- Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784088653372
感想・レビュー・書評
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丁寧な翻案を楽しめるマンガ作品。
J•ウェブスター原作の「あしながおじさん」は、人生で三度読みました。三度目にして初めて、作者の緻密に計算されつくした構成力と感情の変化を間接的に描き切った描写力に気がつき、脱帽させられたのを今でもはっきり覚えてます。
誰もがあらすじを知っているように、決して正体を明かさないお金持ちの男性が、孤児の女の子を進学させてあげるかわりに、毎月自分あてに手紙を書かせる物語。
8歳と19歳のときにすでに読んでおり、結末は知っているのに、約10年ぶりに再読したら、全く違う物語のような印象を受けたのは本当に衝撃的でした。
19歳で読んだときは、孤児として育ったにもかかわらずハツラツとした無邪気さを持つ主人公の活き活きとした大学生活の描写が心に残ったのに、三度目はその逆。
瑞々しく明るい描写の中に垣間見える、孤児であることを親友や愛する人にさえ隠そうとする少女の葛藤や虚栄心、裕福な友人たちへの羨望、若い娘らしい物欲など…ただ一途で前向きなヒロインにとどまらない、より生身の人間らしい少女の心情に初めて気がつかされました。
そして、何より目から鱗だったのは、この物語は、少女から「おじさま」にあてた手紙のみで構成されている「一視点」の物語であり、おじさまの心情は全く描かれていないにも関わらず、その手紙の中の描写から、気まぐれに援助をしだしたはずのおじさまが彼女に1人の男性として徐々に恋情を募らせていく過程が丁寧に織り込まれている点です。
興味本位からひたむきな愛情に変わっていく様、ライバル男性への嫉妬、焦燥、独占欲、束縛など、実に多くのおじさまの感情が、手紙の中で少女が記すおじさんの行動を通じて容易に連想されるようにできています。しかし、少女はそんなおじさまの強烈な恋心には全く気づいていないのです。
並程度の表現力なら、「それはないだろう」とつっこみたくなるはずでしょうが、それが実に見事に無理なく描かれています。
他人の視点を用いて別の登場人物の心の変化をこれだけ鮮やかに描き出したウェブスターの筆力と緻密な構成に脱帽させられた一冊でした。
そして、そんな原作を基にした勝田文さんの短編マンガ「Daddy long legs」 。
こちらは、舞台を昭和初期(1920頃)の日本に置き換えた、いわゆる翻案もの。
こちらは、少女視点だけでなく、原作にはなかったおじさまからの視点も交えて、双方向的に描かれています。
原作では直接的には書かれなかったけれど、勝田さんが感じとったおじさまがいつのまにか少女に激しく恋するにいたった過程やその時々の激しい心情を、昭和初期の時代背景に落とし込んで、原作にない場面を作って丁寧に再構築している点が、とても好きです。
原作以上に、「おじさまの中の人」と少女が親しい関係にあるので、すれ違い両思いが存分に楽しめます。
是非とも、マンガと原作を両方読んでいただきたい作品です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
勝田さんのなかでも特に好きなお話で、何度も読み返してしまう!
登場人物がひょうひょうとしているのが好きです。
矛盾してるけど、大人の少女漫画だなぁと思う。 -
「しゃべれどもしゃべれども」は原作が好きだったので、漫画も買って読んだ。その漫画家の作品。ブクログで目にしていたので、本屋でふと購入した。
しゃべれども…は落語家の話だったが、この漫画は、手紙だけで綴られるイギリスの古い小説を昭和初期を舞台に翻案したもの。古臭さが好きな漫画家さんなのだと思う。原作は小学生の頃に読んだ。ダイジェスト版だったかも知れない。このマンガは、かなり原作に忠実だと思う、
登場人物が可愛い顔で描かれるより、呆けたような顔をしている方が多い。思い入れたっぷりに描きあげる筈の最後のシーンまでボーっとした顔。
少女っぽさというか、少女の幻想が少ない漫画なのだと思う。おかげで、50過ぎのオッサンにも読み易かった。
表題作のみ読み、高2の娘に渡した。 -
このコミックスに載っている「あしながおじさん」を読んでからずっとお気に入りの一冊です。
大正設定なのがいいと思いました。 -
表題作を含む短編4編でした。てっきり全編「あしながおじさん」だと思っていたので、少し拍子抜け。
いろんなテイストのお話を描かれるなぁ。
でもやっぱり、表題作が一番良かった。日本に舞台を置いているのも良かったのかな。
原作を読んだのは、まだ子どものころ。
また読んでみるのもいいかも、なんて思いました。 -
2006-05-00
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2014.6/4 ちょうどNHKの朝の連ドラ「花子とアン」を見ているので表題作「Daddy Long Legs」の時代背景がダブって楽しく読んだ。他の短編たちもハズレなしっ!
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少女漫画読みたいんじゃーーー!と友人に言ってたらめっちゃ貸してくれたので、1冊完結のから読んでる!
あしながおじさんを読んだのはずーーーーっと前なんやけど、これはあの小説とは違ったよさがあってよかった。小説読んだときに感じた変な古臭さが、これだと全然違和感がないのはなぜか。小説も今読んだらもっと印象が違うのかもしれない。
手紙の一方通行じゃないていうのもだいぶ雰囲気違うしねえ。
他の作品もどれもきゅんきゅんしてすごくよかったんやけど、シンガポールのやつだけ最後のあれがちょっと…いくら悪女と言われてるとはいえもうあなた結婚したんならそんなことしちゃあ…いやそこ以外はほんとどれもよかった。 -
表題作目当てに、新品の紙媒体での入手が難しそうなので初めて電子書籍を購入。
とっても素敵な和製あしながおじさんだった。
昭和初期、孤児のいつきに援助をする千博。
千博の視点、いつきの視点、どちらも読めるから双方の想いが分かってにやにやする。千博坊ちゃん可愛い。プレゼントを届けるじいやも可愛い。
ラストは、いつそんなエピソードが?と思う展開だったけど、正体を知るシーンが良い。
原作を積んでいるけれど、モチーフにした少女小説を読んだりして、ますます読まなければと思った。
他の収録作品は「パーラー」のおじいちゃん好き。 -
久しぶりにあしながおじさん読みたくなって買っちゃいました。原作の方も。