桜の木の見える場所 (児童単行本)

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784092906259

作品紹介・あらすじ

少しずつ見えなくなる恐怖と闘う勇気の物語

子どもだれだって暗やみがこわい。
でも、マファルダがこわいのは、目のなかにある暗やみだ。
真っ暗闇が訪れるまで、長くてもあと半年--。

ある日、9歳のマファルダは、少しずつ視力が失われる難病と診断される。
目が見えなくなるってどういうことだろう?
目隠しして歩いてみる。暗やみでも歩けるのかどうかを試してみたかったのだ。
暗やみでくらすようになったら、どうすれば色がわかるのだろう?
不安は、どんどんふくらんだ。
それから、マファルダは、やっておきたいことのリストを作り始めた。

少しずつ見えなくなっていく、失明の恐怖を、少女の一人称で語られる物語は、読む人の心を打つ。
作者自身の体験にもとづいた、生に対する痛いほどの愛情がこめられた、感動の物語。




【編集担当からのおすすめ情報】
デビュー作にもかかわらず、書き上げた後のフランクフルトブックフェアで24か国語に版権が売れた超話題作。子どもがかかる難病のひとつで、徐々に目が見えなくなっていく“スターガルト病”に、作者自身の実体験を元に、書き上げた渾身の作品。

感想・レビュー・書評

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  • 両親と暮らす小学4年生のマファルダは、3年前にスターガルト病と診断され、日に日に大きくなる闇の恐怖と戦っていた。学校の桜の木に登るのが好きだった彼女は、メガネを落として降りられなくなった際助けてくれた用務員のエステッラの助言で、日記帳に「いつかできなくなること」リストを書いていた。大好きなおばあちゃんが亡くなり、その家の桜の木が切られたときに、おばあちゃんの霊もその桜の木の精も学校の桜の木に引っ越したと思うことにした彼女は、ある日、桜の木が見えてからそこに着くまでの歩数を数え、自分の視力を確認し始めた。できることがどんどん減っていってしまう悲しみの中、エステッラの励ましで、自分にとって「不可欠なもの」を探し始めるマファルダに、一つ年上の少年フィリッポが親切にし始める。

    失明の恐怖と戦いながら、周囲の温かさに気づき勇気を得ていく少女の葛藤を優しく描く、作者の実体験を基にした物語。





    *******ここからはネタバレ*******

    イタリア語で書かれた物語らしいのですが、英語のタイトルは「The Distance between Me and the Cherry Tree」。きっとこちらのほうが原題のままなのでしょう。

    どんどん見えなくなっていくマファルダの恐怖が痛いほど伝わってきて、読むのをやめたくなりました(でも、先が気になるので読みましたけど)。

    エステッラが作ったリストはbucket listだったんですね。乳房の片方を失った自分をアマゾネスの戦士に例えるなんて、こちらも胸が痛みます。
    「生きるためには、恐怖に打ちかつ必要があるのよ」なんて、10歳の女の子には酷ではないかと思う言葉が言えるのも、彼女が同様の苦しみと戦っていたからなのだと納得できます。


    ただ、「友人」として語られるフィリッポのところだけは、少々疑問が残るところが多いです。
    例えば、
    発表会のあとで彼と彼女が、一つの椅子に並んで座るとか(親しくなかったのに、そんなことできるの?)、
    フィリッポの名前も知らなかったマファルダの両親が彼の母親と仲良くなってその後彼の家にみんなで行き、ピザを食べた際、彼が彼女の口に直接オリーブを放り込むとか、
    もらうジャンパーを見てもいないのに、お礼に香水をくれるとか、
    スキー合宿の夜にこっそり懐中電灯で合図するとか、
    頼んでもいないのにソリの後ろに乗せてくれるとか、
    いやもうこれは、日本のお母さんは見過ごせないですよ(笑)。

    その他にも、先生が合宿時に彼女を男子宿舎に案内するとか、イタリアの子どもたちが赤ちゃんができる方法を知らないとか(イタリアでは教えないの?)、ちょっとカルチャーショックも味わいました。


    あと、129ページでフィリッポがマファルダに、「でも、おまえだって、クリスマスって最低って言っただろ」と言っていますが、どこで言っていたのか、読み直したけれど見つけられませんでした。
    また読むときに探してみます。

    鏡がどこにあるかわからなくなったマファルダが、手を伸ばしたら割ってしまった場面は、ほとんど完全に闇に入ってしまった彼女のショッキングな場面ですが、当たったくらいで割れる?と思ってしまいました。


    ちょこちょこ気になる場面はあったものの、実話に基づく心理描写は圧巻で、ああ、私も、与えられているものに感謝して、その中でできることを精一杯しなくては、と思わせられました。

    主人公は小学4年生。中学年から読んでもいいですけど、ちょっとそれは辛すぎるかもしれないですね。
    しっかりした高学年以上の読書をおすすめします。

  • この本を選んだのは、関口英子さんの訳が読みたかったから。原書はイタリア語なので読んでいないけれど、関口さんの訳は無駄がなく本当に読みやすい。
    日本語訳に関してなら☆5なのだが、お話の中に理解し難い場面があったので3。
    それは、主人公マファルダがクラスメートたちの持ち物を盗み取った件。人のものを盗むことについて、まったく罪悪感なく普通に語っているのに衝撃を受けた。以前は仲良しだったキアラは、確かにちょっとイヤな感じの子だと思うが、だからと言って彼女のものを盗んで良いことにはならないだろう。盗んだことがいつバレるのか、それともいつか返すのか、と気になりながら読み進んだが、そのような記述は無かった。
    逆に、マファルダは、他のクラスメート男子に虫眼鏡を騙し取られている。こちらも最後まで返されることは無かった模様。人のものを取っておいて何も感じないのかこの子たちは?!
    難病に冒された少女が徐々に視力を失っていくという、作者自身の体験をもとにして書かれた作品で、普通に読めば感動モノなのだろうが、残念ながら今ひとつな読後感となってしまった。

  • ■見えなくなる恐怖と闘う
    ●新十津川町図書館司書・笹木陽子
    朝日新聞デジタル:『桜の木の見える場所』 - 北海道 - 地域
    http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20200107010490001.html

    桜の木の見える場所 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09290625

  • マファルダはだんだん目が見えなくなってくる病気にかかっていた。しのびよる暗闇の恐怖と闘いながら、「やっておきたいリスト」を作って一つ一つ実行していく。娘のためを思って娘の知らないところで物事を決めてしまう両親に反発し、家出することにするが…。
    マファルダの勇気に心が震えます。マファルダの不安な気持ちを支えてくれる用務員のエステッラが物語の核になります。

  •  徐々に目が見えなくなってゆく病気のマファルダは、いつ暗闇が訪れるのか不安でたまらない。両親には心配をかけたくないから強がっているけど、その時が来たら大好きな物語の主人公のように、桜の木の上でずっと一人で暮らそうと考えていた。
     そんなマファルダの支えになってくれたのが、学校の用務員のエステッラ。彼女はマファルダに「あなたにとって不可欠なものを見つけなさい」と言った。マファルダには、まだそれが何なのかわからなかった。


     著者も同じ病気であり、願いごとの一つが本を書くことだったそう。

  • 長田弘さん著の「散歩する精神」ではこんなエピソードが引用されている。
    https://booklog.jp/item/1/4000008862
    「足を引きずった野郎どもが三人、まず登場して歌う歌がじつにいい。Can do,Can do と、三人の野郎どもは歌うのだ。ラニアンが一番きらったのは、『あきらめる』ということである」。Can doとは、できる、やれるという意味だ。
    だけどこの物語に出てくる、両目が病気で日に日に見えなくなっていくマファルダという名の女の子は、はじめはその逆だった。秘密の日記帳に書き連ねていた「将来やりたいこと」のリストを1行ずつ二重線で消していく毎日を送っていた。

    ここで言っておくが、この本は、日本で好まれる、障がいを「自分のがんばり」や「みなさんの声援」で克服しましたというような物語ではない。だから “障がい者が人並み以上にがんばって壁を破る”ストーリーは期待しないほうがいい。(個人的には、なぜ障がい者に身の丈以上にがんばらせようとするのかが理解できないが。)
    特に前半部分ではマファルダが目のなかの霧が広がるにつれて、「できる」リストを次々と消していく話が続く。それらを読み進めるときは本当にせつなくなる。

    だけどこの本は、そんなせつない展開だけで終わらない。後半では1学年上の男子との出会いがある。そしていつも明るい女性の学校用務員さんの身体に、自分とは違った形で病気の影が忍び寄っていたのを知る。
    そんな二人との出会いは、見えないマファルダに「できること」を空想させる力を与えることとなった。そしてマファルダが自分で「できること」を考えに考えて、その集大成として、桜の木を足掛かりに“独立”することを計画し実行しようとする。

    それらを読み進めて、あることに気づいた。
    -人には他人より身体的に劣るものが必ずあって、それを他人には絶対に知られたくないと最初は思うけれど、ふとしたきっかけでそれを示してもいいという人が現われるということ。そしてそういう出会いこそが、障がいの克服という次元ではない、障がい者のみが“特権的に”持ちうる、自分自身の人生に喜びを見い出せる可能性の一つだということ。

    あと、私にとってうれしかったのは、表紙が「まめふく」さんのイラストだったこと。「ぼくがスカートをはく日」以来の出会いだ。
    https://booklog.jp/item/1/4052046846

    最後に、この本を読んで、以前に視覚障がい者についての本を読んでいた私が改めて気づいたことがある。
    世間では、視覚障がい者というと、白い杖をついている人というイメージが大きい。だけど、マファルダのように一見では健常者と同じように歩いたりしていて、視覚に障がいがあるとは外見上まったく気づかせない場合も実は多いということだ。

    彼女のように眼鏡をかけてかろうじて数歩先だけ見えていたり、視野(見える範囲)が極端に狭かったりと見え方は人それぞれらしいが、そんな人たちが“努力して”安全に歩けるようになる世の中なんてどう考えてもおかしい。視覚に障がいのある人が自分なりのやり方でも安心して歩ける世の中になるために、スマホを見ながら歩いてくる人間を私はヘイトする。

  • 近頃、自分の中で再ブームとなっているイタリア文学より。綺麗な装丁から考えると思いもよらないお話。少しずつ目が見えなくなっていくスターガルト病に罹患した少女の物語。少しずつ視力を失っていく少女の恐怖が克明に描かれている。それもそのはず、作者自身がこの病気でいつ視力を完全に失うかもしれないという恐怖と闘っているのだ。作中に登場する主人公の愛読書であるイタロ・カルヴィーノの『きのぼり男爵』前から気になっていたので読もう。

  • だんだん目が見えなくなる病気のマファルダの気持ちがよく伝わってくる物語でした。

  • 小4のマファルダは目に病気をかかえている。見えなくなる前に大好きな物語「木登り男爵」の主人公コジモのように木の上で暮らしたいと計画するが、見えなくなっていくことでできないことが増えて・・・。

  • 「ある日、9歳のマファルダは、少しずつ視力が失われる難病と診断される。目が見えなくなるってどういうことだろう?目隠しして歩いてみる。暗やみでも歩けるのかどうかを試してみたかったのだ。暗やみでくらすようになったら、どうすれば色がわかるのだろう?不安は、どんどんふくらんだ。それから、マファルダは、やっておきたいことのリストを作り始めた。少しずつ見えなくなっていく、失明の恐怖を、少女の一人称で語られる物語は、読む人の心を打つ。」

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