女性がお嫁に来ると地元は大騒動。
白蓮はごく若い頃に決められた相手と結婚していたが離婚し、今度の結婚も、選挙資金に困った兄の決めたものだった。
売られた花嫁などと新聞に書き立てられもする。
炭鉱王として知られた伝右衛門は、白蓮のためにお金は惜しまない。
だが、子供はいないので白蓮の産んだ子が跡継ぎになるという仲人口は嘘で、正妻に子はなかったが妾の子が同居し、養子もいて、ややこしい家族だった。何よりも伝右衛門はすでに子供を作れない身体。
白蓮が女子教育に腕をふるえると期待していた女学校は、既に郡のものとなり、伝右衛門は口出しを許さない。
失意の中で、名流婦人として暮らすが、心は満たされないまま。
帝大法学部の学生・宮崎龍介が登場するのは本の半ばほど。
二人が残した手紙700余通を遺族から借り受けて、印象的な部分はそのまま載せています。
真摯な人柄の理解者と出会い、運命的な恋心のほとばしる様、才能溢れる女性ならではの当時の言葉遣いが色っぽく響きます。
少々メロドラマ的な筆ですが~
ややこしい時代物を熱っぽく、面白く読ませます。
大正三美人と呼ばれた一人、九条武子との交流も。
雑誌のグラビアに揃って登場したこともある。
どちらも夫とうまくいかず、隠れた恋人がいた。
九条武子は、恋人のことは隠し通すのですが‥
(村岡花子は友人としては出てきません。東洋英和時代が描かれていないせいもあるけど)
大事件となった駆け落ちの後、引き離されて苦難の道をたどる宮崎と白蓮。
4年後にやっと一緒に住み始め、その後は支えあった、落ち着いた暮らしであったようです。
そうなると、もう関心がない?みたいな終わり方ですが~
まあ、そうですかね?(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
朝ドラでは主人公の花子よりも気になっていた白蓮さん。
この作品では福岡の炭鉱王に嫁いだところから離婚して新たな家庭を築くところまでが描かれている。
時代と身分に翻弄され、本当の意味で人を愛することを知らず、我慢とあきらめの毎日、苦悩に満ちた前半部分から、心から愛せる人と出会い逃避行するという大胆な行動に出るまでの、女としての心の移り変わりが見事に表現されている。
そして実際に燁子が記した和歌や手紙が要所に挿し込まれているが、これがとても美しい。単なる恋愛小説で終わらず、明治大正の時代背景や文化を感じ取ることもでき、日本庭園の眺められる和室で温かい日本茶を啜りたくなった。 -
後に朝ドラで、話題になったが、イメージが違った。歌人の部分が描かれてなかった気がする。歌人としての「白蓮」が、自由、恋愛が許されない時代に、地位を捨て自分らしさを貫いたお話に読み入りました。
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この時代に良い所に生まれたら、普通に恋愛することも容易ではないんだなと思った。
元々目立っている人(今で言う芸能人みたいな)が不倫して世間が大バッシングするというのは今も変わらないけど、家柄で結婚するような時代の人にとってはその不倫が本当に初めての恋愛かもしれなくて、今のそれとは意味が違ってくるなと思った。 -
朝ドラの「花子とアン」がやってたあたりから、本屋で平積みになってるのをよく見かけてました。
だけど「流行ってる時に買うのもなあ」と思い、手を出してませんでしたが、白蓮さんのことを調べる度に興味深く、買ってみることにしました。
さすが林真理子さん、読みやすくおもしろく、一気読みでした。
でも白蓮さんもかわいそうな人だけど、最後には幸せをつかんだ。
この中で一番かわいそうなのは初枝さんじゃ…。
「一体どうしたのよ…」と最後に思ってしまいました。
しかし男は浮気三昧、妾がいたって当たり前、みたいなのに、女が不倫して逃げたらこの騒ぎよ。
この頃に比べたら、今はグッと女性が生きやすくなったなあ。 -
恥ずかしながら「花子とアン」も「柳原白蓮」も認識しておらず、読み終わってからコメントを確認して知りました。
そのため最後までフィクションだと思い読み進めてしまっていたので、驚きが凄かったです。
燁子という1人の女性が真っ直ぐに強く自分を貫く様子が描かれていますが、時代の波に飲まれず置かれた環境の中でどう幸せをみつけていくのか。
周りからみたら充分幸せなはずなのに、どこか自分を不幸と思っているような貪欲さが垣間見えることに少し苛立ちを感じてしまう気持ちもありました。
ただ人生で自分が幸せだと感じることって本当に人それぞれで、自分が生きている環境、取り巻く世界で大きく変わってくるものだと思います。その人の幸せはその人にしか分からないこと。何よりも愛を求めて愛に終わった燁子は、やっぱり自分で幸せを勝ち取ったんだなぁと。
女性として共感する気持ちも多く、時代が変わっても女性の本質は変わらないのかもしれないと嬉しく感じた一冊でした。皆さんがきっかけになった「花子とアン」も観てみたいです! -
女の、女に対する黒い感情や、憧れ、嫉妬、憎悪、仲間意識なんかがとても丁寧に描かれている。
男が絡んできた時の女のあり方は、本当に醜くて美しくて潔くて執念深い。 -
最後の龍介の言葉「うちに来てからは幸せな人生でした」という一文で気持ちよく読了できました。また瀬戸内寂聴の解説も読み物として楽しめました。「この小説を書くため作者はこれだけの資料を隈なく見るのである」に単純に頭が下がります。