- Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093861625
感想・レビュー・書評
-
ひみつのはなしは、またこんど。
必要なもの ぼくのつま。
西加奈子一冊め!素敵!勝手にエンタメ系を想像していたため、結構精神世界どっぷり系でびっくり。吉本ばななとか思い出す感じ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
田舎暮らしをするムコとツマのシンプルで暖かな生活の陰で、もうひとりの自分たちが、何かに怯え、何かを確かめたくて、でも出来なくて必死にもがいている。とらえようのない苦しみや、さびしさや、居場所のなさや、悲しさを抱えている。
終盤、ムコさんが東京に置いてきた過去と向き合う時、物語は一気に動きはじめる。
キーワードは本の栞のことば。
『わたしは眠ります。それがそこにあることを、知っているから。わたしは、安心して眠ります。それがそこにあることを、知っていたから』
そしてムコは気付く。
『僕は、人生というものがただそこにあるものだと知った。僕を翻弄したり、つき離したり、呼び戻したり、また見放したりするものではない。それは目を開けてもつむっても、ただそこに横たわっているだけのものなんだ。変わらず、裏切らず、おもねることなく。そしてそれはそこにあるだけで、それだけで安心して眠るに値するものだと、目覚める理由があるものだと知ったのです』
ツマが『そこにいること、人生のように、日常のように、そこにただいてくれるだけで、安心して眠りにつけるのだということ、堂々と、幸せだと笑っていられるということ。どうしてそんな簡単な、だけど途方もなく尊いことに、気づけなかったのか』 -
西加奈子2冊目。ファンタジーあり、ミステリーあり、後半メンヘラっぽい展開に怯むが、最後はみんな落ち着くとこに収まってホッ。うーむ。これは究極のラブストーリーではなかろうか。
夫婦なんて赤の他人。知っているようで互いを知らない。なのに時々相手が自分の鏡のように見える時もあり。
「…なんかな、そのときまでのうちの人生がな、あの瞬間に、ムコさんが結婚しようと言うたあの瞬間に、ぱちりと合うた。収まった、ゆうんかな。あの、コーヒー豆を削る感じ、手にごりごりくる抵抗と、日がはいりすぎるうちんちの台所と、ムコさんの低い声とな、なんか、ぜーんぶ、ぴたりと合うたん。」
…↑ツマの言葉、これ、超分かる!!!
ついでに、東京の壁の薄いアパートで、声も気にせずしていたのに、今は蚊帳の中で、静かに静かに誰にも見つからないように、セックスをする…
ってのも超分かる!! -
こんな夫婦が好き。
買ってから読むまでに時間がかかってしまったけれど、私が読みたかったのはこういう物語だった。 -
はじめはツマの不思議ちゃんっぷりが苦手だったが、途中から慣れてきたのか気にならなくなった。田舎で暮らし始めたツマとムコという夫婦の物語。自分を見失い立ち止まっていた登場人物たちが、しっかりと確かな一歩を踏み出していく。生きとし生けるもの全てが自己主張をしていて、都会では味わえない雰囲気。ツマに一途な大地くんがかわいい。ムコの日記にいろいろなものを貼り付けたのはいったい誰だろう。
-
少しファンタジックな魂の再生のような物語.きいろいゾウという絵本と物語が交差するのがいい.ツマさんもムコさんも出てくる全ての人たちが心に何らかの傷を抱えていて,でもそれが癒されていくところが美しいです.大地くんがとても素敵な男の子で,これも良かった.
-
世界観に浸れて気持ちよかった
-
好き。
本を自分のモノにしたいって、久々思った。
この本が、たくさんの人に良いよって、ありだよって認められると。
それは自分に跳ね返るようで嬉しい。
著者の説明んとこに『イラン・テヘラン市生まれの大阪育ち』って書いてあって。ぷって吹いた。イランでテヘランって、更に大阪って、なに?つか、そこを最初にわざわざ書くか?つか、そこウリなの?って。結構愉快。 -
ツマとムコさんの田舎暮らし。
ゆっくり流れる時間の中で、少しずつざわついてくる感じ。周囲からというよりは、二人の奥底にある記憶の湖とでもいうものの中からある日すっと掬い取られた不穏なもの。
それが何なのか確かめるため、それが二人にとって何を示すのか、静かに物事が動いていく。
軽快な関西弁の会話とか、どんじゃらの馬鹿げたやり取りにニヤリとする前半とは対照的な後半だった。
ツマ視点の語りの文書と、同じ出来事をムコさんの日記という形で表現した文章の構成で面白い。かなり長いなとは思ったけど。
2015.7.6